開志国際高校の躍進を支えるスポーツアイシングの重要性

高校バスケットボール界のトップを競う有力校の一つとして注目を浴びている開志国際。富樫英樹監督の下、SoftBank ウインターカップ2022、U18日清食品トップリーグ2023でそれぞれ日本一の称号を手にするなど輝かしい成果を挙げているが、その背景に一つ注目すべき取り組みがある。スポーツアイシングを取り入れたコンディショニングだ。

「最高の自分」を体現できる
コンディションで試合に臨むために

 アイシングは従来から、スポーツの世界でも広く実施されている。バスケットボールでも、熱中症などが疑われる際の体温コントロール、捻挫などの故障に対する応急処置、そして故障予防という具合にいくつかの異なる状況で役に立つ。特に故障予防目的でのアイシング活用は近年スポーツケアの世界で注目されている。激しい運動により毛細血管が切れて、炎症を起こしたのと同じ状態にある関節や筋肉を局所的に冷やすことで血流を抑えてリカバリーを促進する効果を期待できる。

 氷という身近な材料を使うため、比較的手軽に、日常的に行うことができるのは、アイシングの特徴的な利点。アスリートやコーチとしては、それでリカバリー促進や故障回避の可能性が高まるならぜひとも取り入れたいと感じるに違いない。

 開志国際高には全国から優秀なタレントが集まっているが、練習環境としては女子チームとフルサイズのコート1面を共用しながらの活動で、強化には工夫が必要となる。必要なのは、限られた時間と場所で皆が効率よく練習をすることと、最高のパフォーマンスを出せるよう「最高の自分」を体現できるコンディションで臨むこと。前者を達成するために、約2時間半のチーム練習では目的意識に貫かれたドリルを計画どおりに遂行するよう徹底する。そして後者のためにアイシングが有効な手法となる。

 富樫監督は、「今、例えば大会1ヶ月前で何が一番怖いかとなると、やっぱり怪我」とコンディショニングの重要性を語る。「学校行事などで全員そろってのチーム練習ができないときでも、怪我をしないように集中してプレーするよう気を配っていますよ」

アイシングを取り入れたコンディショニングは、今ではチームの伝統

 開志国際の体育館に入るとすぐに、「ロックアイス®」というブランド名が記された大きな冷凍庫が目に入る。学校側の理解と企業の協力により、選手たちが使いたい時に氷をすぐ使えるようにしているのだ。

 「ロックアイス」は小久保製氷冷蔵の登録商標で、日常的にも広く使用されているいわゆる「かちわり氷」で知られるブランド。コンビニやスーパーで見かけたことがあるという読者も多いのではないだろうか。ところが近年では、家庭やアウトドアなどのレジャーで使われるだけではなく、熱中症対策やアスリートのコンディショニングをサポートするスポーツケアの分野に用途広がっているのだ。プロや大学の強豪チームとの提携も複数行っているが、サポートを受ける側にすれば、身近にあり手軽に使える氷という物質の特徴を生かした非常に有用性の高い提案といえるだろう。

 開志国際でも大いに活用しており、富樫監督によれば「練習後に選手はもう大体やっています。特に痛みがあるかないか以上に、習慣として膝に当てておこうかなというような感覚で、怪我したときはもちろんですが予防のアイシングもやっています」とのことだ。

 コンディショニング面の工夫はハード面だけではない。プロレベルで豊富な経験を持つ菊元孝則トレーナーをスタッフに迎え、最新の理論と実践を高校生たちに落とし込んでいるのだ。菊元トレーナーの知識や考え方は富樫監督もコーチ陣にも共有されており、選手の起用や怪我からの復帰に関する戦略にも生かされる。これまでの取り組みを経て、「アイシングを取り入れたコンディショニングは、今ではチームの伝統」と菊元トレーナーは話す。「富樫監督をはじめコーチ陣や私が指示する前に、選手たちは自主的に考えて毎度の練習や試合でやってくれています。一度離脱してしまったら、短期間で復帰するのは非常に難しいことも理解しているのだと思います」

 さまざまな工夫を通じて、練習に臨む姿勢や自己管理意識を高めていこう — 勝負の前にその舞台に立てないような悔しい思いをしないために、また個々の長期的な成功を夢見ながら、富樫監督以下全員がこんな姿勢でチーム一丸となっていることが、開志国際の躍進の土台だ。アイシングがその中で華々しく脚光を浴びることは少ない。しかし実は、非常に有用性の高い「裏技」のような取り組みと捉えることができるのである。

開志国際メンバーに聞いた
「 スポーツアイシングってどうやるの?」

PLAYER'S VOICE 01

コンディションを完全にするためにアイシングしています

1年/186cm/シューティングガード

——普段はどんなふうにアイシングを取り入れていますか?

 試合後とか運動後に、違和感があるとアイシングをやるようにしています。毎回ではありませんけど、自分のコンディションを完全にしたいので。やっぱり違和感が少しでもあるときは怪我にも繋がっちゃうと思ってアイシングします。

——どのようにして知識を学んだのですか?

 ちっちゃい頃はあんまり知識もなくて、教えてくれる人も周りになかったのでやっていなかったんですけど、中学に入って先輩やトレーナーの方との出会いもあって、いろいろと教えてくれる機会がありました。それまで知識がなかったり、考えられなかったところを教えてもらっています。体のメカニズムについても、今そこに痛みがあるってことは、次こっちまで来るかもしれないよというようなこととか、今何でそこが痛くなってるのかとか。自分の体について教わるのは本当にいいことだと思います。

PLAYER'S VOICE 02

一流選手がやっているのを見て真似てみたらすごく効果がありました

3年/198cm/フォワードセンター

——普段はどのようにアイシングを行っていますか?

 毎度の練習後に膝にアイシングをします。ものすごく頑張ったときには浴槽に冷水を溜めて使ったりもしますけど、大概は膝です。今はだいたい10分くらいですけど、夏場は30分くらいはやります。これをやると、筋肉や血流を落ち着かせてリラックスできるんですよ。

——どのようにして知識を学んだのですか?

 いろんな選手が練習後にアイシングしているのを見て知ったんですけど、自分でやり始めたら回復力が高まったように効果を感じています。

——誰かに教わったりもしましたか?

 僕は教わったというよりも、NBA選手がインタビューを受けながらアイシングをしている様子を見て、それを真似たという感じです。一流選手がやっているんですから、僕もやった方がいいんだろうなと思って、それで始めました。

PLAYER'S VOICE 03

怪我しないことは選手としての価値だと思って取り組んでいます

3年/190cm/フォワード

——アイシングは普段どういうふうに取り入れていますか?

 自分は足が張ったり疲労が溜まることが多いので、練習後のケアでアイシングすることが多いです。足首は10分ぐらい、日頃から足や膝が痛いとなると、よく冷やしています。腫れにはすぐ効くので、本当に効果は感じます。
 自分たちの部屋に浴槽があるので、お風呂で冷水に入ったり、そこに氷を入れたりもします。お風呂から上がってからは、15分から30分程度必ず自分でストレッチもします。足首を捻挫したときには、バケツに氷水を入れてアイシングしました。

——どういうふうに知識を学んだんですか?

 トレーナーさんや先輩方に教えてもらいましたけど、かなり重要な知識だと思います。バスケットボールは怪我とともに歩むもの。怪我しないことは選手としても一つの価値だと思って、日頃からコンディショニングを心がけています。

PLAYER'S VOICE 04

怪我が続いた時期があって、そこからは練習後にほぼ毎回やっています

3年/183cm/ガード

——スポーツアイシングをどんなふうに取り入れていますか?

 個々にやりたい人がやる感じなんですけど、自分は練習の終わりにほぼ毎回、膝や足首に20分ぐらいやっています。シューズやソックスをすべて脱いで氷を袋ごと当てて、ラップで巻き付けてやります。去年ずっと怪我が続いた時期があったので、そこからやるようになったんです。練習終わりに冷やすようにしたら足首も落ち着いて、怪我も少し減ったと思います。

——どこで習ったんですか?

 トレーナーさんや先輩方から「本当にした方がいいよ。怪我が少なくなるよ」と聞いて、やるようになりました。中学校の頃も気がつけばやってはいたんですけど、練習後の習慣としてはやっていませんでした。ここに来て習慣化できました。去年、ちょうどU18日清食品リーグの時期にずっと怪我で試合に出られない期間が続いてしまって、それもきっかけになってやるようになりましたね。

一般的なアイシングの方法

用意するもの

  1. 氷(粒の細かいものがおすすめ。粒が細かいと、形を変形しやすく、患部にフィットしやすい)
  2. 氷を入れるもの(厚手のビニール袋や氷嚢。袋入りで市販されている氷はそのまま使用できる)
  3. 固定するもの(テーピング用バンデージやラップなど)

手順

  1. ビニール袋や氷嚢に氷を入れて使用したい部位や患部にじかに当てる
  2. 冷却時間の基本は15〜20分

    ※一般に「強い冷感⇒灼熱感⇒疼痛⇒感覚消失」の順に感覚が変化すると言われており、感覚消失に至った時点でアイシングを終えることが推奨されている。ひじの内側やひざの外側、あるいはかかとの上側など、筋肉の表層と神経が近い部位は神経損傷に注意が必要であり、アイシングする際の時間は5分程度に。

とけない、情熱。ロックアイス®︎

スポーツアイシングの詳しい知識をチェックしよう!

  • 酷使した体のリカバリーにアイシングが効果を挙げているという

  • コンディショニングの知識を蓄えることはキャリアづくりにも生きそうだ

  • 椅子を2つ使って足を伸ばした状態で膝関節にアイスパックを当てる