月刊バスケットボール5月号

【関東大会・男子】初日から目の離せない熱戦の連続!

 第76回 関東高等学校バスケットボール選手権、男子大会が小田原市総合文化体育館・小田原アリーナで幕を開けた。

 

健闘及ばずも、地元・小田原で大きな成長を示した立花学園

 

 創部初の関東大会Aブロック出場を果たした地元・小田原の立花学園(神奈川)は、昨年のインターハイとウインターカップでともに3回戦に進出している八王子学園八王子(東京)と対戦。八王子学園八王子の♯5ンジャイ ムハマドゥ ムスタファ(3年)、そして#2サニャン ウセイヌ(1年)という、ともに身長205㎝を誇る留学生にゴール下を支配され、64‐112で敗れた。しかし、試合開始から終始、攻めの姿勢を崩さず、足を使った機動力、早いパス回し、迷いなく打ち切る3Pシュートなど大いに会場を沸かせる活気に満ちたプレーで健闘を見せた。

 


キャプテンの♯5前田然は、「自分たちは小さいチームですが、そのことにプライドを持って、どういうバスケットをやるかを考えながら練習しています。高さではなく平面で勝つために、機動力を生かしたチーム作りを意識していますが、そうした自分たちの個性を生かしてプレーできているのが今年のチームの強み」と語るが、正にその言葉どおりのプレーを大舞台で見せたと言えるだろう。

 

 

 越智淳監督は、「今年の選手たちは、日々の練習の意識が非常に高い。強い相手や大きい相手とやると、闘争心むき出しで、勝ち負けに非常にこだわる。そうした積み重ねがあってここまで来たのかなという気がします」と今年のチームを評価。さらに、次のように続けた。「(新型コロナウイルスの影響で)今の高校生にとっては初めて観客が入っての試合だったので、見に来てくれた方々に喜んでもらい、自分たちも帰ろうという話をしていました。日頃から、点数には表れないところで、勝ちに向かうエネルギーの出し方や雰囲気といったものに見る人は感動するものなのだよという話はずっとしていたのですが、今日はそれを自分たちで表現してくれたのかなと思います」。

 

 また、選手たちは週に1回、地元の小中学生にバスケットボール教室を開催しているが、それも「バスケットは楽しいものという原点に立ち返る機会になっており、下のカテゴリーに夢を与える活動が、選手たち自身の心を育ててくれていると思います」と越智監督。今回の地元・小田原での大きな経験もまた、選手たちをさらに一回り大きく成長させてくれるに違いない。

 


この負けを宿題のままにせず次につながる経験に…新島学園

 

 Bブロック1回戦、東海大菅生(東京)に対して、前半で24‐40というビハインドを追った新島学園(群馬)。だが、キャプテン♯4柄澤日向はハーフタイムで、「点差は離されたけれど、まだ負けたわけじゃない。前半できなかったディフェンスリバウンドを取ることや、たとえ今入らなくても3Pを打ち続けることを、もう一度いちから意識しよう」とチームメイトに語りかけた。

 

 

 3Pシュートは柄澤自身の武器でもあり、昨年末の3x3 U18日本選手権で優勝の際には、自身の3Pシュートがチームの危機を救い、逆転の末のタイトル獲得に結び付けた。しかし今回、特に前半は積極的に打つものの、ことごとくリングに嫌われ、「一瞬、打つことに不安な思いも抱いた」という。「ハーフタイムで一度時間が空いた時に、やはり打つことが自分の仕事だと思い、自分を信じて打ち続けたら、3Qで少し入るようになりました」と柄澤が言うように、後半は新島学園がジワリと追い上げ、一時は東海大菅生を逆転。しかし、最後は高さを生かしたゴール下での得点も着実に重ねた東海大菅生の前に再逆転を許し、新島学園は敗れた。

 

 

「最後の最後まで3Pは狙っていたのですが、少しふがいない結果になりました」と柄澤は悔しさを隠さずに言う。「3x3では優勝まで登りつめることができましたが、5人制はチームスポーツとして、5人でよりうまく戦っていかないと勝てない。キャプテンとしてチームを全国の舞台に連れていきたいという思いもあるので、今日の負けを宿題のままにせず、次につながる経験となるようインターハイ予選までの時間を過ごしたいと思います」。柄澤はそう語り、前を向いた。


課題と正面から向き合うことで勝利を手繰り寄せた成立学園

 

 Bブロック1回戦では、成立学園(東京)が昨年のインターハイに出場のつくば秀英(茨城)を逆転で破る殊勲。特に、攻防のリバウンドで見せた激しさが勝利を手繰り寄せた。だが、そのリバウンドは、実は成立学園にとってこれまで弱点であり、課題であったのだという。袴田清美監督は、「点が取れない時間が続くと、どうしても落ち込んでその後のプレーに影響するのですが、点が取れなくても、オフェンスで失敗しても、ちゃんとディフェンスして、チームのバランスを保つということを今日は全員ができたと思います。つくば秀英さんは基本に忠実でよく点が入るチームなので、よくめげずに守り切ったと思います」と評価。キャプテン♯4至田朱里は、「この関東大会をいい形で終えて、次のインターハイ予選に臨めるよう一丸となって戦うというのが今回の目標だったので、そのようなゲームができて良かったと思います」と勝利を振り返った。大会2日目、成立学園は八千代松蔭(千葉)との対戦に臨む。

 


取材・文〇村山純一(月刊バスケットボール)
写真〇山岡邦彦



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