月刊バスケットボール5月号

残り45.6秒に込められた思い/3x3 JAPAN TOUR 2021 EXTREME FINAL 男子優勝:UNOMIYA BREX

 「3x3 JAPAN TOUR 2021 EXTREME FINAL」、男子決勝は、今ツアーランキング2位のUTSUNOMIYA BREXが、同1位のTOKYO DIMEを終盤の逆転劇で破り優勝を飾った。両チームのボールに対する執念とゴールへの渇望がぶつかり合った対戦は、ロングシュートが少なく、ゴール周辺で火花を散らす激しいものとなった。MVPにはUTSUNOMIYA BREXの♯5ドゥサン・ポポビッチが選出され、またUTSUNOMIYA BREXには「FIBA 3x3 Challenger 2022」の出場権が与えられた。

 

 

 

優勝したUTSUNOMIYA BREX。

写真左より♯5ドゥサン・ポポビッチ、♯11齊藤洋介、♯3柴田政勝、♯7飯島康夫

 


TOKYO DIMEが18-17とリードした残り45.6秒の場面。相手のファウルから2本のフリースローを得たUTSUNOMIYA BREXの♯5ポポビッチが、これをきっちり決めて19-18と逆転。ポポビッチはさらにとどめのシュートも沈め、勝利を決定的にした。UTSUNOMIYA BREXは、9月の「3x3.EXE PREMIER JAPAN 2021 PLAYOFFS presented by PORSCHE」に続くビッグタイトルの獲得となる。

 

MVPを受賞したUTSUNOMIYA BREXの♯5ポポビッチ。

士気をみなぎらせながらも冷静さを失わないプレーでチームを勝利へと導いた

 


表彰式のスピーチで、UTSUNOMIYA BREXのリーダー♯11齊藤洋介は、「今シーズン、2冠を達成できたことを本当にうれしく思っています。選手として結果を残すのはもちろんですが、この舞台を目指してくれる若者が増えてくれるような普及活動を兼ねないといけないと思っています」と、自らが戦う意義について触れた。

 

 齊藤は、日本郵政ほかの支援を受けて、年末に開催予定の「第8回 3x3 U18日本選手権大会FINAL ROUND」に高校生チームを10チーム送り込むことを目指したユース3人制チーム育成プロジェクト『YOSK CHALLENGE』を立ち上げ、活動している。「そこで負けてしまった高校生たちが悔しくて泣いている姿を見ると、彼らが本気で3x3に取り組み、プロの舞台を目指していることを感じています。そんな若者が日本でもっともっと増えるように、自分たちが結果を残して、この舞台をもっともっと良いものにしていきたい」と言葉を続けた。

 

 表彰式後、コメントを求めると齊藤はこんな話をしてくれた。
「今日は彼らのために、負けてしまった彼らのために、日本一を獲りたいと公言していました。彼らの本気度とか努力といったものをものすごく肌で感じて、彼らが真摯に3x3に打ち込む姿に、プレーヤーとしての自分も影響を与えられています。今日の試合も、終盤は劣勢でしたが、最後まで諦めずに逆転して優勝することができたのは、そんな彼らの姿があったからこそだと思います」。

 

 

 体を酷使する選手としての活動に加えて、齊藤は寸暇を惜しんでプロジェクトに身を捧げている。「自分が今やるべきだと感じているので、まずは自分ができることをやって、高校生やもっと下の年代の子たち、大学生も含めて…にもっともっと夢や希望を与えていきたい」。齊藤は熱を込めてそう語った。

 

 UTSUNOMIYA BREXの大きな得点源はMVPを受賞したポポビッチだが、渾身のパスやアシストでゴールの場面を演出するのは齊藤や柴田、飯島だ。そうして道なきところに道を作り出そうと奮闘する彼らの高い士気が、困難な場面で発揮されるチームの高い一体感や、勝利へと突き進む熱量の源となっている。齊藤はきっと、同じ一体感で高校生たちに接し、同じ熱量を持って指導に当たっているのに違いない。

 

取材・文/村山純一(月刊バスケットボール編集部)
写真/山岡邦彦



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