月刊バスケットボール5月号

地元のライバルに闘志を燃やした/中部大第一#6谷口歩【インターハイ2021】

#6谷口歩(中部大第一

 

 男子準決勝の第1試合は、中部大第一(愛知①)福岡大附大濠(福岡)を83‐69で下し決勝進出を決めた。

 

 強豪校同士、ハイレベルな戦いが繰り広げられたが、「シュートの踏ん張りが効かなかった。正直、足にきていた部分があったと思います」と片峯聡太コーチが言うように、大濠は最初から最後まで3Pシュートに当たりが来なかった(2/25本)。一方の中部大第一は#7田中流嘉洲や#8アブドゥレイ・トラオレがインサイドでイニシアチブを握り、外からは#5福田健人のドライブや#14坂本康成の3Pシュートが炸裂。内外角がバランス良く得点を重ね、大濠の反撃の芽を摘んだ。

 

 この試合、中部大第一のベンチがひときわ沸いた場面があった。4Q開始1分半、 控えガードの#6谷口歩がスティールし、大濠の#13岩下准平からバスケットカウントを奪った場面だ。2人は西福岡中時代の元チームメイト。谷口は「准平はどう思っているか分かりませんが(笑)、僕は中学時代からすごく意識してきました」と言い、中部大第一の選手たちもそれをよく分かっているからこその大喝采だった。

 

#13岩下准平(福岡大附大濠

 

 谷口は日本代表の比江島慎(宇都宮)と同じミニバスチームの出身で、ミニバス、中学ともに全国準優勝を経験してきた豊富なキャリアの持ち主。その後、高校の進学先として選んだのは、県内のチームではなく愛知県の強豪・中部大第一だった。「(岩下)准平を超えるために、そして福岡のチームを倒すために中部大第一に来ました」と、地元のライバルたちに負けられない思いがあったのだ。

 

 中部大第一入学後は1年生の頃から主力の一人として出場機会を得てきたが、下級生のときは「福岡のチームを倒す」という目標は叶わず。また、3年生になると2年生ガードの#11下山瑛司がメキメキと頭角を現したこともあり、バックアップに回ることになった。悔しさは当然あっただろうが、「僕自身、スピードを長所にやってきたのですが、下山はそれを上回るスピードや緩急を持った選手。まずはそれを認めて、それを一番近いライバルとして超えられるように努力していけば、お互いに伸びると思って。認めることを大事に頑張ってきました」と谷口。腐らずに努力し続け、今大会はシックススマンとしての役目に徹してきた。

 

 そうした中で今回、チーム一丸となって手にした大きな勝利。試合後の第一声、谷口は「めっちゃくちゃうれしいです! うれしすぎて泣きそう」と喜びを弾けさせた。ただ、もう一つの目標「日本一」まではあと一試合残っており、「大濠の分まで、福岡のみんなの分まで頑張りたいです」と谷口。彼自身、全ミニと全中で準優勝の悔しさを味わってきたが、中部大第一としても2018年、インターハイ、国体、ウインターカップと1年間の全国大会で全て準優勝に終わった過去がある。卒業生たちの無念も背負い、明日の決勝、夏のラストゲームに全力を注ぐ構えだ。

 

 

取材・文/中村麻衣子(月刊バスケットボール)

写真/石塚康隆

 

(月刊バスケットボール)



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