月刊バスケットボール5月号

【ウインターカップ2020】桜花学園 対 東京成徳大。歴史を築いてきた両校による決勝戦が示したもの

 大会6日目、女子決勝の対戦は2年連続23回目の優勝を目指す桜花学園(愛知)と、35年ぶり4度目の優勝を目指す東京成徳大(東京)の顔合わせとなった。

 

 両校のウインターカップ決勝での対戦は過去に5度あり、いずれも桜花学園が勝利している。2007年から2009年までは3年連続で両校の顔合わせとなったが、当時の桜花学園には渡嘉敷来夢(現ENEOS)、東京成徳大には間宮佑圭(現姓・大﨑。元ENEOS)が在籍していた。※間宮は1学年上で、2009年に3月に卒業

 

 ともに日本代表として世界を相手に戦った選手を輩出した両校の対決は、ウインターカップの歴史においてもどっしりとした重量感を感じさせるものだ。

 

桜花学園と東京成徳大、両校による決勝対決は2009年以来11年ぶり

 

 そして今年の決勝。

 

 桜花学園は、186㎝の♯10オコンクウォ・スーザン・アマカ、185㎝の♯11朝比奈あずさを軸とした高さを生かしたバスケットで、東京成徳大の前に立ちはだかる。スタート早々、2人が着実に得点を重ねるのに対して、東京成徳大は厳しい相手ディフェンスをかいくぐって放つシュートはなかなか精度が上がらす、武器である3Pも微妙に軌道が乱れた。1Qを終えて、得点は桜花学園が21‐12とリード。

 

 2Qに入ると、東京成徳大は交代でコートに入った♯8小島瑠生を始め、ベンチメンバーがチームの雰囲気をリフレッシュするプレーを展開し、得点差を1ケタ内に収める踏ん張りで42‐33と食い下がる。

 

 動きが出たのは3Q。追いつき、追い越すために必要な、そして本来は持ち味であるはずの3Pの確率が上がらない東京成徳大に対して、桜花学園はアマカがゴール下での4連続得点で17点差まで引き離す。しかし、これ以上引き離されまいと東京成徳大が執拗なディフェンスを見せると、桜花学園のキャプテン♯4江村優有がたまらず4つ目のファウルをおかしてベンチに下がるなど、これまでにない緊張感が漂い、数々の歴史を築いてきた両校による決勝であることを改めて思い出させた。
そして、この3Qの終盤で東京成徳大のキャプテン♯4山田葵がドライブとジャンプショットを連続で決め、62‐50の12点差とわずかながら詰め寄ったことで、緊張感は続く4Qへと引き継がれた。

 

桜花学園の江村、東京成徳大の山田、対峙する両校キャプテン

 

高さを最大限に生かしたプレーで東京成徳大の前に立ちはだかったアマカ

 

 しかし、その4Qもアマカ、朝比奈の高さを生かした桜花学園の優位は動かず、89‐65で勝負は決し、桜花学園の2年連続23回目の優勝が決まった。

 

 桜花学園の江村は、「今年最初で最後の大会で、チームの目標である優勝を達成することができてうれしいです。今まで1年間、ウインターカップのために準備してきて、最後に全力を出しきることができて良かった」と安どの表情で素直に喜びを語った。
なお、アマカはこの試合で女子として大会歴代2位となる53得点を挙げた(歴代1位は2017年に八雲学園(東京)の奥山理々嘉(現ENEOS)が3回戦の対徳山商工(山口)戦で挙げた62得点)。
チームを力強くけん引する活躍を見せたアマカは、「こんなにたくさん点が取れるとは自分でも思ってもみませんでした。チームメイトが自信をくれました。私は自分の仕事をするために、ベストを尽くしました。どんなに疲れていても、リバウンドやリバウンドからのシュートを決めるために頑張りました」と振り返った。

 

優勝を決め、喜びにあふれる桜花学園の選手たち

 

 一方、敗れた東京成徳大の選手たちには、涙とともに笑顔があふれていた。キャプテンとしての仕事を全うした山田は、「試合が始まる前に、勝っても負けても笑って終ろうと話をしていました。試合中も、最初は巻き返すことができなかったけれど、楽しくやろうとコートの中では話していたので、楽しく、全員が笑顔で終わることができたので良かったです」と清々しく語った。
そして、大会を通じてチームが最も成長したものとして、山田は「メンバーどうしのコミュニケーション力」を挙げた。「東京予選(Tokyo Thanks Match)で八雲学園に敗れたときに、コートの中でも、ベンチともコミュニケーションが全然取れていなかったと思うし、盛り上がりも全然なかった。予選が終ってからいろいろミーティングもして、特にこの1週間は楽しく終わろうという話をしていました」
コートに立った9人の選手全員が得点を挙げたのは、山田が語る成長の一つの証明と言えるかもしれない。突出した能力を持つ選手はいないが、それは正にチーム一丸となって戦ったからこそ成しえたものだ。

 

試合終了直後、ともに戦った仲間たちに声をかける山田(中央)

 

 コロナ禍でチーム作りの時間が限られた中、確かな成長を見せた選手たちについて、東京成徳大の遠香周平コーチは語った。
「自分たちがやってきたものを信じてやりきるということが、どれだけ大変なことかを、この大会で知ったと思います。できた試合もあれば、あまりできなかった試合もありましたが、大会まで、この“信じる量”“信じる大きさ”が大きいほど勝てる。相手も自分たちも、何かを信じてやってきました。やっぱり、自分たちを信じてやりきることが大事じゃないのかという話をしてきたので、その部分では、自分たちのやってきたことをしっかりやりきればいいんだ…という気持ちにはなってきたと思います」
やりきったからこそ、涙の中にも、あの晴れやかな笑顔が見られたのだろう。

 

優勝○桜花学園(愛知)

 

準優勝○東京成徳大(東京)

 

 

<ベストファイブ>
江村優有(桜花学園♯4 3年)
オコンクウォ・スーザン・アマカ(桜花学園♯10 3年)
朝比奈あずさ(桜花学園♯11 2年)
山田 葵(東京成徳大♯4 3年)
須田理恵(東京成徳大♯6 3年)

 

写真/JBA
取材・文/村山純一(月刊バスケットボール)



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