月刊バスケットボール6月号

【ウインターカップ2020】富岡東(徳島)の奮闘を生み出した見えない力

 大会2日目、女子2回戦では富岡東(徳島)と中津北(大分)が対戦した。


だが、富岡東にとって、実はこの試合が今大会の初戦だった。1回戦で対戦するはずだった土浦日本大(茨城)の欠場のため、戦うことなく2回戦進出となったからだ。

 

 試合は、序盤から終盤に至るまで僅差で形勢が入れ替わる、互いに譲らぬ競り合いとなった。しかし、第4クォーターの残り2分15秒、富岡東が79‐80と1点リードされたところから、中津北は#4木下菜月の連続シュートが決まって79‐84とその差は開いた。その後、富岡東も#5大西乙華のシュートで81‐84と迫るが、結局このスコアのまま試合は終了。2年ぶり9回目の出場となった今年の大会での勝利はならなかった。

 

 それでも、前日に千葉英和(千葉)との1回戦に競り勝ち、試合勘で勝る中津北に対して、富岡東の戦いぶりは見事なものだった。その力を引き出したものは何だったのだろう。キャプテンの♯4清水茜はこう語った。


「(土浦日本大の欠場により不戦勝が決まった時は)最初はやっぱり複雑な気持ちになりました。でも、土浦日本大の分もしっかり自分たちが頑張らないといけない、そういう気持ちを持ってチーム全員で臨みました」

 

写真左より♯10吉村香穂、♯8福永結、♯4清水茜。チームは心を一つにして戦った

 


♯5大西乙華は最後まで果敢にゴールに挑んだ

 


ベンチのメンバーもコート上の仲間たちと一体となって戦った


新型コロナウイルスはさまざまな形で傷跡を残している。だが、コートの中では対峙するライバルも、一歩コートを出れば、“バスケットボール”という絆で結ばれた仲間どうしであることも浮き彫りにした。


本来ならば1回戦を戦っていた初日のコート、その同じ時間帯に富岡東は2回戦に備えて練習を行っていた。4つのコートが並んだ武蔵野の森総合スポーツプラザ、他の3面のコートではシリアスな戦いが展開されていた。そこに漂う“気”を感じ、土浦日本大の思いを汲むことが、富岡東にとって試合に挑む大きな力となったに違いない。


惜しくも敗れた試合後、清水はこう振り返った。


「最初は取られてもすぐに取り返して、自分たちのバスケができていたのですが、最後はちょっと点差が離れて、すぐ取り返すことができなくて…。でも、全国大会が開催されることに対してはすごく感謝しています。チームで、何とかここまで、目指すところまで来ることができたと思います」

 

 悔しさを滲ませつつ、清水の表情にはどこか清々しさも感じられた。

 

写真/JBA
取材・文/村山純一(月刊バスケットボール)



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