月刊バスケットボール5月号

【WINTER CUP HISTORY vol.4】才能と環境の融合。八雲学園・奥山が女子史上最多の62得点

 

 才能を育てる環境がいかに大切か。2017年のウインターカップで女子史上最多となる62得点を挙げた奥山理々嘉(八雲学園。現ENEOS)は、それを体現した選手と言える。

 

 身長が高かったことから小3のときにバスケットを始めた奥山。そうした理由でバスケをスタートさせる選手はリング下のプレーだけになりがちだが、奥山にはドリブルをする器用さとシュートセンスがあった。奥山が小6のときからそれに注目していたのが八雲学園中の高木優子コーチ。奥山を誘うが、当の奥山は地元の坂本中に進学することを選択する。

 

 中学生になった奥山は、中2のときに神奈川代表としてジュニアオールスターに出場し優勝。最優秀選手に選ばれている。また、中3になったときにはそれまで全国とは無縁だった坂本中を初めて全中の舞台に導き、3位という好成績をマーク。優秀選手に選ばれた奥山の活躍が軸になったことは間違いない。

 

 その奥山が中学卒業後の進学先として選んだのが八雲学園高。中学時代も試合を見に来ていた高木コーチに再び誘われてのことで、このときに八雲学園高を選んだことが、奥山の才能をさらに開花させる。というのも八雲学園は「バスケットは得点を取ることが面白い」という高木コーチの理念により、オフェンスに重点を置くスタイルのチーム。“シュートは水物で、勝つにはまずディフェンスを固める”というのが強豪校の一般的な考え方だが、八雲学園高で得点することの楽しさを見出した奥山は、ペイント付近での得点バリエーションを増やしただけでなく、外角からの3Pシュートも武器にしていく。

 

 その強豪校としては珍しいオフェンス重視の環境でさらに得点能力を高めた奥山が臨んだのが、2017年のウインターカップ。初戦となった2回戦(対郡山商)で45得点を挙げると、続く3回戦(対徳山商工)で前述のようにウインターカップ女子史上最多の62得点をマーク。それまでの最高記録は1989年の2回戦で加藤貴子(富岡)、2011年の準々決勝で長岡萌映子(札幌山の手。現トヨタ自動車)が挙げた51得点だったが、奥山は2Pで54得点、3Pで6得点、フリースローで2得点を挙げ大幅に上回っただけでなく、この試合ではリバウンド20とディフェンスでも驚異的な数字を残している。

 

 その後、奥山は準々決勝(対広島皆実)で42得点、準決勝(安城学園)でも42得点。疲れが見えた3位決定戦は16得点と落ちたが、それでも最後までその得点能力の高さを見せ付けた。

 

 このとき奥山は2年でキャプテンを務めていたが、3年ではなかったのも大きかったと思われる。もし最終学年であれば、目に見えない“責任感”というプレッシャーがかかり、ここまでオフェンスにフォーカスできなかったかもしれない。何はともあれ62得点という記録は、奥山の才能と、八雲学園の環境という2つが見事に融合したからこそのものと言えるだろう。

 

 大記録を打ち立てた翌年の2018年には3人制日本代表に選出され、2019年に加入したJX-ENEOS(現ENEOS)サンフラワーズでWリーグ優勝、さらに女子日本代表候補になるなど飛躍を遂げている奥山。八雲学園時代に培ったプレースタイルを武器に今後もさらなる進化を見せてくれるだろう。

 

https://twitter.com/U18_JBA/status/1339827890590892033?s=20

 

(月刊バスケットボール/高木希武)



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