月刊バスケットボール6月号

大学

2020.10.28

関東大学バスケ「オータムカップ2020」は大東文化大と東海大が決勝へ!

 関東大学男子バスケットボールリーグ戦の代替大会「オータムカップ2020」。12チームで争われる1部トーナメントは10月25日、準決勝の大東文化大vs. 筑波大、東海大vs.白鴎大の試合が行われた。

 

因縁の対決は
ディフェンスがポイントに

 

 大東文化大vs. 筑波大といえば、ここ数年多くの熱戦を演じてきた“因縁”のカード。2017年に筑波大のインカレ4連覇を阻止したチームこそ大東文化大であり、昨年のインカレ準決勝で関東1位の大東文化大を2点差で下してそのまま頂点まで駆け上がったのが筑波大だった。特に大東文化大の選手たちにとって昨年の屈辱は忘れがたく、「試合に選手たち(のモチベーション)を持っていきやすかった」と西尾吉弘コーチ。1Qこそ高さで勝る筑波大の前に得点が伸び悩んで遅れを取ったが(7-15)、「粘って粘って勝とうとチームメイトと話していた」とキャプテン#2飴谷由毅が話すように、気迫のこもったディフェンスで追撃。オフェンス面では、今年から出番を勝ち取った3年生の#8石川晴道が「ベンチから出る立場としてアグレッシブなプレーで試合の流れを変えることを意識した」と、このQだけで3本の3Pシュートを沈め、1点差まで追い上げて後半に入った。

 

 3Qに入っても大東文化大はディフェンスの手を緩めない。攻めては筑波大#75井上宗一郎が負傷で一時ベンチに下がった隙に、#12中村拓人と#34バトゥマニ・クリバリの“ホットライン”が連続得点。中村いわく「バット(バトゥマニ)とは高校時代からずっとやってきているので、バット自身も自分のパスのタイミングが分かっていると思います。共通理解があるので自分もパスを出しやすい」。9点リードで最終Qを迎えた大東文化大は、その後も石川や中村の3P、飴谷や#21野原暉央のドライブなどで満遍なく得点を重ねて流れを渡さず、筑波大の反撃の芽を摘んで決勝への切符を手に入れた。

 

 試合後、ディフェンス面で「やってきたことが出せました」と手応えを得た様子の西尾コーチ。たとえ得点力があっても「ディフェンスができない選手は試合で使わない」という方針で、例えば今年から台頭してきた石川についても「(ロスターから外れていた)下級生の頃はディフェンスが課題でした。身長が小さい分、ディフェンスの運動量はずっと求めてきて、少し良くなってきた」と評する。ここ数年、すっかりディフェンシブなチームカラーが定着してきた大東文化大は、2年連続となる関東王者の座を虎視眈々と狙っている。

 

 一方、敗れた筑波大は開幕直前に浅井修伍が、大会初戦で半澤凌太がケガを負うなど、万全の状態でなかったことは確かだが、キャプテンの#8菅原暉が語ったのは戦術以前の反省点。「試合中にも沈んでいるというか、まだ巻き返せる時間帯なのに下を向いている選手が多く、僕もそこで全員の気持ちを一つにできなかった。全員が同じ方向を向いていなかった」。連覇の懸かるインカレに向け、この敗戦を苦い良薬として飛躍を遂げられるか。

 

積極性を見せてシックススマンの役目を果たした大東文化大#8石川

 

数字以上に存在感の大きい
東海大ルーキー#5河村

 

 もう一つの準決勝、東海大vs. 白鴎大の試合は、前後半で大きく流れが入れ替わる形となった。両者ともに硬い立ち上がりとなる中、徐々にペースをつかんだのはバランスの取れた布陣で的を絞らせなかった白鴎大。逆に東海大は攻防ともにミスが多く、ガードの#11大倉颯太が攻め気を見せるもリズムに乗れない。前半を終えて36-27と、白鴎大が9点リードに成功した。

 

 だが、3Qで試合は一転した。「ディフェンスのアグレッシブさの不足やオフェンスのターンオーバーなど、2Qで流れが悪くなった原因をしっかり再認識して後半に臨んだ」(大倉)という東海大は、3Qの出だしから白鴎大を攻防で圧倒。特に集中を見せたのが持ち味のディフェンス面で、インサイドでは#86八村阿蓮が接触をいとわず#45シソコ・ドラマネや#52ブラ・グロリダをよく抑え、アウトサイドでは#60坂本聖芽や#5河村勇輝といったフレッシュなセカンドメンバーが積極的にプレッシャーを仕掛けた。結局3Qは僅か1失点。14点差で入った4Qも試合を優位に進め、73-53で快勝した。

 

 東海大は大倉や八村といった柱の選手たちがしっかりと仕事を果たしたが、ルーキー・河村の活躍も見逃せない。大学での公式戦3試合目となるこのゲームは、22分22秒の出場で2本の3Pシュートを含む13得点、5リバウンド、2スティール。特筆すべきはその確率の良さで、外したシュートは3P1本のみ。前半残り35秒で決めたステップバックスリーなど、ここぞという場面で価値あるシュートを沈め、活躍を印象付けた。

 

 今年の1年生はコロナ禍で入学を迎え、春から練習自粛や大会中止の煽りを受けてまだまだ大学バスケットは手探りの状態。それはもちろん河村も例外ではないが、そんな状況ですでに頭角を現しつつあるのは末頼もしい。チームメイトからの信頼も厚く、大倉の言葉を借りれば「チームに欠かせない存在。1年生とか関係なく信頼できる」。大倉は河村と2ガードで出る時間帯にはゲームメイクを彼に任せて積極的に攻めに転じることができ、ガードとしての負担も大きく軽減された様子だ。河村の存在は数字以上に大きいと言えるだろう。

 

 こうして、11月7日に行われる1部決勝戦は大東文化大vs.東海大というカードになった。昨年のリーグ覇者・大東文化大と、大学界屈指の層の厚さを誇る東海大。リーグ戦ではなく一発勝負のトーナメント方式で顔を合わせるのは、2018年春のトーナメント準々決勝以来と久しぶりだ。どちらもディフェンスに定評があり、決勝は“守り合い”の我慢比べとなるか。また、ともに主力に3年生以下の下級生が多く、決勝の大舞台で本来の力を出し切れるかという不安要素がある一方、殻を破って大化けする可能性も秘めている。いずれにせよ、今年初の栄冠を獲得してインカレに弾みを付けるのはどちらか、見逃す訳にはいかない。

 

東海大#8河村と#11大倉による破壊力抜群の2ガード

 

インカレ出場権を懸け
11月13日の戦いも熱戦必至!

 

 この準決勝と同日、1部下位4チームの順位決定戦が行われ、9位中央大、10位神奈川大、11位拓殖大、12位早稲田大という順位となった。この4チームはインカレへの出場権を懸けて、2部の上位4チームと11月13日に「インカレチャレンジマッチ」を戦う。

 

 初日に筑波大に敗れて順位決定戦に回ってから、2連勝を挙げたのが中央大だ。特に神奈川大との9位決定戦でキーマンとなったのが、1年生ながらスタメンに名を連ね、この試合チーム最多の30分28秒出場となった#2内尾聡理。1Qの途中から相手の得点源となる#34工藤貴哉とマッチアップし、「3Pシュートがとても上手な選手なので、そこは気持ち良く打たせないように意識しました」と徹底マーク。リバウンドやルーズボールにも果敢に飛び込んで“らしさ”を発揮し、チームに流れをもたらした。「(福岡第一)高校時代と変わらず、チームからはディフェンスやリバウンド、ルーズボールが求められています。加えて得点面もこれから伸ばしていきたい」と内尾。怖いもの知らずのルーキーが、今後もチームの起爆剤となるか。

 

 11月13日に行われるインカレチャレンジマッチの対戦カードは、2部上位4チームの順位が確定する11月8日に決定する。今年度は入れ替え戦や自動昇降格は行われないが、“勝てばインカレ、負ければシーズン終了”という一発勝負に懸かる重圧は相当なものだ。特に4年生にとっては学生バスケットの引退を懸けた大一番。こちらも1部決勝戦に負けず劣らず、互いのプライドを懸けた激闘が繰り広げられることだろう。

 

スティールからの速攻など好プレーで流れをもたらした中央大#2内尾

文・写真/中村麻衣子(月刊バスケットボール)



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