【最新・月刊バスケットボール7月号】チーム作りの達人たち(三島正敬/浜松開誠館高)

 激戦地区で知られる東海地区で、徐々に頭角を現している浜松開誠館高。率いるのは三島正敬コーチだ。自身初となる女子部の指導に苦戦しながら、サイズが小さくても全国で戦えるチームを築き上げてきた。現在はアンダーカテゴリー女子日本代表のアシスタントコーチも務め、世界と戦える日本人選手の育成にも尽力している。そんな三島コーチのフィロソフィーとは――。

 

「変えられるものは何だろうと考えたときに、選手ではないんです。自分の指導の質を変えるんです」

 

――チームが大きく変わるきっかけなどはありましたか?

「夏に奈良学園大と長野で合宿をする機会がありました。そのときに大学生がものすごく一生懸命練習を行っていて、さらに奈良学園大の永保コーチも『練習はこういうふうにするものだ』と熱心に選手たちへ指導してくださいました。その姿に感銘を受けましたね。そこから練習への取り組み方が変わりました。そして、その年はウインターカップ県予選で2位となり、翌年から勝てるチームになってきました」

 

――三島コーチご自身も変化した部分はありましたか?

「人間のコアな部分ですね。練習の真剣さや、大学生が一生懸命声を出して練習をしていて、集合とかも全力で走ってきて。その光景を見た瞬間に『今まで、なんてダラダラと練習をしていたんだ』と思いました。大学生は練習も短いですよね。そういった部分を全部まねしてみました。技術的な部分は、今まであまりこだわりがなく、あれやってみよう、これやってみようという感じで自分自身が一つ一つに対して緩かったのだと思います。さらに選手たちには常に怒ってばかりで、バスケットボールを嫌いにさせてしまっていたかもしれません。当時はそういったトップダウンが指導者の正義だと思っていました」

 

――現在の選手たちとの関わりはどのようにしているのですか?

「選手から『意識って何ですか?』と聞かれました。そのとき、私は答えられなくて。『勝ちたい』や『うまくなりたい』など、自分自身の意識は高いものが当たり前じゃないですか。でも選手たちはそういった部分ではないところで戦っていたんですね。戦っている相手が違っていたんです。でも、戦わなきゃいけない相手は目の前の相手なので。そういったところに少しずつ気付いてきました。やらされているままじゃ駄目だということや、選手とコーチの思いを共有していくことが大事なんだというところに行き着きました」



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