
香西宏昭。現在、日本車いすバスケットボール界において唯一の“プロ”である彼は今、ドイツ・ブンデスリーガでの6シーズン目を送っている。リーグきっての強豪RSVランディルに移籍した昨シーズンは、世界のトップステージでその実力の高さを十分に示し、ランディルにとって欠かすことのできない存在となった。
その香西に今シーズン待ち受けていたのは、予想をはるかに超えた試練だった。
文・写真/斎藤寿子
1か月遅れでの合流
救世主からベンチ要員へ
昨年10月、アジアパラ競技大会を終えた香西は一度日本に帰国し、その数日後に はドイツへと渡った。すでにリーグは開幕し、1か月遅れでのチーム合流だった。
実はそれは1年前と同様で、昨シーズンは10月に世界選手権のアジア・オセアニア予選に出場したため、香西にとってのリー グ開幕は11月に入ってからのことだった。しかし、チーム状況はまるで違っていた。昨シーズンは優勝候補の筆頭に挙げられながら、6試合で3勝3敗と波乱が起きていた。香西が合流したのは、そんな時だった。
「ヒロ、チームに戻ってきてくれて、ありがとう」
チーム練習に参加した初日、ヘッドコーチにそう言って迎えられたという。そして、その言葉どおり、すぐにスタメンに抜てきされた。すると、チームは息を吹き返したかのように白星を積み重ね始めた。リーグ戦が終了するまで約4か月間、ランディルはリーグ戦では無傷の12連勝。さらに日本の「天皇杯」と同じくオープントーナメント形式のドイツカップでは連覇を達成した。結果的にランディルは、リーグ準優勝、欧州クラブ選手権もベスト4でシーズンを終えた。香西はそんなチームの〝救世主〞と言っても過言ではなかった。〈
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