月刊バスケットボール5月号

NBA

2018.05.18

日本でも大いに参考になるサイズにとらわれないNBA“スモールボール”の戦い(ロケッツvs.ウォリアーズ)

 “NBAプレーオフ2018”のウェスタン・カンファレンスファイナル第2戦は、ホームのヒューストン・ロケッツが127-105でゴールデンステイト・ウォリアーズに快勝し、シリーズ成績を1勝1敗のタイにした。


どこからでも得点できるウォリアーズが昨シーズンのチャンピオンになり、“スモールボール”が注目された。“スモールボール”とはインサイドプレーヤーにこだわらず、サイズの小さなラインナップで豊富な運動量と確率の高いシュートを量産して戦うスタイルのことだ。 
対するロケッツも今シーズン、NBAで最も多くの3Pシュートを決めるなど、ラン&ガンを得意とするチーム。 
この2チームがウェスタン・カンファレンスファイナルで対戦しているのが、非常に興味深い。ある時間帯では、両チームともサイズの大きくないラインナップ(下記参照)で戦っていたのである。

 
【ロケッツ】
★クリス・ポール 183cm
★ジェームズ・ハーデン 196cm
★エリック・ゴードン193cm
★P.J.タッカー 198cm
★トレバー・アリーザ203cm



【ウォリアーズ】
★ステフィン・カリー 190cm
★クレイ・トンプソン 201cm
★ケビン・デュラント 206cm
★アンドレ・イグダーラ 198cm
★ドレイモンド・グリーン 201cm

 

 特にロケッツは2m台がアリーザのみ。両チームとも、ガードかフォワードしかおらずセンターはどこにもいない。身長だけ見れば、現在の日本でも十分に組める大きさだろう。ただし、両チームのプレーヤーには共通点がある。1対1のスキルが抜群であることと、シュート力があること、フィジカルが強いことなどが挙げられる。


オフェンスの基本的な考え方は、ディフェンスがスイッチすることを前提に、相手チームの弱みを突き、自チームの強みを生かすということ。つまり、瞬時に、相手チームの弱点を見つけ出し、徹底して攻撃する高いバスケットボールIQも要求される。これはインサイドで高さのミスマッチを利用する程度のレベルではない。コーチの指示の下、プレーヤーたちの総意で徹底しているのだ。



ロケッツはジェームズ・ハーデンが1対1する際、動きのあまり速くないケボン・ルーニーを徹底して攻撃し、ディフェンスに弱点のあるニック・ヤングを攻め立てた。一方のウォリアーズはシューターぞろいのラインナップを生かすためにスクリーンを駆使し、さらにディフェンスの裏をつく。表を抑えれば、裏でやられてしまうようなオフェンスだ。

 そして、どちらにも共通して言えることは、オフェンスのほとんどがペイントにポストアップしてインサイドゲームをするということが圧倒的に少ないことである。前述の“スモールボール”は、プレーヤー全員がリングに正対してプレーできるのだ。



日本ではパッシングゲームが今でも主流だが、アメリカは卒業しつつある。パスでディフェンスとのずれを作ったり、ペイント内にボールを入れたりする本質に変わりはないだろうが、方法が明らかに変わってきている。そのためにプレーヤーはサイズに関係なく、リングに正対してプレーすることができ、3Pシュートを確率良く決めることができなければならない。 
このようにNBAのゲームは、身体能力の高さを見せ付ける派手なプレーだけでなく、日本でも大いになることがたくさんある。 
ロケッツ対ウォリアーズの第3戦は、ウォリアーズのホームであるオラクル・アリーナに場所を移して行われる。



(月刊バスケットボール)



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