月刊バスケットボール5月号

今週の逸足(CLASSIC KICKS)Vol.5-2

  Vol.5 ASICS GEL SPOTLYTE アシックス ゲル スポットライト   文=岸田 林   (つづき) こうしてトーマスというスターを獲得したアシックスは、米国での『αGEL(米国ではASICS GEL)』の大々的なプロモーションに乗り出す。おりしもナイキとリーボックがナンバーワンスポーツブランドの地位を巡ってしのぎを削っていた時代に、アシックスは『ゲル スポットライト」』を“(リーボック)ポンプよりも軽く、(ナイキ)エアよりも衝撃吸収性が高い”といった挑発的な売り文句でアピールしたのだ。   その立役者となったトーマスは、今から2年前、スニーカー情報専門サイト『スニーカーニュース』のインタビューで、「20年後、自分のシューズがまさか復刻されるとは思っていなかった」と率直に語っている。彼は今でも「自分がデザインした思い入れのあるシューズだから」と、オリジナルの『ゲル スポットライト』を大切に手元に保管しているという。「私たちはポイントガードのためのシューズ作りについては、パイオニアだと思っている。私は多くの会社の中からアシックスを選び、アシックスもまた私を選んだ。私がアシックスを選んだのは、彼らが『(自分のような)小柄な選手が何をシューズに求めているか』を話してくれたからだ」とトーマスは語っている。   アシックスはその後もカルバート・チェイニー(当時クリッパーズ)、セデル・スリート(元レイカーズほか)ら地元LAの若手選手とも契約。92年にはトーマスに加え、ボビー・シグペン(MLB)、リロイ・バレル(陸上)ら、各界の実力派アスリートを起用した広告キャンペーンを展開し、本格派スポーツブランドとしてのイメージを米国でも強化した。   一方のトーマスは、その後も『ゲルスカイライトMT』『ゲルスカイゾーン』など、94年に引退を表明するまでアシックスを着用し続けた。引退直後にはチームUSA(通称ドリームチーム2)にも選出されたがケガのため出場できず、残念ながら米国代表としてプレイする彼の姿は幻に終わったが、彼が見せた雄姿は、足元のアシックスとともに、特に日本のファンの脳裏に今も焼き付いている。 (おわり)   写真=石塚康隆 (月刊バスケットボール2017年5月号掲載)

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