月刊バスケットボール5月号

今週の逸足(CLASSIC KICKS)Vol.2-1

  Vol.2 REEBOK OMNIZONE 2 リーボック オムニゾーン2   文=岸田 林   ★シューズ界に衝撃をもたらしたポンプ搭載シューズ 2016年、ナイキが靴ひもを自動的に調整してくれるシューズ「ハイパーアダプト1.0」を製品化し話題となった。このアイデアの原点は、映画『バック・トゥ・ザ・フューチャーⅡ』に登場する“未来のシューズ”。映画のためにナイキ自身が美術協力して制作されたものだった。映画が公開された1989年は、おりしもハイテクバッシュの黎明期。衝撃吸収性の高いクッション開発競争がナイキ「エア」の一人勝ちに終わると、スポーツブランド各社は“次の戦場”を、シューズのフィット感に定めていた。現在ではリーボックの代名詞となった「ポンプ」システムも、まさにこの年に登場している。   「ポンプ」システムは、もともとエレッセ(80年代に人気を集めたスポーツブランド)のスキーブーツに使用されていた技術だった。リーボックは1987年にエレッセの北米におけるビジネスを買収すると、その技術を応用し、ハイテクバッシュ戦争に参戦。当時リーボックは女性向けフィットネスシューズ「フリースタイル」の大ヒットで、すでに売上高ではナイキを上回る存在であり、次なる目標はトップスポーツブランドとしての地位固めだった。   そして、およそ1年後、「ポンプ」システムを初搭載したバッシュ、「ザ・ポンプ」が完成すると、リーボックはドミニク・ウィルキンズ、ドック・リバース(共に当時ホークス)、ダニー・エインジ(当時キングス)、デニス・ジョンソン(当時セルティックス)、バイロン・スコット(当時レイカーズ)らと契約し、本格的なNBAでのプロモーション活動を開始。中でも“ヒューマン・ハイライト・フィルム”の異名を持つウィルキンズは、1990年のスラムダンクコンテストで「ザ・ポンプ」を履いて優勝している。   その後90年代に入り、マイケル・ジョーダン(当時ブルズ)の台頭とともにナイキ人気が急激に高まると、リーボックはライバルを強烈に意識したキャンペーンを展開、ナイキとの全面戦争に乗り出す。   「高く跳び上がることは簡単だが、着地時のほうが問題だ。だからこそ僕はポンプで跳ぶ」   新作のポンプバッシュ「トワイライトゾーン」を左手に掲げたウィルキンズがCMでこう語り掛けると、右手に持ったナイキの「エアコマンドフォース」を画面の外に投げ捨てる。『Pump up, Air out』 と名付けられたこのキャンペーンにはデニス・ロッドマン(当時ピストンズ)やビル・ウォルトン(元セルティックスなど)に加え、グレッグ・ノーマン(ゴルフ)、マイケル・チャン(テニス)、ブーマー・アサイアソン(NFL)といった各界のスーパースターが起用され、2社の戦争はスポーツを超えた話題となった。   (つづく)   写真=中川和泉 (月刊バスケットボール2017年2月号掲載)

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