【中国インターハイ2016記者の目】エースの定義
前半から激しいマッチアップを展開し、チームとしてもそれぞれの得点を防ごうという意識も高く、互いに思うように得点が伸びない。 特に北陸学院は大倉が得点源となるだけに、前半は24得点とチームとしても苦しいオフェンスとなった。 それでも後半は3Pシュートがよく決まり、結果として両チーム最多の36点を挙げた大倉。 対する岡田は、フリースローが0/6と最後まで調子が上がらなかったが、ドライブや速攻で17得点を挙げた。 数字だけを見れば大倉に軍配が上がったが、“チームを勝利に導く”ということを考えれば、エース対決は結果同様、岡田に軍配が上がったように感じられた。 1Qは2点に終わった岡田は、22-7と大きく差を広げた2Qにドライブや3Pシュートで11得点。 さらに大倉の連続得点で75-65と追い上げられた4Q終盤、チームがピンチを迎えると、コートに立つやいなや、すぐさまドライブを決め、差を12点に。 時間帯を考えても、この一本が北陸学院の反撃の芽を完全に摘んだのだ。 岡田の17得点は、非常に効果的かつ要所で見られ、大倉が「侑大さん(岡田)調子が悪くてもアタックしてくるし、4Qで交代した直後にドライブをして、やっぱりエースという感じがします」と言うように、17得点以上のダメージを北陸学院に与え、チームを勝利に導いたのだった。 また初戦後に岡田は「調子が悪くても⑨パトリックをはじめ、ほかの選手に点を取らせることも重要になります」と話し、この試合でも自分にマークを引き付けてパトリックや⑥松本へのアシストも見られた。 そういう意味でも、岡田のエースとして活躍は見事だった。 一方大倉も、自らが掲げる「スクリーンをかけながら、自分が中心でありながらもほかの人を生かして自分も生きる」というプレイヤー像に、岡田とマッチアップをしたことで一歩近付いた様子。 本人が言うように「まぐれな部分も多かった」分、チームとしての攻撃が少し単発になってしまう時間帯があり、「もっと楽に、自分がしたいことで得点したい」とベスト8に到達しても決して満足はしていない。 エースの定義はチーム、選手によって様々だ。 岡田のような選手もいれば、大倉のように爆発的な得点ができる選手、ベスト4に残ったチームで言えば重富兄弟(福岡第一)のような統率力の高さがある選手もエースとして定義することができる。 ただどんなときでも、チームを勝利に導いてこそ真のエース。 「侑大さんとのマッチアップは楽しかった」(大倉)という1試合を経て、大倉はエースとして、チームを勝利に導くための方法をどんなプレイで見せてくれるのか。 冬の逆襲に期待したい。
(月刊バスケットボール編集部)