月刊バスケットボール5月号

中学(U15)

2015.08.24

【岩手全中記者の目】リーダーのリベンジ

男子予選リーグ敗退となった、とあるチームのコーチがこう言っていた。 「うちにはエースはいません。でも、その差が出てしまったのかもしれない」   確かに、今日の男子の予選リーグを見ていると、ここぞという場面でエースが引っ張ったチームが、勝利をたぐり寄せていた。ジュニアオールスターに続いて2冠を狙う玉島北(岡山)でいえば④土家大輝、し烈な関東を制した実践学園(東京)でいえば④小玉大智のように、プレイや声で、チームを引っ張るリーダーのいるチームは、苦しい場面にも強い。全国大会のような大舞台でこそ、下級生の頃から積んできた経験や、仲間を気にかけるリーダーシップが大事になってくるからだ。   Gグループを1位で通過した白子(三重)にも、リーダーがいる。 4番の笹山陸だ。  

  父親はミニバスの指導者でもある白子中の笹山貴章Aコーチ、兄は昨年のインカレMVPの笹山貴哉(筑波大→三菱電機名古屋)という、バスケ一家に生まれた笹山。185㎝の高さを持ちながら、周囲を生かすアシスト、ここぞという場面での得点力が光る。また声を出してチームメイトともコミュニケーションをよく取っており、チームの絶対的リーダーだ。   ただ、予選リーグを終えて父の笹山貴章Aコーチに彼のことを伺うと、「まだまだ勝ちたいという気持ちを背負いすぎているように思います。もう少し、試合を楽しむ、良い意味での余裕があるといい」と言う。   笹山の“勝ちたい気持ち”のわけは、2年半前の全国ミニバス大会までさかのぼる。小学6年生のときに桜島ミニバスケットボールクラブの一員として大会に出場した笹山だったが、1試合目でいきなり千葉の村上イーグレッツBoy'sに42−43で敗戦。予選リーグ1勝1敗で、決勝トーナメントに出場することができなかったのだ(村上イーグレッツBoy'sはその後優勝を果たした)。   「全ミニのときの、リベンジという気持ちもあるのでしょう」と笹山貴章Aコーチ。2年半前の、1点差の惜敗から満を持して全国の舞台に戻ってきただけに、おのずと力んでしまう部分もあったのだった。ただ、笹山貴章Aコーチは「(2試合目の)最後の方に、ようやく良い顔になってきました。明日はもっと、試合を楽しめるんじゃないかな」と言う。   決勝トーナメントでは、村上イーグレッツBoy'sのメンバーがいる八千代松陰や、鈴鹿F1カップ・倉敷カップ・西日本カップと対戦しているライバルの玉島北は、逆の山。すなわち、互いに決勝まで勝ち上がらなければ、対戦することはない。決して簡単な道のりではないが、笹山をはじめ白子のメンバーは、頂点だけを見据えて明日からの決勝トーナメントを戦う。   核となるリーダーが普段どおりの力を発揮できれば、チームもさらに強くなるはずだ。人一倍の“勝ちたい気持ち”を背負い、彼らがどんな戦いを見せるか注目したい。  

写真:ハイタッチをかわす笹山貴章Aコーチと白子④笹山陸   (月刊バスケットボール編集部)

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