月刊バスケットボール5月号

【近畿インターハイ2015記者の目】強豪チームの共通点

※インターハイ期間、現地で記者の感じたこと・見たことを編集部ブログでお伝えしていきます。   6日間にわたる近畿インターハイが閉幕。男子は宮城の明成が初優勝、女子は愛知の桜花学園が4連覇の偉業を成し遂げた。   各チームの戦いぶりや試合の分析は、月刊バスケットボール10月号(8/25発売)でお伝えするとして、今回のブログでは、それとは違う話を紹介したい。   ------  

  “コートの外での日頃の行いが、プレイにもつながる”   日々コーチから、こうしたことを聞かされている中高生は多いのではないだろうか。これを聞いて、「ホントかよ」と、疑わないでほしい。全国大会に出るような強豪チームほど、日頃の行いを大切にしているものだ。それはインターハイでの取材を通じて、改めて感じさせられたことだった。   高校界No.1プレイヤーの呼び声高い明成の⑧八村塁にも、その点は当てはまる。   八村は今、高校卒業後の海外進出を見据えて、英語を勉強中だ。明成の佐藤久夫コーチいわく、「もともと大嫌いだった勉強を、一生懸命に頑張っています。するとコートの中でも、ゴール下で体を張ることをいとわず、嫌な仕事ができるようになりました」とのこと。決勝後、八村にこの評価を伝えると、「そう言ってもらえるのは、すごくうれしいです」と、照れながら笑顔を見せていた。   また、明成の体育館の入り口には、「礼儀を重んじない者の出入りを禁ず」と書かれた紙が貼られている。人としての礼儀や、他人に対する思いやりの心など、プレイ以外の面も大切にしているのだ。   それがコートに表れたのがインターハイ。欠場したガードの増子優騎の穴を埋めるために、⑥納見悠仁が司令塔をこなし、⑩三上侑希が不調だった準決勝や決勝は、⑦富樫洋介が代わってアウトサイドシュートをよく沈めた。このように、八村を含め全員が周りをフォローし、助け合う姿勢を見せたのも、日頃から人を思いやる気持ちの大切さを教わっているから。あの安定感、揺るぎない強さは、練習だけの賜物ではないのだ。   男子準優勝チームの桜丘にも、こんなエピソードがある。明成に敗れた昨年のウインターカップから、体育館の壁に貼っていた「打倒明成」の貼り紙。ところがある日、部員が教室を散らかしたまま部活に出てきたことがあり、江﨑コーチが怒ってその貼り紙をビリビリに破いてしまったのだという。   “打倒明成”を掲げる前に、まず日頃の行いから見直していくこと。遠回りに見えて、そうした原点回帰がチームの成長につながった。それが今回のインターハイで、桜丘が初の決勝進出を成し遂げる一因になったのである。   女子ベスト4に入った明星学園の④中田珠未は、準決勝の後、チームを勝利に導けなかったことに悔し涙を流しながらこう語った。「プライベートや普段の生活から、自分が明星学園のキャプテンだということを意識できれば、試合でも声を出して引っ張れると思います。コート外でも常に、チームのことを最優先に考えていきたいです」。全国でも上位に来るようなチームの選手たちは、日々の過ごし方の大切さを自分自身で理解している。   「教室に落ちているゴミを拾う気持ちがなければ、コートでもルーズボールは拾えない」と、以前あるコーチが言っていた。バスケットボールは、たった一つのルーズボールが勝敗を分けることもある。すなわち、練習外での日々の生活を大切にする者にこそ、勝利の女神は微笑むものだ。全国の強豪チームほど、そのことをよく知っている。   (月刊バスケットボール編集部)  

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