月刊バスケットボール5月号

技術&戦術

2021.05.22

【インタビュー】棟方 公寿氏(元羽田ヴィッキーズヘッドコーチ)が語る 「ピック&ロール(ボールマン)が飛躍的に上達する方法」とは?①

【スペシャルインタビュー①】

 

 ピック&ロールを武器に39歳までトヨタ自動車(現アルバルク東京)などのトップリーグでプレーした棟方公寿氏(元トヨタ自動車、元羽田ヴィッキーズヘッドコーチ)。ピック&ロールはカテゴリーや性別を問わず行われている2メンゲームだが、本来の目的やしっかりとしたスキルを持たないままプレーしている場合が多く見られる。そこで、棟方氏にピック&ロールが上達するためのポイント(ボールマンの動き)などを聞いてみた。

 

「ボールマンが急いでいるか、いないかで習熟度が分かる」(棟方氏)

 

*棟方公寿氏インタビュー①

【ピック&ロールの習熟度の目安は、ボールマンが急いでいるのか、いないのか】

 

――ピック&ロールが上手なプレーヤーと下手なプレーヤーの違いは、どういった部分にあると思いますか?

「まず、ボールマンがプレーを急いでいないかどうかです。もちろん、スピードは必要ですが、ボールスクリーンを使うときに急いでいるか、急いでいないか、この違いは大きいと思います。しっかりとスクリーンを使おうとしているかどうか。プレーヤーは『スピードを出せ』と言われると、どうしても急いでしまう傾向がありますね」

 

――それは、ダウンスクリーンを例に挙げた場合、速くカットすることばかりが優先され、スクリーンがセットされていないタイミングで動いてしまうようなことを似ていますね。

「そうですね、それは同じです。スクリーンを使うという部分では一緒です。ピック&ロールの場合では、セットされる前にドリブルを始めてしまいます。これが良くない理由としては、スクリナーがファウルトラブル(オフェンスファウル=イリーガルスクリーン)になるという危険性があるからです。こういうケースはものすごく多いです。だから、急がないというのが最初のポイントになります」

 

――ボールマンはピック&ロールで、どのような目的意識を持つことが重要でしょうか?

「そもそもピック&ロールはパスをすることが第一の目的ではありません。最もカン違いしてはいけないのが、『自分がシュートを狙う』『自分がアタックしてレイアップに持ち込む』ということを最初の目的にすることです」

 

――自分が攻撃するために、チームメイトのスクリーンをもらっているからですね?

「そうです。自分が攻撃をするためのスクリーンだからです。これは先ほどのオフボールでのダウンスクリーンでも同じことが言えます。自分がシュートをするめのスクリーンという感覚は忘れてはダメですね。 ピック&ロールのボールマンがパスを先に考えていると、どうしてもスピードが遅くなってしまいます。その部分でプレーヤーのスピードが落ちる場合、コーチはプレーヤーがパスを考えているということが分かると思います」

 

―――ピック&ロールが上手なプレーヤーはどのようなプレーが特徴的ですか?

「フリースローライン辺りでのシュートが上手です。NBAのクリス・ポール(フェニックス・サンズ)やカイリー・アービング(ブルックリン・ネッツ)などを見るとよく分かります。シュートをしにいけば当然、リングを見ているので、パスができるプレーヤーを見付けることも難しくないのです」

 

――スクリーンを使うときだけでなく、スクリナーへのパスを急ぐプレーもよく見ます。ドリブル1つ程度ですぐパス…というような。

「プレーの順番だと思います。まず、スピードを付けて一瞬で2mぐらいの遠い位置を狙うところからスタートしたいですね。全てを一緒にやろうとしているのと、パスをする目的でドリブルをすれば、早いタイミングでポケットパスを出したくもなります(笑)。パスを出すにしてもダイブしたプレーヤーとのスペースが必要になってくるのです」

※②へ続く

 

(月刊バスケットボール)



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