【インタビュー】加藤 三彦氏(元能代工高監督)が”9冠時代”を例に語る 「相手との差を付けるオフェンス」と「選手間のコンビネーションの作り方」とは?②
【スペシャルインタビュー②】
“田臥・菊地・若月”というトリオを擁し、高校3年間で9冠という前人未到の記録を打ち立てた能代工高。その時代に監督を務めたのが加藤 三彦氏(西武文理大監督)だ。彼らが入学して何が変わったのか、相手に差を付けるためにどのようなプレーをしたのか、3人によるコンビネーションがどのようにして作られたのか…今だからこそ、全てを明かしてもらおう。そして、それを現在のバスケットボールに置き換え、チーム作りに役立つフィロソフィーとは何かを加藤氏は語った。
「24秒」だけでなく、さまざまな時間を
常に意識した練習が重要
【選手たちはウォーミングアップからショットクロックを常にイメージしながら練習】
――当時、3メンという練習は、体力トレーニングやコンディショニングの意味合いが強かったと思います。しかし、能代工高はそうではありませんでした。オフェンスを構築していく“過程”に見えたことを今でも覚えています。
「間違いない“過程”です(笑)。24秒で1往復半などという練習をよくやっていました。 想像してみてください。3メンを5秒でファストブレイク、さらに5秒でファストブレイク…残りは何秒ですか? 残りは14秒ですね。バックコートからフロントコートに入るまでに4秒を要したとして、残りは10秒程度…これは1プレー、もしくは2プレーしかできない時間です。それが選手たちの頭の中にあったのは間違いありません」
――選手たちはショットクロックを常にイメージしながら練習していたということですか?
「優先順位の1番目がだめならば次、2番目もだめ…そうなると時間がないので最後の勝負をしなければならないという状況の練習に変わってきます」
――その状況を想定したオフェンスが3メンの中に入っていたのですね?
「そうですね。それに、3メンは5人の練習の一部でもあります。ファストブレイクを5人で24秒内に2往復半という練習もしました。片道5秒計算です(笑)。それでも最後は4秒しかありませんので、そうなればレイアップではなく3Pシュートになることも出てくるはずです。このように試合に直結する練習メニューを作るのが、当時から好きでした」
――田臥・菊地・若月という3人ではなく、上級生や控えの選手たちとの組み合わせであれば、また違ったオフェンスの形になるということですか?
「6、7番手で上級生を起用した場合などには、当然違ったパターンも出てきますね。そのため、練習は同じ組み合わせではなく、試合で想定されるさまざまな組み合わせで行っていくのです。当然、選手たち同士でプレーの特徴を理解していく必要があり、同じオフェンスにはならないことが多くなってくるのです」
――今でも、そのように“考えられた練習”を実践できているチームは、そう多くはないと感じますが。
「練習はそれが普通だと(笑)。それこそ、練習時間も短かったですよ。15時30分から始まったとして、長くても18時には終わっていました。選手たちは終わってからのクールダウンやケアに人一倍、時間を使っていましたね」
※②へ続く
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(月刊バスケットボール)