月刊バスケットボール5月号

NBA

2021.03.25

トレードデッドライン(アメリカ時間3.25)直前、ニック・ナースが語るNBAプレーヤーに必要なメンタリティー

 

 オールスター・ブレイク直前から新型コロナウイルスのパンデミックの影響を強く受け、不調の波にのまれているトロント・ラプターズが、日本時間3月25日(アメリカ時間24日)に好調のデンバー・ナゲッツをホーム(タンパ)に迎えて試合を行う。この一戦を前に、両チームのヘッドコーチが会見に応じた。
この日は、試合自体とは別にアメリカ時間の翌日に迫ったトレードデッドラインが一つの大きな話題。ラプターズが9連敗中で、特に主力ガードのカイル・ラウリーとノーマン・パウエルにトレードのウワサが持ち上がっていたこともあり、ニック・ナースHCにもそうしたことでプレーヤーたちがそわそわしていないかを尋ねる質問が飛んだ。
しかしナースHCは、この日の試合にもラウリーとパウエルを起用しないことは議論にも上らなかったことを証した。ただ、99.9%は実現しないそうしたウワサにプレーヤーたちがとらわれてしまう危険性は十分にあるとし、NBAプレーヤーに臨まれる内面の強さについて以下のような言葉で説明していた。「このリーグでやるべきことに集中してそれを毎夜継続することです。それを全力で受け止め、自分の立ち位置に感謝できるようでなければいけません(You’ve gotta be able to get in the present and do your job in this league and do it on nightly basis and I think you should appreciate that on nightly basis, where you are with the best of your ability)」

 見る側の立場では、例えばチャンピオンシップを獲得したチームに比べるとマルク・ガソール(現ロサンジェルス・レイカーズ)とサージ・イバカ(現ロサンジェルス・クリッパーズ)というインサイドで存在感を発揮したビッグマンがいないのだから、価値の高いラウリーらをトレードの駒にしてその部分を補強するのではないかという見方も出てくる。渡邊雄太に関しても、あまり出場機会が得られないと少し前まではもうGリーグに送られてしまうのではないか…と心配する声が頻繁に聞かれた。
実際、トランスアクションと呼ばれるこうした人事的な動きに関してはぎりぎりの段階でどうなるかは当事者にさえわからないこともあり、これからの24時間、48時間の間に立場が変わってしまうプレーヤーもでてくるかもしれない。この日の試合にはラウリーもパウエルもスターターで出場するが、だからと言って明日以降のラプターズでの立場が100%保証されるものではないのだろう。

 そのような状況でも試合に集中して自分らしさを発揮するメンタルの強さが望まれるのがNBAの世界と思うと、本当に厳しいものだ。しかもこの日は10連敗阻止がかかったぜひとも勝ちたい試合であり、相手のナゲッツは、マイク・マローンHCが「直近11試合ではリーグで一番のオフェンスができている」と自信を見せる強敵。実際にその期間で9勝2敗の好成績を収めている。核となるニコラ・ヨキッチは前週の週間最優秀プレーヤーに選ばれたばかりだ。

 


マローンHCはラプターズについて「9連敗している相手だからこそ、緊迫感と気迫で立ち向かう集団となって対抗してくるはず(When you meet a team which lost nine in a row, you expect to get a very spirited group that plays with great urgency and desperation)」と警戒感を強めていた。
ラプターズではパスカル・シアカムとナースHCの間でのちょっとした衝突も話題となり不穏な空気も流れてしまっていたが、ナゲッツ戦の欠場は故障のマトリック・マコーのみ。厳しい状況の中での強敵との対戦だが、渡邊の起用も含めて見どころの多い一戦だ。


文/柴田 健(月バス.com)
(月刊バスケットボール)



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