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2021/04/20

渡邊雄太(ラプターズ)本契約半日前、ニック・ナースHCかく語りき

渡邊は4月に入ってからの10試合で爆発的な活躍を見せている(写真をクリックすると日本時間4月9日の対シカゴ・ブルズ戦試合後会見のでのインタビュー映像を見られます)

 

 キャリアハイの21得点を含む3試合連続2ケタ得点と3連勝。渡邊雄太がコート上で結果を出し続けた後の日本時間2021年4月19日夜(アメリカ時間同日朝)、トロント・ラプターズからうれしい一報が舞い込んだ。渡邊がラプターズとの間でNBAプレーヤーとして本契約を結んだのだ。子どもの頃からの夢だったNBA入りはもちろんすでに果たしている。しかし今回の契約により、ツーウェイ契約でどうしてもつきまとう「Gリーグ」の肩書きを気にする必要がなくなり、文字通りのNBAプレーヤー渡邊雄太が誕生した。
 この本契約発表からちょうど半日ほど前の時間帯に行われたラプターズとオクラホマシティ・サンダーの試合で、渡邊は10得点(フィールドゴール成功率50.0%、3P成功率50.0%、フリースロー成功率75.0%)に4リバウンド、4アシストという成績を残し、112-106の勝利に貢献していた。4月に入ってからの渡邊は、主力の欠場もあり出場機会が得られやすいという外的な要因もあるが、コートに立つたびに目を引くプレーを披露して評価を上昇させ続けている。
 ニック・ナースHCはシーズンを通じて、会見の場でたびたび渡邊のプレーについて良くなっている点、改善が必要な点を忌憚なく語ってきている。しばらく前の会見では、渡邊の質問に答える時間を「楽しんでいますよ」と話してくれたことがあった。それほど、ナースHCの目には渡邊の成長が前向きな要素として映っているのだろうと思える。
 サンダーとの試合が始まる2時間ほど前に行われた会見でも、ナースHCの渡邊に対する高評価を感じさせるコメントが得られたのだが、その中で2点、それまでとは異なる感覚を受ける要素があった(だからと言って筆者が本契約を予感したりと言ったことはまったくないが、とにかく「おや?」と思ったのは事実だ)。

 こちらからの質問は「ユウタの4月の数字を調べたところ平均8.6得点、4.2リバウンド、1.2アシストといった数字で、これは例えば1ヵ月ほど前、出場時間がもらえるかわからなかったような時期には想像できないものでした。このような急上昇はあなたから見てどれくらいまれなものですか」というものだ。これらのアベレージは一見ごくありふれたものでしかないのは承知している。しかし、前月を振り返ると、例えば3月19日から28日までに行われた6試合中、渡邊の出場は1試合のみ。しかもコートに立ったのは5分43秒だけだった。それが4月に入ってからは日程に組み込まれた10試合すべてに出場して4試合で2ケタ得点を記録し、キャリアハイを2度更新している(アメリカ時間4月14日の対クリーブランド・キャバリアーズ戦で14得点、同16日の対オーランド・マジック戦で21得点を記録)。
 ナースHCはこの質問に対して、どれだけまれかではなくどれだけ好ましいかという方向性で、以下のような回答をしてくれた。


「まず思うのは、とても興味深いということです。これまでこの場でこうした会話を積み重ねてきました。3週間前には『動きが良くなってきた、いい感じだ、自分らしいプレーができるようになってきた』と話していたのが、それまで望んでいたことのほとんどができるようになっています。何だかそれは、この場で一緒にコーチしているような感じです。それを彼も聞いているんですよ(笑) そして彼は私が望んだほとんどのことをできています」
“I think it’s really interesting first of all. I think that you phrase your question just as we’ve kind of had these conversations. It seems like…, three weeks ago I was saying to you “looks like he’s moving better, feeling better, more like himself. Now we need him to be more aggressive” it’s almost like you and I are coaching him together here because he’s listening. And he’s doing exactly…, almost exactly what I said.”

 

日本時間4月19日の対サンダー戦試合前会見でのナースHC(写真をクリックするとインタビュー映像を見られます)


「ユウタは私に、彼として何をする必要があるのかを尋ねてきました。私は、1対1で攻め込んで得点してくることだと話し、彼はそれができています。ボールが廻ってきて打つべきと感じる3Pショットはしっかり打って、決めることだと話したら、当初は確率が低かったですが、突如として決まり始めました。
“You know Yuta asked me what does he exactly he need to do. I’m like “Well, he’s getting to the basket one-on-one and he’s starting to score those. And he ‘s been doing it. He needs to…, needs to make those three-point shots when they kicked it out to him. You know he was taking them when they looked good, when they were the right shots. But percentage was low but all the sudden he’s making them.”

 

「あなたも私も、今や彼が狙ったら入ると予測できます。1ヵ月前は、どうか入りますようにと祈りながら見ていた感じでしたよね。興味深いし、満足感があります。ここで『こうしてほしいんだよ』ということを話してきました。私は思うことをそのまま、彼にもあなたにも話したし、彼はそれができ始めました。すると機会もめぐってきて、出場時間が多くなり、そこで良いプレーができているために数字も上がってきています。あとは他のコーチと同じ思いで、これを毎晩やってくれればと言うところですね」
“You know, you and I both probably, every time he lines one up now we’re expecting it to go in. Well, a month ago, we were hoping to God to go in, right? So it’s again, it’s interesting and satisfying because it’s kind of…, we just kind of said here is what he needs to do. We weren’t shy about telling him and telling you and he just started to do it. And then the opportunity came and the minutes have gone up. So his numbers are going to go up because he’s playing well. Now I’m just the same as any other coach. I want him to do it night in and night out, right?”

 

 回答の中で「おや?」と感じたのは、以前話してくれた「この場で渡邊について語ることを楽しんでいる」という趣旨のコメントを、この日は「この場で話したことが実際に起こっていることをとても興味深く思っている」という表現で語ってくれたことが一つ。そして、短期間で進化を遂げた渡邊について「satisfying(満足感があります)」という言葉を使ったことがもう一つ。これらが浮き彫りにするポイントは、「渡邊に関する期待や課題が本人にも記者たちにも(記者たちを通じてファンにも)開示されている中で、渡邊本人がそれに応えてみせたことに非常に満足している」ということだ。これまでの会見でもナースHCがプレーヤーたちについてネガティブなコメントをしたことはほとんどないし、渡邊についての前向きなコメントも何度も得ている。しかしこの日は、聞く側として「ずいぶん喜ばせてくれるな」という感覚を持ったのだ。
 結果としてみれば、本契約の前ぶれとしてとらえるべきものだったのかもしれない。もちろん、この時点でナースHCとラプターズのフロントがその話を進めていたのかどうかは、現時点でもまったくわからない…。試合後の会見ではラプターズの快勝を受けてナースHCに数々の質問が浴びせられ、こちらから質問する機会は残念ながら得られずに終わった。

 レギュラーシーズン中に残された試合はあと14試合。「テストがあと14回。出場機会は増えそうな状況だから、焦らず毎試合の活躍を期待しながら取材させてもらおう」。そんなことを思いながら、ここで紹介したナースHCのコメントを基にした原稿を書きかけていたところに、ラプターズ公式ツイッターアカウントの電撃的な通知が飛び込んできた。書かれている内容を目にしたとたん鼓動が高鳴り、手が震えだした。

 

サンダーのマーク・デイグノートHCにもこの日の試合前に渡邊への評価を聞いたところ、ドラフト・ワークアウト時のエピソードを振り返りながら高評価を語ってくれた(写真をクリックするとインタビューを見られます)


取材・文/柴田 健(月バス.com)
(月刊バスケットボール)


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