2021/08/12
NCAAファイナルフォートーク - バスケの熱狂から差別のない社会を作りだせ
NCAAファイナルフォートークのキュレーターを務めたニーリー・バット
次世代のリーダー生み出すきっかけを提供したい
バットがとりまとめたスピーカーたちは、上記のコメントで触れられているように、社会的な力を持つバスケットボール関係者たちであり、しかも現代アメリカ社会で提起されている問題についての議論を深めたいとの意識を共有するスピーカーばかりだ。その一人には、現役WNBAスターのエリザベス・ウィリアムズも含まれていた。ウィリアムズはアトランタ・ドリーム所属。身長190cmのフォワードだが、昨年のアメリカ女子バスケットボール・シーンで最も重大な出来事の一つを、当事者として体験した人物だ。
ウィリアムズ所属のドリームで当事共同オーナーの一人だったケリー・ローフラーが、ブラックライブズマター・ムーブメント(Black Lives Matter=「黒人の命は重要だ」と訴えるスローガンを掲げ人種差別撲滅を謳うムーブメント)を支援する立場を明確にしたWNBAを批判したのがその発端だった。
これを受け、ウィリアムズを含むドリームの所属プレーヤーたちは、自チームのオーナーグループに堂々反旗を翻す。アメリカ大統領選挙を前にしたジョージア州上院選で、ローフラーの政敵にあたる民主党のラファエル・ワーノック氏に投票するよう有権者に訴えるキャンペーンを開始したのだ。「VOTE WARNOCK」と白い文字で胸に大きくプリントされた黒いTシャツを着てメディアに登場し、デモに参加した彼女たちの行動は、やがてWNBA全体に広がっていった。
その問題意識と行動力に教育の観点から意義を感じたバットは、直接的につながりのなかったウィリアムズの協力を得るために、インディアナにゆかりのあるWNBAレジェンドのタミカ・キャッチングス(元WNBAインディアナ・フィーバー)に相談を持ち掛けた。キャッチングスは意図を汲みアトランタ・ドリームのジェネラルマネジャーに打診。最後はバットが自らトルコにいるウィリアムズと連絡を取り、快諾を得ることができた。
2020年にジェームス・ネイスミス記念バスケットボール殿堂入りを果たしたキャッチングスが協力を惜しまないこと一つをとっても、WNBA、あるいはアメリカのバスケットボール関係者の多くが、社会的不正の撲滅に積極的であることが感じられる。
カンザス大学でプレーした経歴も持つロバーツ「バスケ一家で育ったアフリカ系アメリカ人なので、NCAAファイナルフォートークに特別な思いがあります」と話していた