NBA

2019.06.16

NBAファイナル2019はトロント・ラプターズが初優勝!! 全6試合を振り返る

運命が悪戯した第5戦

 

 勝負を決めたいラプターズと何とかホームに戻りたいウォリアーズ。両チームの思いが交差した第5」戦。ついにデュラントが戦列に復帰。ラプターズにとっては、いよいよウォリアーズのベストメンバーを迎えての試合となるはずだった。運命が災いしたのは2Q序盤。この時点で12分出場、11得点を記録していたデュラントだったがドライブを試みようとした瞬間、右足アキレスけんを断裂。

 

 デュラントのケガに対してラプターズファンが歓声を上げたシーンは決してほめられたものではなかったが、それほどまでにデュラントの復帰は脅威であり、ウォリアーズにとっては望みをつなぐ希望の光だった。試合終了を待たずしてアリーナを後にしたデュラントには、後に多くの応援メッセージが送られた。

 

 試合はカリーとトンプソンが勝負どころでそれぞれ1本ずつ3Pを沈め、ウォリアーズが1点差で逃げ切った。試合後、デュラントは自身のインスタグラムにて「俺は今、深く傷付いている。でも、大丈夫だ。ブラザーたちが勝利してくれた。まるでテキーラを飲み干したような気分だ。生き返った」とチームメイトの勝利を喜んだ。

 

トンプソンがケガに倒れるも

両チーム最後まで集中力を切らさないこん身のゲームに

 

 過去に1勝3敗から逆転優勝を飾ったのは2016年のキャバリアーズ(対ウォリアーズ)のみ。2年前に自分たちが演じられる側になってしまったウォリアーズにとって、今回はその汚名を返上する絶好の機会であり、チームのために倒れていった「デュラントのためにも」という思いは全選手が持っていたことだろう。

 

 運命の第6戦はNBA史上まれに見る大激戦となる。カイル・ラウリーが好調な滑り出しでラプターズをけん引すると、ウォリアーズもトンプソンが負けじとシュートを決め返し、一進一退の攻防が続く。トンプソンは第3Qまでに30得点(ゲームハイ)を記録していたが、またも悲劇が起こった。速攻からスラムダンクを試みたトンプソンに対してダニー・グリーンがファウル。これでバランスを崩したトンプソンは左足から着地し、叫び声を上げてフロアへ倒れ込んだ。

 

 この後、フリースローを打ち切ったことは見事としか言いようのないことだったが、トンプソンのケガは左足前十字靭帯断裂。デュラントに続いてトンプソンが大ケガを負ったことについてスティーブ・カーHCはのちに「本当にひどいこと」とやり場のない表情で答えていた。

 

 主力の相次ぐ負傷でも懸命に戦ったウォリアーズだったが、ラプターズを打ち負かす力は残されておらず、逆転をかけたカリーのショットが外れ、ゲームオーバー。ラプターズが球団史上初、さらにはアメリカ国外にフランチャイズを置くチームとしては史上初のNBAチャンピオンに輝いた。

 

 ファイナルMVPにはシリーズ平均28.5得点、9.8リバウンド、4.2アシストを記録したカワイ・レナードが文句なしの選出。ファイナル終了後、レナードは「昨年はケガは嘘だと疑われ、チームのためにプレーしていないと言われて落ち込んだ。ただ、僕はバスケットボールが大好き。ファイナルMVPは特別なことだけど、チームメイト全員がそれにふさわしい」と述べた。

 

 ラプターズの優勝でNBAにまた一つ、新たな歴史の1ページが刻まれた。

 

(月刊バスケットボール)



PICK UP