その他の海外

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2022/01/04

志田 萌(ニューメキシコ州立大学)を育てるヘッドコーチ、ブルック・アトキンソン

 北海道旭川市出身の志田 萌が今シーズンから加入したニューメキシコ州立大学(以下NMSU)を、ヘッドコーチとして率いるブルック・アトキンソン氏が、インタビューに応じてくれた。自身の指導哲学とコーチングの背景、コロナ禍でのチーム運営の難しさ、NMSUが所属するWAC(ウエスタン・アスレティック・カンファレンス)の現状とチームのポテンシャル、そして志田に対する期待感など、諸々を話してもらった。

 

ディフェンス第一の指導哲学

 

 

――ご自身をどんなコーチと捉えていますか?

 

 私は日々のプレーヤーに対する要求が高いコーチだと思います。ボールがゴールに入るかどうかは必ずしも自分で決められるものではありませんが、元気にプレーし、努力し、きちんとした姿勢で臨むというのは自分しだいです。そういった個性の部分では、人としてもプレーヤーとしても常に最善を尽くしてほしいという思いでコーチしています。

 

 プレーヤー第一のコーチだとも思います。私自身バスケットボールをプレーした後にアシスタントの立場を経てヘッドコーチになったので、あらゆる角度から見てきました。プレーヤーたちは何より先にまず学生であり、いくつかの州を飛び越えてきた子もいれば、何千マイルも離れたほかの国、異なる文化圏からやってきた子もいます。そうしたことを理解して寄り添うようにしています。

 

――影響を受けた恩師と言ったらどなたになりますか?

 

 私はコーチの家系に生まれたと思います。両親はどちらも教師で、父はフットボールとベースボールのコーチもしていましたからね。だから小さかった頃から、教えたり導いたりということがごく自然な環境で育てられました。

 

 大学時代は素晴らしい教師・コーチに恵まれました。今でもその方は私にとって大切な存在です。コーチを仕事にするようになってからは3人のコーチの下で働きました。最初はここNMSUで、2003年からデイレン・スペンスHCの下でアシスタントをしました。その後サウスダコタ大学とコロラド州立大学でライアン・ウィリアムズHCのアシスタント。サウスダコタ大学では、現在ネブラスカ大学のヘッドコーチをしているエイミー・ウィリアムズさんにもお世話になりました。

 

 今名前を挙げた人々すべてが、私にとっては大きな存在でした。皆さんいずれもコーチとして成功しています。今私がここにいるのは、この方々から少しずつ学んだことの積み重ねの結果ですね。

 

チームの練習を指揮するアトキンソンHC(写真/©New Mexico State Aggies Athletics)

 

 

――戦術的にはどんな志向なのですか?

 

 私は常にディフェンスから物事を考えます。相手を50点台以下に封じようと考え、ディフェンスに対する意識を強く持ったチーム作りですね。ディフェンスからオフェンスを作っていくスタイルで、あまりハーフコートのオフェンスが重荷にならないようにというのが根底の考え方です。チームの目標は、一つのクォーターで相手を15点以下に抑えるということ。ターンオーバーからのトランジションで10得点以上獲ろうというのもあります。

 

 オフェンスに関していえば、私たちは運動能力が高いチームなのでとにかく走って稼ぎたいですね。ハーフコートではスペースをうまく使いたいのと、今シーズンはインサイドを軸としたオフェンスも可能なフロントラインのプレーヤーもいるので、いったん中を見て、アウトサイドのプレーヤーたちにチャンスを作り出したいと思っています。

 

 でも、オフェンスの威力はディフェンスから始まるというのが基本的な考え方です。常にそこからオフェンスの糸口を探っていきます。

 

――インサイド・プリゼンスになるのはビグ・ザール(セネガル出身で身長191cmのフォワード)ですか?

 

 そうです。KB(ザールのニックネーム)はオクラホマ州立大学のグラジュエイト・トランスファー(学位を取得済みだがNCAAの競技参加が認められている転入生)で、モエと同じ2年制大学でプレーしていたんですよ。発音が難しいこともあって、KBと呼ばれるのがいいみたいです(笑)

 

 今シーズンのポストプレーヤーたちは皆頑張っていますが、KBは私たちが解こうとしているパズルの面白いピースですね。彼女たち自身が得点するかどうかによらず、インサイド・アウトサイドの展開から、いろんな形で得点機を生み出してくれています。

 

――12人のガードと4人のフォワードがいると思うんですが、とても面白いロスターだと思います。ラン&ガンという見方で大丈夫ですか?

 

 そうですね。実際私たちは4人のガードをスターターに入れています。もう一人はセンター。でも今シーズンはサイズも生かして、オーソドックスなポストプレーヤーを2人投入する考えも持っています。

 

 基本的には4アウト1インのエントリーで、1番から4番までは入れ替えが可能です。5番はペイントのブロック近辺からショートコーナーあたりが仕事場になります。この形からスペースをうまく作って、運動能力とスピードを生かして攻めたいと思っています。

 

 

モエは「Floor General」

 

――その中で志田選手に期待するのはどんなことになりますか?

 

 モエのいいところはコーチの意図をきちんと理解して、こちらから望んだことをやろうとしてくれるところです。手堅いプレーができるポイントガードで、私が走ってほしいと思うそのままのイメージで走ってくれます。チームメイトに声をかけてフロアの中でコーチ役もやってくれます。
 良く鍛えられていますよ。賢くタフで、「あなたは一番小柄だけど、その分一番タフになればいいんだから」と言っていますけど、そのとおりになってくれています。

 

――どうやって志田選手を見つけたんですか?

 

 彼女はサウスジョージア・テクニカルカレッジ(以下SGTC)で、ジェームズ・フレイHCの下でプレーしていました。うちにはSGTCから3人のプレーヤーが来ているんですけど、私のアシスタントの一人で、今はアーカンソー大学フォートスミス校のヘッドコーチをしているライアン・マクアダムスが、旧知の中だったフレイHCと良い関係を作ってくれて、この5年間私もお世話になってきました。

 

 SGTCの1年生だったモエを見て、昨年の11月にNLI(National Letter of Intent=入学誓約書にあたる書面)にサインすることになりました。

 

 私たちはあの時点で、ポイントガードを2人加えたい意向を持っていました。それまでにもポイントガードはいたのですが、典型的なプレーメイカーではなかったので、よりオーソドックスなポイントガードが欲しかったんです。そうした存在がいなかったことで、手痛いターンオーバーを犯して落とした試合もあったんですよね。

 

 モエとメル(UNLVから転入してきたポイントガードのメル・イズベル)はどちらも良くやっていて、フロア・ジェネラルとしてしっかりチームを仕切って、やりたいプレーを展開してくれています。オフェンスの80%くらいは彼女たちがボールをコントロールしていますが、アシストとターンオーバーの数を見ても良くやっていると思います。


――ここまで(5試合消化時点)の志田選手のパフォーマンスをどうとらえていますか。

 

 ジュニアカレッジからここにやってきたモエは大きな一歩を踏み出したばかりで、まだ場慣れしていく段階です。徐々に居心地が良くなってきているでしょう。チームメイトもスタッフも、皆彼女を慕っていますし、親切でかわいらしい女性として受け入れられています。このままウチのシステムの中で、もっと居心地良くプレーできるようになるでしょう。


 プレーではボールスクリーン・アクションでの動きがいいですね。これももっと良くなるでしょう。違うチームから加わったので時間はかかるのは承知しています。うまく対応できると思いますよ。


 ほかのポイントガードと同じ程度プレーできるようになってくれることを期待しています。視野が広くてチームメイトのチャンスを見つけるのがうまいし、プルアップ・ジャンパーも良いです。トランジションでは、うちの中でも速い方。やってほしいことをきちんとやってくれるので、ほかのチームメイトの手本です。やり取りのしやすい子なので、コーチに好かれるタイプでもあると思います。


――英語でのコミュニケーションには支障はないのですか?

 

 頑張っていると思います。ウチには4人、国外から来たプレーヤーがいますが、アメリカ人の私からすると皆すごくて、私たちにはできないなと思うくらいです。国外からの学生たちは母国語とは異なる言葉を使って大学に通い、バスケットボールをプレーし、指導もすべてその環境なのですからね。


 言葉を訳して私たちとやり取りできるというのはすごいことです。時々わからないことがあればチームメイトの力を借りているみたいです。皆モエのことを気にかけていて、「これはこういう意味だよ」とか「こうしてほしいんだよ」と話しているのを見かけたことがあります。でもそうしたこともあまりないくらいできているし、わからなければ私にも聞いてきますしね。すごく頑張っていると思います。

 

 

「日本にも行ってみたい」


――最初の5試合は2勝3敗。パンデミックの前はポストシーズンにも出場するようなチームでしたね。今シーズンの見通しはどうでしょう。ポストシーズンに行ける可能性はどんなものだと見ていますか?

 

 今シーズン、WACは大きく体制が変わって4チームがあらたに加わっています。スティーブンFオースティン大学、アブリン・クリスチャン大学、サム・ヒューストン大学、ラマー大学の4チームですね(いずれもサウスランド・カンファレンスからの編入)。スティーブンFオースティン大は昨シーズン無敗でリーグチャンピオンになり、NCAAトーナメントに出場したチームです。

 

 前からWACにいたチームの中で新しいチームの一つであるカリフォルニア・バプティスト大学は、昨シーズンこのカンファレンスで優勝してWNITの準決勝まで勝ち上がりました。そんな感じで、3年前と比べるとWACは厳しいカンファレンスになっています。


 ただ、私たちも良くなっていますからね。昨シーズンは本当に厳しいシーズンで、ホームで試合ができずアリゾナ州に移って長い期間戦わなければなりませんでした。今年は試合日程も確立できていてありがたいです。人生、次に何が起こるかはわからないものだとは言え、昨シーズンは慣れないことばかりの連続でした。


 今年はホームに戻ることができ、チームに対する自信も持っています。リーグの上位で競い合える力はあると思いますよ。新チームが加入して今回も新しいことがたくさんありますが、今年のウチはコーチするのが楽しく毎日成長を感じられるチームです。


 カンファレンスシーズンに入るまでは相当きつい日程です。ルイジアナ州立大学と対戦し、UTEP(テキサス・エル・パソ大学)と2試合、ニューメキシコ大学とも2試合。どちらも強いチームです。3月に最高のバスケットボールをプレーできるように、これらの試合を通じてカンファレンスでの戦いに向けた準備をしていこうと思っています。


 私が期待しているものや、これをやってみようと彼女たちに掲げた目標を、彼女たちは達成し、越えていけると思います。自信がありますよ!


――志田選手が所属している間に日本に来るようなアイディアはありますか?


 それができたら素晴らしいですね! 費用なども掛かりますが、仲良くしているカリフォルニア大学アーバイン校のコーチから、彼女たちのチームが2年前にチームを引き連れて日本に行ったと聞きました。それはパンデミックの前のことですが、私もぜひNMSUで相談してみたいと思います。とても楽しかったそうで、私たちも日本を体験できたら素晴らしいですね!


――東京2020オリンピックで銀メダルを獲得した日本代表とプレーする機会もあるかもしれませんね。


 本当ですね! それができたらすごいことです。オリンピックでの戦いぶりはすごかったと思います。見ていて楽しいチームでしたからね!

 

志田 萌(ニューメキシコ州立大学) - 旭川出身NCAA D1ボーラーのマンバメンタリティー

 

 

取材・文/柴田 健(月バス.com)

(月刊バスケットボール)

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