バスケ男子日本代表、対イラン強化試合で見えてきた世界レベルの自分たち


イランとの第3戦、張本は3Pショット5本中4本を沈め15得点を奪った(写真/©JBA)

 

ベンチも一体となり悪い流れを食い止める

 

 悪い流れに飲まれた第3Qは反省材料で、フリオ・ラマスHCは「あの時間帯だけはイランにやりたいことをさせてしまいました」と話している。42-22と日本が20点リードして始まったこのクォーターは、残り4分11秒に張本天傑(名古屋ダイヤモンドドルフィンズ)のパスを受けたロシター ライアン(宇都宮ブレックス)がフリースローを得、2本決めるまで無得点。その間イランに10-0のランを許した。
日本はベンチが動き、ベンドラメ礼生(サンロッカーズ渋谷)に替えて富樫を、ロシターに替えエドワーズを投入。イランは残り2分45秒にナビド・レザイファルの3Pショットが決まった時点で44-39と5点差まで詰め寄るが、直後の残り2分36秒に張本がお返しの3Pショットで悪い空気を吹き飛ばし、以降は流れを引き戻していくことができた。

 「一試合を通して理想的な展開が常にできるとは思いません。3Pショットが確率良く決まるときも、ミスが増えてしまうときもあるものです。そうした時間帯には我々が反応しなければ」と話したラマスHC。この日は張本、富樫、エドワーズの投入が打開策となった。「できるだけ早く、その時間帯から抜け出せる策を講じたいものです。今日は何とか抜け出せました」
悪い状態から抜け出す糸口となり、また第4Qにもさらにイランを突き放す3Pショットなどタイミング良く貢献した張本は、この試合でゲームハイとなる15得点。3Pショットは5本中4本の成功率80%で、これも成功数と成功率がともにゲームハイだった。
「合宿前のミーティングで、海外組の合流時点までに日本にいるメンバーでどれだけ戦えるかが鍵だから、成長の跡を見せるようにとラマスHCから求められていました」と張本は試合後の会見で話した。「FIBAワールドカップ2019からはガラリと変わって、激しいディフェンスから速いオフェンスの展開など、自分自身としては成長したなと思います」との言葉に、チームと張本自身に対する自信が感じられた。

 

“帰化特別枠”にかなうあと一人

 

 イラン代表は、初戦においては男子U22代表との交流戦翌日ということもありコンディションが悪かったことも推察されるので、85-57で勝利したこの試合の結果にはアスタリスクをつけておくべきだろう。また、以降の2試合で日本がイランを平均66.0得点に抑え、通算でも2勝1敗と勝ち越したとはいえ、今回はいずれの試合も本来1人しか登録できない帰化枠のロシターとエドワーズが代わるがわる出場できるローカルルールだった点も、注記しておかなければならない。ただ、今夏の男子日本代表が、張本が実感しているように成長を遂げているのは間違いない。

 やや脱線するが、彼ら二人が頑張っている試合を見るたびに、二人を帰化枠として別物扱いしなければならないことへの、何とも切ない気持ちを膨らませているファンも多いのではないだろうか。「二人とも残れたら一番ハッピーなんだが…」という感情だ。ルールや経緯を承知していても、コート上の二人はすっかり日本代表の中心的プレーヤーとなっている。

 どちらも人柄も良く、日本のために獅子奮迅の活躍。どちらも欠かせないのに、一人は去らねばならない。それだけに、どちらが最終ロスター入りするとしても、そのプレーヤーと、落選したプレーヤーに代わってロスター入りする日本国籍のプレーヤーには、責任と誇りが求められると思う。それが最後の12人に、想定以上の力をもたらす感情を生み出すかもしれない…。

 話を男子日本代表の成長ぶりに戻すと、アジアカップ2021予選で中国相手に互角の勝負をできたのがその第一の兆候だ。そしてイランとの3試合では、帰化枠の特例一人に代わる日本国籍の人材一人さえメドがつけば、国内組だけでも世界ランク20位前後、あるいはそれ以上の強豪とやり合えるだろうことが感じられた。

 

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