月刊バスケットボール5月号

NBA

2021.02.05

カーメロ・アンソニーが八村 塁越しの一撃でドミニク・ウィルキンス越え - でも「Congratulations for what?(おめでとうって、何が?)」

 

 アメリカ現地2月2日のワシントン・ウィザーズ対ポートランド・トレイルブレイザーズ戦は、八村 塁がシーズンハイの24得点を奪ったニュースが話題になったが、八村の名を意外な形でNBAの歴史に刻む出来事も起きていた。
132-121でブレイザーズが勝利したこの試合の第3Q終盤に、カーメロ・アンソニーが八村越しの3Pショットを成功させた。右ウイングで八村とスクエアアップしたアンソニーは、レッグスルー・ドリブルでリズムを作って八村の正面からゴールを狙った。この一撃がみごとスウィッシュとなり、アンソニーはドミニク・ウィルキンス(元アトランタ・ホークス他)の通算得点記録(26,648)を抜き、この項目の歴代13位に躍り出たのだ。この試合後の記録は26,675得点となっている。
2003年のNBAドラフトで、現在ロサンゼルス・レイカーズに所属しているレブロン・ジェームズ(当時の指名はクリーブランド・キャバリアーズ)、ダーコ・ミリチッチ(デトロイト・ビストンズ/当時)に続く全体3位でデンバー・ナゲッツから指名されたアンソニーは現在36歳。すでにリーグの最古参の一人となったベテランに、試合後の会見では、キャリアの進展とともに機会が訪れる記録更新について意識しているかという質問が飛んだ。
アンソニーは、「実際、誰かを抜いたことに気づいたのは、テーブルオフィシャルの方から教えてもらったからでした」と笑顔で話した。「試合に戻ろうとしたときに、おめでとうみたいな言葉をかけてくれたんです。私はまずありがとう! と答えて通り過ぎたんですが、もう一度戻って『おめでとうって、何が?』と聞き直したんですよ」
偉大なレジェンドの一人であるウィルキンスを抜いたことはうれしかったにちがいない。それは答えを返すアンソニーの様子からうかがえた。だからといってはしゃいだりしないことで、逆にウィルキンスへの敬意も伝わってきた。ベテランらしい余裕あふれるアンソニー自身の英語コメントはの以下のような流れだった。
"I actually found out that I passed somebody through one of the gentlemen at the scorers' table. I was checking into the game, and he said something like, ‘congratulations.’ I said ‘Thank you,’ first. And then I went back and said, ‘Congratulations for what?’”
この日は21得点に4リバウンドで勝利に貢献し、まだまだ最高峰の中でもトップクラスの実力を見せつけた。2006年のFIBAワールドカップで来日した22歳のアンソニーの姿もふと思い出す。あれから約15年が過ぎ、記念すべきショットが日本人の八村越しに決められた事実は、アンソニーらの世代の活躍が日本のバスケットボール界の発展にも大きく寄与していたことの証しなのかもしれない。


文/柴田 健(月バス.com)
(月刊バスケットボール)



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