月刊バスケットボール6月号

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2021.03.18

ヒル真理(足羽高校卒、ボーリング・グリーン州大4年生) - アメリカで手にしたもの(3)

2018年以降のボーリング・グリーン州大(BGSU)は、プログラムの過渡期にある。その真っただ中の2019年に転入してきたヒルは、さまざまな変化を体験しながら今日を迎えている。

 

 

ボーリング・グリーン州大の変革期に輝いたヒルの活躍

 

 2018年にヘッドコーチとしてロビン・フラリック氏を招き入れる前、BGSUは長らく低迷期にあり、フラリックHC就任初年度の2018-19シーズンも通算成績が9勝21敗。ミッドアメリカン・カンファレンス(MAC)では2勝16敗で最下位に終わっている。
しかしそれ以前にさかのぼると、2013年までのBGSUはMACにおいて逆に圧倒的とも言える強さを誇っており、NCAAトーナメントにも2010年、2011年に連続出場を果たしていた。転機は2012年で、それまでチームを指揮していたカート・ミラー氏(現WNBAコネチカット・サンHC)が突然インディアナ大女子チームのヘッドコーチに移籍し、それまでアシスタントだったジェニファー・ルース氏が後任を引き継ぐという出来事が起きている。その後2012年までの勢いが徐々に失われ、2015年からは極端な低迷期に突入してしまった。
ディビジョンIIのアッシュランド大で勝率97.2%(104勝3敗)という驚くべき成績と全米制覇1回という実績を残し、WBCA(女子バスケットボールコーチ連盟)の同ディビジョンにおける最優秀コーチ賞を2年連続で受賞した有能なコーチであるフラリック氏の抜擢は、ルース氏解任後のプログラム再構築を託す人事だった。そのフラリックHCが受け入れたプレーヤーたちはBGSUの将来を担うバックボーンとなる世代ということになる。ヒルはその一人だ。
全段で紹介したSGTC公式サイトの記事中に、同短大所属時のヒルについてフラリックHCが残した次のようなコメントが記されている。「私たちはボールをきちんと運ぶ力をつけなければいけないと思っていたのですが、彼女はそれを本当にうまくやっていたんですよね」
ヒルが3年生としてプレーした2019-20シーズンのBGSUは、勝利数を前シーズンから一つ積み上げるにとどまった。しかしヒルは11人のロスター中4番目の長さとなる平均出場時間27.6分で、6.1得点、2.5リバウンド、2.7アシスト、1.2スティールというアベレージを残した。スティールはチーム1位の数字だ。
ヒル自身はこれまでのBGSUにおけるベストゲームとして、ウエスタンミシガン大を相手に72-63で破りMAC公式戦初勝利を手にした2020年1月22日の試合を挙げている。この試合でのヒルはフィールドゴール10本中6本(うち3Pは2本中1本)を成功させ16得点を記録したほか、6リバウンド、3アシスト、1スティールで勝利に貢献した。
この試合でBGSUは、第4Q残り5分41秒の時点で55-60と5点のリードを奪われていた。しかしここからヒルの活躍が光る。味方の3Pショットをアシストでおぜん立てすると、次のポゼッションではシューテイングファウルを誘ってフリースロー2本を沈め60-60と一気にウエスタンミシガン大をとらえた。次のディフェンスでは得点を許したが、続くオフェンスでまたしてもヒルがレイアップを決める。BGSUはこの2点を含む終盤の9-0のランで勝負を決めたのだ。
試合後、フラリックHCはヒルのプレーを「マリは終盤に大きなプレーを次々と決めてくれました」と絶賛した。「プレーヤーとして成長を見せてくれていて、本当に楽しませてもらっています。前半もいいプレーがありましたね。緊迫した展開の中でペイントに切れ込んで決めてくれました」
ヒル自身はこの試合について「自分としてもできることをやり切りました。ずっと延長とか接戦を負けていた悔しさから獲ったチームでの1勝だったので、めちゃくちゃうれしかったです」と回想してくれた。(パート4に続く)

 

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写真/BGSU Athletics

取材・文/柴田 健(月バス.com)
(月刊バスケットボール) 



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