月刊バスケットボール8月号

“ス―パースター漫画ヒストリーvol.17”はレジェンド版第1弾としてアレン・アイバーソンを紹介!

Illustration by kira_mine

 

 11月25日発売の最新号、『月刊バスケットボール2021年1月号』のス―パースター漫画ヒストリー”第17弾は、今後5回を目処にレジェンド版へ突入!

 

 レジェンド版の初回は2000年代に大活躍した稀代のスーパースター、アレン・アイバーソンを紹介する。特徴的なコーンロウヘアにヘアバンドとダボダボなストリートファッションをバスケット界に定着させた第一人者でもあり、プレー面でも代名詞と言える鋭いクロスオーバーを武器にリーグを席巻。公式で183cm(実際は177cm前後と言われている)というNBA界では小柄ながら得点王やシーズンMVPなど数々の個人タイトルを獲得した。

 

 そんなアレンだが、幼少期は母アンが女手一筋でアレンを育てた。アレンが友達とケンカしてやられて帰ってくると「やり返してこい!」と言うような強気な性格の母は生活費を稼ぐために仕事を掛け持ちして何とか家庭をつないでいた状態。その姿を見ていたアレンは「自分がNBA選手になって家族を助ける!」と決意する。原動力となった情熱と非凡な選手からアレンは瞬く間に才能を開花。ベゼル高ではバスケット選手として、そしてアメリカンフットボール選手としても大活躍し、両競技で州チャンピオンとMVPを獲得した。

 

 ここまでは順風満帆。しかし、ここで大事件が起きた。白人と黒人の乱闘事件に巻き込まれたアレンは、無実にもかかわらず逮捕され、懲役15年を言い渡されてしまった。何とか釈放はされたものの、これで大学からのオファーは白紙に。NBA入りを目指すアレンはキャリアの窮地に立たされる事になるが、最終的には故ジョン・トンプソン率いるジョージタウン大へ進学することができた。その裏には母がトンプソンコーチに懇願して何とか推薦を取るに至ったという経緯がある。

 

 かくしてジョージタウン大に進学したアレンは1年時に新人王と最優秀守備選手賞を獲得。2年時にはカレッジ界最高のポイントガードという評価を得るまでに成長。1996年のNBAドラフトへのエントリーを決めた。

 

 この96年クラスはコービー・ブライアント、レイ・アレン、スティーブ・ナッシュ、ジャーメイン・オニールら後のNBAで一時代を築く選手を多く輩出し、今や歴代最高のドラフトクラスに一つにも数えられる年となっている。そんな猛者ぞろいのドラフトクラスで全体1位指名を持っていたシクサーズが指名したのがアレンだった。アレンは史上最も身長が低いドラフト1位指名選手だったが、その実力はNBAでもすぐさまセンセーションを巻き起こす。シクサーズではすぐさまエースとして活躍し、新人シーズンからリーグ6位の平均23.5得点の活躍で新人王を獲得。

 

 2年目には名将ラリー・ブラウンがヘッドコーチに就任し、シクサーズは徐々にチーム力を高め、優勝を目指すこととなる。自由奔放なアレンと厳格なブラウンHCは度々衝突したが、その中でもチームとしてもアレン個人としても年を追うごとに成長し、01年には悲願のNBAファイナル進出を果たした。この年のシクサーズの主力はアレンのほかにディケンべ・ムトンボ、タイロン・ヒル、アーロン・マッキーらだったが、ファイナルの相手はコービーや全盛期のシャキール・オニール、ホーレス・グラントらを擁し、ウエスタン・カンファレンスを無敗で勝ち上がってきたレイカーズ。

 

 戦力的には大きな差があったシリーズだったが、敵地でのゲーム1ではアレンが獅子奮迅の48得点でレイカーズにプレーオフで初めての黒星を与えたのだ。その試合でアレンがタイロン・ルーの上からジャンパーを沈め、その後ルーをまたいだシーンはファイナル史に残る名場面となっている。結局この後4連敗を喫したシクサーズだが、このシリーズのゲーム1は今でも名勝負としてたびたび話題に挙がることがある。

 

 シクサーズはこのシーズンをピークに成績は下降線を辿ることになり、ブラウンHCの退団で一時代は終焉。アレンも06年に移籍が決定したナゲッツでは引き続きオールスターレベルの活躍を続けたが、その後、ピストンズ、グリズリーズと移籍を繰り返し、選手としての評価も徐々に下降。特にスターターにこだわる姿勢が周囲の評判を下げる原因となってしまった。

 

 そしてNBAでの最後のシーズンとなった09-10シーズン。アレンはシーズン途中に古巣シクサーズに帰ってきた。もちろん全盛期のようなプレーができるわけでもなければ、当時のような役割を与えられるわけでもない。それでも地元の英雄の帰還にファンは大喜び。復帰戦でファンの大歓声に包まれながらアレンはホームのセンターロゴにキスをした。最後のシーズンは平均13.8得点、4.0アシスト。決して華々しい幕切れではなかったが、居るべき場所に戻ってNBAでのキャリアを終えた。

 

 その後、トルコリーグにも在籍したが、13年に正式に現役を引退し16年には殿堂入りを果たしている。今月はそんなアレン・アイバーソンの物語をイラストレーター kira_mine さんのイラストで振り返る。最新号をお楽しみに!

 

(月刊バスケットボール)



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