月刊バスケットボール6月号

Bリーグ

2021.02.12

ケイン・ロバーツ(東京Z) - BリーグからNCAAディビジョンIに飛び込むサムライの物語(3)

新型コロナウイルス感染拡大下の2020年8月7日、アースフレンズ東京Zがケイン・ロバーツの獲得を発表した。関係者が明かしていたとおりロバーツのプロ入りはゴールではなく、世界への扉をこじ開けるステップの一つだった。ロバーツの恩師、シーセン クリス マコト氏(トウキョウサムライ)に引き続き話を聞く。

文/柴田 健(月バス.com) 協力/Kris Thiesen(Tokyo Samurai)、アースフレンズ東京Z

 

トウキョウサムライで鍛えられ、強力なバックアップを受けたロバーツは、2020年8月に東京Z入りにこぎつけた

 

2021年1月2日、世界への扉をこじ開けた

佐賀バルーナーズ相手の大活躍

 

 2019年にステフィン・カリー(ゴールデンステイト・ウォリアーズ)が来日した際、アンダーアーマーが主催した「アンダーレイテッドツアー」のサポートに参加していたトウキョウサムライのシーセン氏は、アースフレンズ東京Z(以下東京Z)のヘッドコーチを務める東頭俊典氏と知り合った。2020年の春になり、ロバーツの進路決定に光を見出せずにいた状況で、シーセン氏は東頭HCに、ロバーツをアマチュアの立場で東京Zに迎え入れることができないかと相談した。

 

 「NCAAに何度も問い合わせて、これに問題がないことを確認しました。ヨーロッパやオーストラリアの子たちはやっていることですから。大学のコーチ数人にも考えを聞きました。コロナをはじめとした問題を前にして、ケインの両親とも話し、今は地元近くで過ごすのが賢明だろうということになり、東京Zとの話を進めたのです」(シーセン氏)

 

 東京Zはチームのミッションとして、「世界に通用する人材を輩出すること」を掲げている。東頭HCはシーセン氏の意向を理解し、またロバーツの能力とポテンシャルを評価した。チームに加わったロバーツはその後、10月3日に行われた2020-21シーズンの開幕2戦目で早くも実戦に登場し、豪快なティップインダンクで自らのデビューを飾った。
シーセン氏によれば、アメリカの高校で最終学年にいる若者たちのうち大学でバスケットボールをできるのはわずか3.1%。奨学金のオファーをしないディビジョンIIIのコーチにも、毎週数百ものメールが届くそうだ。そのような“マーケット”にチャレンジするにあたり、実戦で力を示せることは何より重要だ。その様子をまとめたハイライト映像こそが、世界への扉を開くカギとなる。

 

 「私もさまざまなレベルのコーチを数多く知っており、年間で数千に上るメールを送り、話を持ちかけるのです。ケインの3年間には、私と彼の父親がビデオを用意してコーチたちに送り続けてきました。いろいろとこだわりを持って作るこのビデオを、ストーニー・ブルック大学は気に入ってくれたようです」(シーセン氏)

 

 シーセン氏は、今シーズンのロバーツが出場した試合についてはすべてをハイライトにしたそうだ。しかし中でも強烈なインパクトをもたらしたのが、2021年1月2日の対佐賀バルーナーズ戦だったという。この試合でのロバーツはポテンシャルのすべてをコート上で表現していたのだ。

 

 「彼の魅力を十分にわかってもらえる素晴らしい出来を披露したのは、佐賀バルーナーズとの一戦でした。ケインは約14分間の出場で3Pフィールドゴール5本中4本(フィールドゴール全体は6本中5本)を決め16得点を奪った上に、獲れそうもないルーズボールにもダイブしていたんです。この試合を含め10月から12月の間の試合もまとめて、それと別に佐賀との試合だけのハイライトも作ってアメリカのコーチたちに送ったところ、一気に10件程度、ディビジョンIの大学から興味を示す返答が返ってきたんです。私自身との直接のやり取りだけでなく、支援してくれている別の方を通じてとか、ソーシャルメディア経由でというのもありました」(シーセン氏)

 

 2021年1月2日はロバーツにとって、世界への扉が大きく開いた日となった。いつの間にか世界がBリーグに目を向ける時代が到来しており、周囲の尽力もあってロバーツはタレント発見のレーダーにしっかりと捉えられていたのだ。(パート4に続く

 

Bリーグの舞台でプレーすること自体がロバーツのリクルーティングの大きなカギだった(写真/©B.LEAGUE)

 

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アイキャッチ写真/©B.LEAGUE



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