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2021/01/22

2006年1月22日、コービー・ブライアントの1試合81得点(NBA歴代2位)を振り返る

本当にこの試合でのコービー・ブライアントはものすごかった。41分56秒の出場時間で81得点。その価値は、FG成功率60.9%(28/46)、3P成功率53.8%(7/13)、フリースロー成功率90%(18/20)に触れるだけでは表せない。リバウンド6本、アシスト2本、スティール3本、そしてブロック1本と並べてもまだまだ、まったく事足りない。
文/柴田 健(月バス.com)

 

日本文化出版発行『英雄伝説 コービー・ブライアント』より

 

レイカーズを鼓舞した快記録

 

 2005-06シーズンのロサンジェルス・レイカーズは、2003年までの3連覇達成後、一度チームが完全に崩壊し、少しずつ上り坂に差し掛かってきたような状態のチームだった。ブライアントがNBA歴代2位の1試合81得点を奪って勝った試合は、彼らにとってシーズンの折り返しにあたる41試合目(コービー個人にとっては39試合目)。直近の2連敗後のこの勝利で、21勝19敗とわずかに勝率5割を超える状態だったに過ぎない。オフにフィル・ジャクソンがヘッドコーチの座に戻ってきたし、レイカーズで2シーズン目を迎えたラマー・オドムというマスターピースもいた。それでも、2002年の夏にこの世を去ったレイカーズの名物実況アナウンサー、チック・ハーンを追悼するためにジーニー・バス(現オーナー)がデザインしたとされる“サンデー・ホワイト”のジャージーに身を包んだレイカーズは、この日もいまひとつ波に乗り切れない様子だった。
 そんなレイカーズに一筋の光をもたらした…というよりも眩しいばかりの光の束を直撃させたような驚異のパフォーマンス。それがこの試合におけるブライアントの81得点だったように思う。
 最初の得点はベースラインを左から破って決めたリバース・レイアップ。これを皮切りにハイポストからのターンアラウンド・ジャンパー、トップからのロングツーと快調に飛ばし、第1Qだけで14得点を挙げた。左サイドのコーナースリーから始まった第2Qは、4つのクォーター中で一番おとなしい12得点。しかも“痛恨のミス”もあった。前半終了間際の第2Q残り56.7秒、ブライアントは2本与えられたフリースローの2本目をミスしたのだ。実はここまで62本連続で成功させていた。1月11日の対ポートランド・トレイルブレイザーズ戦の第2Q残り1分4秒に2本中最初の1本を外してからこの時まで、足掛け11日、7試合にまたがるこのストリークはレイカーズのチーム記録だ。当時の彼のバスケットボールに対するフォーカスぶりがこんな点からも伝わってくる。
 にもかかわらずレイカーズは前半終了時点で49-63と14点を追う展開に直面していた。ブライアントはその時点で26得点。これは普通に50得点ペースの絶好調状態だったが、レイカーズは後半に入ってもピリッとしない。第3Q残り9分23秒には53-71と得点差が18点差にまで広がり、オドム曰く「(ブライアントは)イラつきを見せていた」状態だったそうだ。言葉をかけても何も返っては来ない。「これはマズいってことです」

 

後半だけで50得点越え

 

 ここからマズいことになったのはラプターズだ。第3Q開始後ブライアントは点差が18に開くまでの約2分半にレイアップ1本とミドルジャンパー1本を決めていたのだが、ここからこのクォーターが終わるまで、鬼神が乗り移ったかのような驚異のオフェンス能力を見せつけた。フィールドゴール11本中9本成功(3Pは4本すべて成功)の23得点という猛烈なアタックで試合の流れを一気に引き戻し、レイカーズに91-85のリードをもたらしたのだ。
 ジャクソンHCが「別次元だ。特筆すべきプレーは何度となく見てきたがこんなにすごいのはなかったよ」と表現した歴史的パフォーマンスの締めくくりとなった第4Qは、フリースロー12本を含む28得点であった。つまり、18点差まで引き離された後の約21分半でブライアントは51得点を奪っていたのだ(後半の合計は55得点)。
 かくしてリーグ歴代2位、ガードとしては歴代最高の1試合81得点の記録が生み出された。別のコラムで触れたが、輝かしい記録の達成と逆転勝利を受けて行われた試合後の会見映像を見ると、ブライアントの表情や口調には喜びと驚きが混ざったような幸福感や達成感が表れていた。
 見る方も同様の反応を示している。当時レイカーズのオーナーだったジェリー・バス博士(2013年に80歳で逝去)は、「座ってみていたら、目の前で起こり始めている奇跡を受け入れられないでいるような感覚になったよ」と快挙を目撃した感想を述べた。「でも考えてみると現実なんだ」
 レイカーズのレジェンドで、キャリア通算得点でリーグ歴代最高記録(38,387得点)を持つカリーム・アブドゥル=ジャバーは、ウィルト・チェンバレンが達成した1試合100得点よりも、ブライアントの81得点のほうが印象的だと語った。「様々なショットやドライブ、ドリブルからのアタック、スリー…。プレーの幅がすごいですよね」
 ブライアント本人も、もちろん数えきれないほどこの記録についてのコメントを残しているが、ここでは子どもたちに向けられたこんな言葉を記しておきたい。「若者たちへのメッセージとしては、しっかり努力をすれば、他の人たちの想像を、さらには自分自身の想像さえも超えていくことができるということですね」
 この日のブライアント以来、1試合80得点はおろか、70得点に到達したプレーヤーさえ一人だけ。2017年3月24日、ボストン・セルティックス対フェニックス・サンズ戦で歴代10位タイとなる70得点を記録したサンズのデビン・ブッカーただ一人だ。ブッカーは試合後、ブライアントのメッセージや存在が現役NBAスターである自身の胸に刻まれていること次のような言葉で語っていた。
「以前コービーがはインタビューで、自身が周囲と違うのは30得点すれば十分だなどと思い込まず、自分では絶対に上限を定めない点だと言っていたのを聞いたんです。それが心に残っていて…。彼は100得点できるなら100得点すると言うんです。できるのならどこまでも。だから僕は上限を決めたくないんです」

 

☆NBAの1試合あたりの得点記録10傑
1位 100得点 ウィルト・チェンバレン(フィラデルフィア・ウォリアーズ、1962-03-02) 
2位 81 コービー・ブライアント(ロサンジェルス・レイカーズ、2006-01-22)
3位78 ウィルト・チェンバレン(フィラデルフィア・ウォリアーズ、1961-12-08)
4位 73 デイビッド・トンプソン(デンバー・ナゲッツ、1978-04-09)/ウィルト・チェンバレン(サンフランシスコ・ウォリアーズ、1962-11-16)、ウィルト・チェンバレン(フィラデルフィア・ウォリアーズ、1962-01-13)
7位 72 ウィルト・チェンバレン(サンフランシスコ・ウォリアーズ、1962-11-03)
8位 71 デイビッド・ロビンソン(サンアントニオ・スパーズ、1994-04-24)、 エルジン・ベイラー(ロサンジェルス・レイカーズ、1960-11-15)
10位 70 デビン・ブッカー(フェニックス・サンズ、2017-03-24)、ウィルト・チェンバレン(サンフランシスコ・ウォリアーズ、1963-03-10)
※デビン・ブッカー以外はすべて殿堂入りを果たしている

 

 

(月刊バスケットボール)


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