月刊バスケットボール6月号

中学(U15)

2021.01.05

【Jr.ウインターカップ】ギュンギュンのドリブルでディフェンスを切り裂くEternityの切り込み隊長・北條勇吹

 ストリートボールなどで力強い、鋭いドリブルワークを披露する選手を「キレッキレ」「ギュンギュン」などの擬音で表現することがある。

 

 栃木県代表のEternityにはその言葉がぴったりの選手がいる。彼の名は#1北條勇吹。178cmのプレーヤーだ。クラブとして、個の力を伸ばす取り組みを重点的に行っているEternityには、北條をはじめドリブルワークに優れた選手が多く、相手ディフェンスを縦に割ったところから外にさばいて試合を組み立てていくのが特徴的だ。

 

 その中でも、北條は諏訪武コーチから『切り込み隊長』の名を授かる。

 

 

 アリーナに響くほどに強くボールをつきながらフロアを突き進む姿はその名にふさわしい。まだフィニッシュスキルには改善の余地があるが、迫力満点のドライブは見る者を惹きつける力があり、「ウチには北條という強いカッティングができる選手がいるので、彼の突破を切り口に戦っていくことを続けてきました」と諏訪コーチも北條への信頼を口にする。

 

 本日の2回戦でB.JOKER(青森)と対戦したEternityは前半、なかなかリズムをつかめない我慢の時間が続いたが、この時間帯に北條の個の力が相手ディフェンスを上回った。初めて対戦する相手で、かつ今シーズンはデータがほとんどないため試合の入りから自分たちのリズムをつかむのは難しいことだが、彼はこの前半で10得点を集中(トータル14得点)。チームとして試合のテンポにうまくアジャストした後半には、もう一人の柱である#3齋藤翔太が北條らハンドラーとの合わせからゴール下のイージーバスケットを数多く演出。なかなか当たりのこなかったアウトサイドも少しずつ決まりはじめ、徐々に点差を拡大。最終スコア66-46で勝利した。

 

 北條自身、後半はスタッツ的にはおとなしかったが、前半の彼の頑張りがチームのリズムを生み出したことは確かで「北條が前半切っていったときは単体で終わってしまったのが、後半になると一人で終わらないで全員でつなぐことができた」と諏訪コーチ。少しずつ切り口を広げていったことが後半に生きた。だが、当の本人は「前の試合でもあまり自分の思うようなプレーが出せていないのが反省点で、今日もなかなか自分のペースに持っていけなかったので、明日以降の反省として生かしていきたいです。自分自身が消極的になっているところがあって、ディフェンスの圧があっても切っていく力はあると思っているのですが、なかなか難しいです」と自信があるがゆえに、まだまだここまでの出来に納得していない様子。

 

 

 現在はスピードとパス能力の高い河村勇輝(東海大1年)を参考にしているそうで、今後の課題はフィニッシュスキルの向上と外角のシュート精度を高めることだそうだ。

 

 とはいってもまだまだ15歳だ。諏訪コーチも「次のカテゴリーにいけば今度は留学生がいるので、彼にはまた新たな課題が生まれるはずです。でも、今はまだそこは気にせずにブロックされるまで行き続けろと言っています」とアンダーカテゴリーでしか養えない部分を大切にしながら北條を育てている。

 

 良き指導者に巡り合い、なかなか得ることのできない貴重な経験を積む北條。まずはこの大会で現時点での自分の100%を発揮したいところ。明日の活躍も非常に楽しみである。

 

写真/JBA

取材・文/堀内涼(月刊バスケットボール)



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