月刊バスケットボール5月号

中学(U15)

2021.01.04

【Jr.ウインターカップ】土家拓大(北陸高)らを育てた坪井コーチ率いる倉敷市立南中学校が見事な再逆転劇を演じる

「これがバスケットボールの醍醐味だよね」

 

 この日5試合目に組まれたセンターサークル(兵庫)×倉敷市立南中学校(岡山)の一戦は、他コートの試合が終わっても決着がつかない大接戦に。その行方を見守っていた他チームの関係者がつぶやいた言葉が、この試合を象徴していると言えるだろう。

 

 第3Qが終わったときは、55‐40でリードしていた倉敷市立南中学校がそのまま逃げ切るかに思えた。しかも第4Qで最初に得点したのも倉敷市立南中学校。倉敷市立南中学校にとっては申し分ない入りだった。

 

 

#2村上の活躍などでリードを保っていた倉敷市立南中学校

 

 その流れが一気に逆のセンターサークル側に変わったのは、残り5分2秒でセンターサークル#5近藤が3Pを決めてから。これで51‐58と9点差に縮めたセンターサークルは、その後の約2分間、失点を0に押さえる一方、攻めては#4松岡、#18廣瀬、#5近藤がファウルで得たフリースローをきっちり決めるなどし60‐58と逆転。フリースローの大切さを表す追い上げ劇となった。

 

 その後、倉敷市立南中学校のエース#2村上がこの日22点目を決め60‐60の同点になるも、#6山内の2本のシュート、相手のミスからシュートを決めた#4松岡の活躍などで、54秒を残して67‐62とリードしたのはセンターサークル。

 

 対する倉敷市立南中学校は#23金谷の2Pで追いすがるが、残り45秒で3点のビハインド、しかも相手ボールからのスタート。倉敷市立南中学校にとって残された可能性はわずかだったが、その細い一本橋を渡るようにターンオーバーで得たチャンスに「『これまで外してきたけれど、この勝負所では決めてやる』と思って打ちました」と強い信念を持って3Pシュートを沈めてみせたのは#23金谷。「特にシュート力が高いわけではないのですが、これまで真面目に頑張ってきた選手が決めてくれました」と坪井ヘッドコーチが評する#23金山の起死回生の3Pで67‐67と追い付いた倉敷市立南中学校は、残り17秒で今度は#7長尾が2本のフリースローをゲット。倉敷市立南中学校が再逆転勝利するシナリオも見えてきた。

 

終了間際に同点となる3Pを沈めた#23金谷

 

 しかし、勝利の女神はなかなか微笑まない。このフリースローが2本とも外れてしまう。それでもオフェンスリバウンドを取ったのが、フリースローを外した#7長尾本人というのも運命なのだろう。その後、リング下から#23金谷が放ったシュートは外れてしまうが、それをリバウンドシュートでねじ込んだのは身長173㎝とそれほど高さはない#35宮谷。「相手の方が高くてジャンプでは負けてしまうので、いつも坪井コーチから言われているように相手を押さえてリバウンドを取ること、そしてシュートに行くことを意識していました」という渾身のプレーで、倉敷市立南中学校を劇的な逆転勝利に導いた。

 

タイムアウト時に選手を鼓舞する坪井コーチ

 

 現在、倉敷市立南中学校のヘッドコーチを務める坪井コーチは、かつて玉島北中に在籍していたときに土家拓大(北陸高校)や石原史隆(開志国際高校)を指導していたが、その先輩たちに練習をしてもらったという倉敷市立南中学校メンバー。今日の勝利は、その恩返しにもなった。

 

 

写真/JBA
取材・文/高木希武(月刊バスケットボール)



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