月刊バスケットボール5月号

【TOKYO2020】3x3女子日本代表、激闘の軌跡 presented by 日本郵政【気持ちを届ける、想いを託す】

©fiba.basketball

 

過去を背負い、今に燃え尽き、未来に向けて⽻ばたく準備を整えた。

勝利の歓喜も、忘れられない悔しい瞬間も味わった。

東京2020オリンピックという⾶躍の舞台に、全⾝全霊をぶっつけた3×3⽇本代表男⼥8⼈のボーラーたち。

⼀⼈⼀⼈が⼼と体に刻んだ⼀瞬⼀瞬の記憶が、パリ2024オリンピックへの道しるべとなる。

 

 

 熱い、熱い、本当に熱い戦いだった。

 

 篠崎 澪(富士通 レッドウェーブ)、西岡里紗(三菱電機 コアラーズ)、馬瓜ステファニー、山本麻衣(ともにトヨタ自動車 アンテロープス)。彼女たちの戦いは、東京2020オリンピック本戦への出場権をかけたオーストリア・グラーツでのFIBAオリンピック予選(5月26日-31日)から始まっていた。

 

 東京2020オリンピックにおける3x3は、日本代表に与えられる開催国枠が男女で一枠だけとされていた。その一つの枠は、FIBA世界ランキングにおいて上位だった男子代表に与えられることとなり、その結果として女子代表は、上記のFIBAオリンピック予選から出場して自力で今大会への出場権を獲得しなければならない状況だったのだ。

 

 本戦への出場権が得られるのは上位3位まで。グループラウンドを全勝のトップで通過した日本は、出場権がかかった準決勝でフランス代表と対戦し、14-15の1点差でこの試合での出場権獲得は逃す。しかし、スペイン代表との3位決定戦では残り1分30秒を切って13-17と劣勢に立たされながら、以降を7-1のランで締めくくる大逆転劇。自力で東京2020オリンピックへの出場権を掴み取ってみせた。

 

 晴れて掴んだ大舞台では、グループラウンドを5勝2敗の4位で勝ち抜き、決勝トーナメントに進出。5つの白星には、オリンピック予選で苦杯を喫した世界ランキング1位のフランス代表、そして最終的に金メダルを獲得したWNBAの“スター軍団”アメリカ代表を破る殊勲の勝利が含まれていた。アメリカ代表を破ったのは日本代表だけだった。

 

 アメリカ代表のプレーメイカー、ケルシー・プラムは、今大会唯一の黒星を喫した日本代表との試合後のズーム会見で、篠崎や山本について「とても素早くよく鍛えられていますね。今日はやられました。」と話している。プラムはNCAAディビジョンI(5人制)の総得点歴代最多記録保持者。トップ中のトップといえる実力者からの称賛は、日本代表のパフォーマンスが疑いなくワールドクラスであることの証しだ。

 

 士気を高めて臨んだ準々決勝の相手は、因縁のフランス代表。残り2分を切って10-15と厳しい状況から、山本のドライビング・レイアップ、馬瓜のフリースロー2本、さらにミスマッチを突くチームオフェンスから再び馬瓜がゴール下で得点し、47秒を残して14-15と追い上げる。しかしこの後の反撃は不運も伴い実らず、14-16で日本代表の敗退が決まってしまった。

 

 目標とした金メダル獲得への道が閉ざされた後、馬瓜はコートにしゃがみ込み、しばらく顔をあげることができなかった。西岡、篠崎、山本。ねぎらいの声をかける3人のうるんだ瞳が、一瞬一瞬に込めた彼女たちの思いの大きさを物語る。

 

 チームを率いた長谷川 誠アソシエイトヘッドコーチは、4人の戦いを「最後まで自分たちのバスケットボールである、走って跳んで、当たって守って・攻めて、転んでもすぐ起きて、決めてもすぐに守って、闘志と勝ちへの貪欲さ…最後まで諦めずに戦った経験」と言い表した。「彼女たちにとって、今後のための素晴らしい財産となったと思います」。

 

 それは4人にとって素晴らしい財産になったはず…と長谷川アソシエイトヘッドコーチは続けた。ただし、その財産は4人だけのものではないだろう。彼女たちを支えたスタッフ、また最終選考まで残ったメンバーたちも含め、誰もが誇らしく感じたはずだ。チームにかかわったすべての人々が、3x3女子日本代表に金メダルを語る資格が十分あることを示してくれた。それを目にしたファンやメディアの人々も、その認識を共有したと思う。

 

 頂点に立ったアメリカ代表を倒しながら、準々決勝でフランス代表に屈して5位に終わった今大会の最終結果は、そのまま3年後のパリ大会における目標を提示している。東京で敗れたフランス代表を、パリで倒して金メダル。そのためのロードマップを、さっそく描いていこうじゃないか。

 

 

©fiba.basketball

#3 馬瓜ステファニー

「日本の 3×3 をここまで大きくしてくれた方々の想いや、支えてくれたスタッフの皆さん、会場には来られなくても一緒に高めあい続けた他のメンバーの気持ち、私たちにエールを届け続けてくれた画面の前の皆さんに感謝の気持ちを伝えたいです」

 

 

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#11 篠崎 澪

「ただただ悔しいです。ですが、オリンピックを通して私たち自身、とても成長できた部分は多かったのではないかなと感じています。…そんな甘い世界ではないと思い知らされました。この悔しさ、経験をしっかり次につなげたいと思います」

 

 

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#15 西岡里紗

「たくさんの方々に支えてきていただいたことで立てたあの大舞台は、今まで経験したことのないぐらい、いろいろな感情が強く自分に現れました。不安、プレッシャー、高揚感。それをすべてチームメイトやスタッフ、関係者の方々、ファンの皆さんと乗り越えてこれたことは人生の宝物です」

 

 

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#23 山本麻衣

「オリンピックでは、やっぱりそんな簡単に上手くいくことなんてないんだな、まだまだだなと痛感することができました。21歳でこんなに素晴らしい経験ができたことをポジティブに考えて、前を向いてまた一から頑張っていきたいと思います」

 

(月刊バスケットボール)



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