月刊バスケットボール5月号

【日本郵政 Presents】3x3を支える人たち vol.2『MC MAMUSHI(バスケットボールMC)』/気持ちを届ける、想いを託す

バスケ好きがやめなくていい時代を作りたい

 

 

アフロヘアにサングラス。ダミ声の絶叫でボーラーたちのバトルを盛り上げる。3x3をはじめ、バスケの楽しい場所にいけば、楽しくしているのはこの男。MC MAMUSHIの言葉には、バスケとボーラー、そして3×3の応援を続けている日本郵政への愛とリスペクトがある。

3x3を支える人たち vol.1『八木亜樹(TOKYO DIME)×岡田 慧(F1 STUDIO)』から読む

 

――バスケとの出会い、3x3との出会いはどんな形でしたか?

 

「考えてみるとあまり知られていないかもしれませんが、僕もバスケ少年でした。生まれが1983年の世代で、ナイキのエアフォースワンと1年違い。皆さんのおかげとラッキーでここまでやってきました(笑) 最近は後続を作らないといけないなと思ったりしています。

 

 バスケを始めたのは10歳のときで、ミニバスではなくてもっぱら学校の校庭とストリートコート。ちょうどマイケル・ジョーダンが一度引退して、ヒューストン・ロケッツが“ダブルダブル(1993-94、94-95シーズンの連覇)”を達成した頃でNBAも流行っていたし、バルセロナ・オリンピックのドリームチーム、ハイテクスニーカー、スラムダンク、3オン3やストバスのブーム…。時代にも恵まれて、楽しくバスケを始めました。

 

 そこから部活少年を経て、ストリートボールにはまって、ボーラーで頑張りながら2005年くらいからMC MAMUSHIとしてキャリアを始めました。3人制も5人制も、1オン1でもフリースタイルでも、バスケのおもしろそうな要素を何でも突っ込んで活動していましたね。それを6-7年間やった後、どうも3人制バスケがオリンピック正式種目になるらしいよ、みたいなのを聞いたのが2012年頃。3x3は結構早い段階からチェックしていたような気がします。

 

 まだルールも固まっていない“3x3めいた”ゲームでMCをしたのは、おそらくNBA主催のNBA 3Xジャパンという催しじゃないかと思います。マグジー・ボーグス(シャーロット・ホーネッツほかで活躍したNBAレジェンド)とゲイリー・ペイトン(マイアミ・ヒートでチャンピオンシップを獲得したNBAレジェンド)が東京と仙台にやってきたときですね。その後2013年にお台場で『FIBA 3x3 World Tour Tokyo Masters』が開催され、初めて世界で活躍する選手たちが日本にやってきました。

 

 落合知也を筆頭に三井秀機、真庭城聖(現UTSUNOMIYA BREX.EXE、B2山形ワイヴァンズ所属)など、アンダードッグというストリートボール・チームの人たちが早い段階から3x3で活躍していたので、僕も当時からずっと流れをチェックしてきました」

 

――MAMUSHIさんは自分でプレーしなくても、バスケのおもしろいところには必ずいて、欠かせない存在だと思います。そうした立場になった経緯はどんなものだったのでしょうか。

 

「きっかけは周りからの勧めで、自分でなろうと思ったわけではなかったんです。最初は結構抵抗していて、『オレはバスケットボールのスターになりたくてここにいるんだ!』みたいなときもあったんですけど、自分がプレーすることでは世の中は変わらない現実にも気づいてましたしね。その頃MCはいなかったので、そういうところで日本のバスケがちょっとでも面白くなってくれたらと思うようになりました。

 

 日本で『バスケをやっていた人たちがバスケをやめなくなってほしい』という思いで、僕は頑張れているんですよね。高校で終わっちゃう子たちが多いのがすごく残念で、ストリートボールがもっと盛り上がったら、皆やめなくていいんじゃないかとか、僕がMCになって『バスケって見るのも面白いね』みたいになってくれれば、バスケから離れなくて済むんじゃないかな…と。それにリンクするものであればフリースタイルでも、どんなに変わったバスケであっても、何でもやりたいという中で、3x3もピンと来ました」

 

――3x3とストリートボールは近い存在だと思うのですが、違いといったらどこにあるんでしょうか?

 

「僕も最初は近しいものという印象だったんですけど、結論的には大きく違うものだと思います。ストリートボールは良くも悪くも自由な遊びなので、ボーラーをはじめその場の人々が納得できれば何でも解決しちゃう。柔らかいですよね。

 

 3x3はそういうエッセンスも入れながら、基本的にはよりストイックな競技ですね。向いている選手も違うと思います。もちろん両方できて、Bリーグで活躍できる選手もいますけど。借り物競争と100メートル短距離走の違いみたいなものでしょうか(笑) そんな違いがあると思います。

 

 3x3がここまで大きくなり、オリンピック種目になって、それが終わっても、日本でも世界のいろんな大会がボコボコあるというのはいいですね。ストリートボールが安定的に大会をやっていくのも実は大変だったりするのに比べて、3x3はしっかりオーガナイズされているから、実力があれば世界に出ていく機会を作ってもらえるじゃないですか。

 

 ストリートボールでの下地があったからこその3x3の発展でもあると思いますが、両者の違いは縦軸の競争の世界か、横軸の広がりの世界かだと思います。3x3は世界と縦軸の競争ができるから面白い。そこから出てきた落合のように、国のオフィシャルの代表になれるとか、他の選手達も世界のいろいろな大会に出場する機会があるというのは、3x3の業界として良いところですね」

 

――日本郵政が3x3の支援に乗り出して3年。縁の下の力持ちとしての存在感や頼りがいはどんなふうに感じていますか?

 

「僕がMCさせてもらう大会の現場で、日本郵政のご担当者の方とお会いする機会が頻繁にあります。あれだけ日本の中で影響力のある団体がここまでバスケットボールにコミットして、その結果として継続的に大会ができているというのがすごくありがたいですね。『言うは易し』で、実際に大会を継続してやっていくのは本当に大変なことですから。それをやり続けているというのは本当にリスペクトです。

 

 オリンピックでお茶の間の人たちが3x3を見たときの印象はかなり良かったみたいです。5人制の40分のゲームをフルで見るというのは、初めて見る方にとっては結構大変だと思うんですけど、3x3のボリューム(1試合10分)だと、なんだか自然と見ていられちゃうみたいな。それをキャッチして広めるところに力を注いでくれているのも、ものすごくありがたいです。

 

 欲張ってもっとリクエストしちゃうと『日本郵政さん、今度はコートを作りましょうよ!』と期待してしまいますね。大会が継続的に行われて、今度はキッズたちが自由に使えるコートを作って…。そこまでやれちゃうような気がしちゃうんですよね。そんな気になってしまうほど、日本郵政の影響力は大きいです。

 

――東京2020オリンピックの3x3はどんな思いでごらんになりましたか

 

「落合をはじめ仲間たちの競争を傍らで見ながら、実は自分自身も大会でMCになる可能性もあるかなとも思たりしました。ただ、そうなればなったでさまざまな制約も出てくるので、何が何でもオリンピックというよりは、いずれにしても楽しく見ようという思いでした。結局、中山秀征さん、大林素子さん、塚本清彦さんに僕という“奇妙なフォーショット”で、J:COMの3x3中継の解説をやることになりました。女子日本代表がアメリカに勝った試合と、男子日本代表が中国に勝って予選突破を決めた試合を含め、あの日の試合を4試合。塚本さんとしゃべって、スタジオで中山さん、大林さんと盛り上がるという。実況なので、ばっちりスーツで決めていきましたよ(笑)」

 

――身近な落合選手をはじめ選手達の活躍や試合結果についてはどんな感想を持たれましたか?

 

「予選から日本代表の男女は全試合を見ていたんですけど、普通に楽しんじゃいましたね。ぶっちゃけもっとボッコボコにやられて最下位とかもあるか…と心の準備をしていたんですけど、どの国とも接戦ばかり。ハラハラしながら見ていて面白かったです。劣勢からでもポンポンポンと追い上げて。あんな展開が起きやすいのも3x3の良いところじゃないかと思います。

 

 落合は得点にあまり絡まなかったので、これは意図的にあまりアタックしないようにしているのかと思って見ていたんですが、あとで聞くとやはりそうだったと言っていました。富永啓生に打たせ、保岡龍斗に打たせ、アイラ・ブラウンに暴れさせて、それ以外の面倒くさいことを全部落合がやるという。『落合はキャプテンなのに全然シュート決めないじゃん』といった反応も目にしましたが、彼は彼で、あの局面で歯を食いしばってよく頑張ったなと思います」

 

――女子日本代表の活躍は次の世代にどんな影響があると期待していますか?

 

「実は今、個人的にも女子のバスケットボールコミュニテイーに興味を持っているんです。5オン5は銀メダルを獲ったし、3x3はアメリカ代表を倒し、とても強い印象を残しました。僕らが普段やっているグラスルーツのバスケットボールシーンでも女子がもっと盛り上がって、その中から3x3の日本代表が一人でも出てきたらいいですね。男子の落合のような例です。

 

 もちろんWリーグのトップはうまくてかっこよくてバッチリです。そこに並行しグラスルーツでも広がり、競争が始まるといいなと思いますね」

 

――最初にご自身の後続を作りたいとおっしゃっていましたが、女性で3x3の大会を盛り上げる立場の方はいらっしゃるんですか?

 

「僕とはまったく違う“芸風”ですが、矢野良子さんの解説が無茶苦茶おもしろかったと思うんですよね。自分が高校生だった頃に、卒業した女バスのOGがワーワー言っているみたいな(笑) あの目線が無茶苦茶おもしろかったです。BEEFMANの桂 葵も最近しゃべりたくなってきているそうなので楽しみです。男性では幅広くいろんな方が入られていますが、女性でも、しっかりしゃべって面白みを伝えられる人が今後出てくるでしょうね」

 

――そうした方々の活躍の場を広げたり人材を見つけたりというのも、今後3x3へのかかわり方の一つと捉えていますか?

 

「受け皿が少ないとあぶれる人が出てきてしまいます。大きくても小さくてもいいので、いろんな受け皿を作れたら…。3x3でも本当にハイレベルの『世界を目指す』みたいなところから、もっと柔らかい3x3のゲームまで、いろいろあっていいと思うんです。選手で未来を目指す人たちも、いろんなネットがあればもっと出てくるでしょう。ちゃん岡(岡田 慧さん)や八木ちゃん(八木亜樹さん)や僕のように周りを固める人たちも、当事者意識を持って乗っていけるような環境を作っていきたいですね」

 

――パリ2024までの3年間、やっておきたいことはどんなことですか?

 

「実力が高いのに、もう少し評価されてもいいんじゃないかと思っちゃう女性のバスケットボールシーンをどうにかしたいのと、アンダーカテゴリーの子どもたちに、もっと遊ぶ機会を僕が増やしたいです。いろんなコートでバスケやイベントを一緒にやって、『お前、どうもこんなの好きそうだから3x3頑張ってみたら?』とか、日本中を回ってぼそっと言いまわるおっさんになりたいです(笑) 『お前、こういうとこカッコいいぜ!』みたいなのを言いまくっているバスケおじさんで、『本当にプロになりたいようなら、アイツに連絡してみなよ』とか、『オーガナイザーになりたいんだったらアイツに話してごらん』とか。自分自身ではできなくてもつなげることで、皆がやめないでノリノリでバスケを続けていけるのがいいですし、そうなっていたらオリンピックもいい結果出るでしょう! 

 

 バスケはうまいかへたかの縦軸で語っちゃうと、『オレはあんまりうまくない』となってしまうし、それならレブロン・ジェームス(ロサンゼルス・レイカーズ)やケビン・デュラント(ブルックリン・ネッツ)しか存在できなくなってしまうじゃないですか。対して『バスケが好き』というのには上下がなくて横の広がり。それなら争いごとも起きないし、みんなを巻き込んでやれるかなと。『アイツ、ほんとにバスケが好きだよね』というのが、最高の誉め言葉になり、尊敬のバロメーターになるように。そんなところが、日本のバスケで僕が刺激したいところです。子ども目線で『オレは好きなんだ!』と言えるのが一番だと思うんですよね」

 

 

MC MAMUSHI

東京都出身。2000年中期よりストリートボールのMCとしてキャリアをスタート。コート上からゲームを激しく煽る独自の実況スタイルを確立し、現在ではプロリーグやメーカー主催のビッグゲーム、ストリートのローカルゲームとどんな現場でもその存在感を発揮するバスケットボール・アナウンサーとして知られる。自身も現役のプレーヤーであり、バスケットボールへの造詣が深いことからオリジナルのゲーム主催やイベントのコーディネート、コンテンツ企画や商品企画、コラムニストとしても活動。また、そのユニークなキャラクターが評判を呼び、ジャンルを超えてさまざまなイベント、コンペティション、パーティーから広くオファーを受けるMCとしても活躍中。

Instagram https://www.instagram.com/mcmamushi/

 

3x3を支える人たち vol.1『八木亜樹(TOKYO DIME)×岡田 慧(F1 STUDIO)』を読む

 

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