月刊バスケットボール8月号

Bリーグ

2019.07.17

伊藤俊亮氏が振り返るフロントスタッフとしての1年

 2017-18シーズンをもって現役生活を終え、その後は「千葉ジェッツふなばし」のフロントとして活躍した伊藤俊亮氏が7月5日に自身のSNS上で、千葉のフロントを離れることを発表。一スタッフとしてだけでなく、SNSを通じて頻繁にファンと交流したり、バスケットボール以外の活動にも積極的に参加してきた伊藤氏の“2度目の引退”。

 

6月8日にはVリーグ(バレーボール)の研修会に講師として参加

 

 実は2019-20シーズンファイナル終了後の千葉の報告会にて、伊藤氏にフロントスタッフとして過ごした1シーズンを振り返ってもらったので、ここで紹介したい。

 

 引退してもなお、絶大な人気と影響力を持つイートン(伊藤氏の愛称)がフロントスタッフとして感じたこととは?

 

ーーフロントスタッフとして過ごした1年はどんな期間でしたか?

 チームから離れているので、そこまで内部事情を見ることはできていません。ただ、伝わってくる雰囲気にはすごく良いものを感じていたし、お互いをリスペクトし合いながらチームを作っていたので「良いチームになったな」という感覚でした。

 立場が変わってしまうと見かたも大きく変わってしまうので、選手目線で見ることはできなくなってしまうんです。仮に選手目線で僕が話しかけたとしてもあまり響かないだろうし、外の人という感覚なのかなと。そのくらい選手としているのと運営側としているのでは立場が違うと感じています。とはいえ、できることはたくさんあります。チームの雰囲気を運営側に伝えながら、必要なものを少しずつ用意していきました。そういった経験は楽しかったですね。

 

現役を退いてもその人気は健在/Photo B.LEAGUE

 

ーークォーターファイナルの富山戦でショットクロックが故障するアクシデントがありました。それを直しに伊藤氏が会場入りした際、大歓声で迎えられましたね。

 お昼ご飯を食べていたときにショットクロックが消えていることが判明して、マズいと思い、コートサイドまで走りました。案の定つかない。「あそこに手が届くのは自分だけだな」と思い、登りました。今後はあのようなことがないように、準備はできています。あの歓声は「やめて~!」という感じでしたよ、あれは恥ずかしかったですね(笑)。でも、そういうところまで楽しんでいただけているのはありがたいことです。

 

ーーセミファイナルの栃木(現宇都宮)戦では、会場販売も行っていました。

 メガホンを売っていました。レギュラーシーズン中も栃木のブースターさんが、アウェイで少数精鋭とはいえ、ものすごく声を出して応援をしていたのを見ていました。あれをやられると雰囲気に飲み込まれるのではないかと危惧していたので。会場を見渡したときに4分の1くらいが黄色に染まっていて「これはヤバい」と思いました。満員の会場で全ての歓声が千葉ジェッツという環境を用意したかったし、その雰囲気で試合をさせてあげたいという思いがありました。試合前、まだメガホンをお持ちでない方も多かったので、危機感を伝えるアラートという意味でも、僕が会場を一周回ってメガホンを販売しました。意外と売れましたね(笑)。

 

ーーメガホンはご自身の発案?

 そうですね。やりたいと言ってグッズの担当と打ち合わせをして用意してもらいました。

 

ーーフロントに入って一番意識していたことは?

 観客のみなさんが満足してくれて、気持ちよく応援していただける環境を作り上げることです。せっかく来ていただいても他のところに気がいってしまうと、推しの選手に集中できないと思うので。そういう状況が一番悲しいし、それを減らしていきたいです。気持ちよく応援してもらって、「今日来て良かった」と思ってもらえるような雰囲気や会場を作り上げることを意識しています。

 

ーーアリーナ席でのビール販売やアプリを使用してのフードメニューの販売も取り入れていますね。

 そうですね。フードメニューはブースがすごく混雑してしまって、買いたいけどその機会を逃してしまった方が多いと感じていました。そこで席でアプリで注文、支払いまで済ませて出来次第、呼ばれるという仕組みを導入しました。選手を引退した今でも、みなさんに情報を発信していくことはできるので、フロントスタッフとして発信できることをかみ砕いて、アウトプットしていきたいですね。

 

千葉のホーム戦は常に超満員/Photo B.LEAGUE

 

 来シーズン以降、会場で奔走する伊藤氏が見られないのは残念ではあるが、バスケットボールを通じて得た多くのつながりをこれからも生かしてもらいたい。

 

(月刊バスケットボール)



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