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2021/02/07

<車いすバスケ>バスケ車のエキスパート、メカニックの存在

 車いすバスケットボールで使用されているのは、「バスケ車」と呼ばれる競技用車いすだ。日常用とは異なり、タイヤがハの字に取り付けられているバスケ車は回転性が高く、機敏な動きが可能となっている。全てオーダーメードで、シートの幅や高さ、角度など選手たちの体格や障がいに合わせてミリ単位で調整されている。このバスケ車のエキスパートとして、選手をサポートしているのがメカニックだ。

 

文・写真/斎藤寿子

 

パフォーマンス向上に不可欠な「体の成長」と「バスケ車の改良」

 

 メカニックの仕事は多岐にわたる。常に激しく競り合う車いすバスケでは、特に男子は練習や試合中にタイヤのパンクや部品の破損などが起きることも少なくない。そんなトラブルへの対処はもちろん、前もってバスケ車の状態をチェックし、メンテナンスを行う。さらに選手の体の成長やプレースタイルの変化に伴って適したものを提案し、改良も行う。

 

女子日本代表の専属メカニックとしてサポーする結城智之さん

 

 2020年から女子日本代表の専属メカニックとしてチームをサポートしているのが、結城智之さんだ。以前から多くの国内トップ選手の競技用車いすを担当していた職人でもある。

2019年に車いすメーカーの松永製作所に転職し、東京パラリンピックで5大会ぶりのメダル獲得を目指す女子日本代表のメカニックに抜てきされた。結城さんは「単に修理やメンテナンスだけすればいい」という受け身の姿勢にはない。

「選手の体とバスケ車はともに成長していくもの。トレーニングで体が大きくなったり、可動域が広がったりすれば、それだけ体の動きやバランスのとり方、プレー自体にも変化が出てきます。ですから、今どんなものがその選手に合っていて、プレーにも効果が出るのか、トレーナーとも相談しながら選手にアドバイスをしています」

 一方で、選手自身にもバスケ車に対してもっと知る努力をし、最低限のメンテナンスをしてほしいと語る。

「バスケ車はパフォーマンスにつながる大事な部分。何か不具合が生じていたり、自分に合っていないバスケ車では、力を発揮することは難しくなります。シュート練習やウエイトトレーニングと同じように、バスケ車に気を配ることも大事だよ、ということを伝えています」

 

世界選手権覇者のイギリスと日本メーカーがサプライヤー契約を締結

 

BWBのメカニックを担当している岡川武和さん

 

 日本の車いすバスケ界におけるバスケ車は、松永製作所とオーエックスエンジニアリングの2社がトップシェアを誇る。一方、欧米ではイギリスに拠点を置く、アメリカのサンライズメディカル社のスポーツブランドであるRGK、やはりアメリカのPER4MAXの2社が主流となっている。

 その車いすバスケの海外市場に日本のメーカーが本格参入したのが2018年。イギリス車いすバスケットボール代表チーム(BWB)が松永製作所が製造するバスケ車の性能の高さと、丁寧なアフターフォローを高く評価し、オフィシャルサプライヤー契約を締結。2022年までの4年間、松永製作所がBWBのメカニック部門を全面的にサポートすることが決定した。

 これを機にメンテナンスを受けるだけでなく、実際に他のメーカーから松永製作所のバスケ車に乗り換えた選手も少なくない。特に女子は現在、強化指定選手の14人中12人が同社のバスケ車でプレーしている。“モノづくり・ニッポン”が誇る職人の高い技術力と、日本人ならではの丁寧な対応が高く評価された証しだ。

 前任から引き継ぎ、現在は男女ともにBWBのメカニックを担当している岡川武和さんは、「(2018年の)世界選手権で優勝(男子)、準優勝(女子)のイギリス代表が弊社のバスケ車を選んでくれているという事実は、グローバル展開を目指すには大きなアピールとなります」と語る。

 7か月後に迫った東京パラリンピック。メカニックの2人はどんな思いを抱いているのだろうか。

「メカニックもチームの一員だと思っています。自分の役割は第一にチームが勝つ環境に導くこと。『メカニックがいてくれたからこそ』と思ってもらえるような仕事をしたいと思っています」(結城さん)

「選手たちには『東京パラに出て良かった』と思えるような大会にしてほしいですね。そのために自分ができる限りのサポートをしたいと思っています」(岡川さん)

 メカニックの存在も、東京パラでのメダル獲得に向け大きな力となる。

(月刊バスケットボール)

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