月刊バスケットボール5月号

Wリーグ

2022.04.17

我慢のバスケでトヨタ自動車が富士通を逆転。連覇へあと1勝

 2021-22シーズンWリーグ・ファイナル第1戦。富士通レッドウェーブとトヨタ自動車アンテロープの頂上対決は国立代々木競技場第1体育館で行われた。

 富士通とトヨタ自動車は今シーズン、このファイナルが初顔合わせ。レギュラーシーズンで予定されていた対戦が、新型コロナウイルス感染症の影響により中止となってしまったためだ。しかし、昨年12月に行われた皇后杯では準々決勝で対戦しており、富士通が62-55で勝利している。また、昨シーズンのプレーオフではセミファイナルで対戦。トヨタ自動車が2連勝でファイナル進出。そしてENEOSを破って初優勝を遂げている。

 

 

 6000人近いファンが押し掛けたファイナル第1戦。先手を奪ったのは富士通だった。富士通は2014-15、2015-16シーズンにファイナルに進出しているが、そのファイナルを経験している町田瑠唯、篠崎澪の2人が積極的なプレーでチームを見せる。「富士通でのファイナルを経験しているのは私たち(篠崎と町田)だけ」と、篠崎は1Qだけで12得点と出だしからエンジン全開でチームを牽引した。

 一方、トヨタ自動車はインサイドを激しく守る富士通ディフェンスに苦戦。「緊張もあり、焦ってしまった」と馬瓜エブリン。トヨタ自動車はシーズン中もあまりない追いかける展開に、リズムがつかめずに試合が進んでいく。富士通はインサイド陣のファウルがかさんできているのが気掛かりではあるものの、前半を終え41-31と2桁のリードを奪った。

 

 

 後半に入るとトヨタ自動車は山本麻衣が積極的なシュートを狙い、オフェンスを引っ張る。また、激しいディフェンスから富士通のミスを誘発し、点差を詰めていく。しかし、トヨタ自動車が流れをつかもうとすると、町田がドライブでバスケットカウントを奪ったり、宮澤夕貴が3Pシュートを決めたりと富士通が流れを打ち切る。それでも、3Qの終盤に平下愛佳が3Pシュート、シラ ソファナファトージャがリバウンドシュートを押し込み54-61と7点差まで詰め反撃の足掛かりを作った。

 最終クォーターは、トヨタ自動車が流れを継続。馬瓜ステファニーが町田のドライブをブロックし、そのまま速攻からインサイドでゴールすると、シラもハイポストで続き58-61と3点差に迫る。富士通はタイムアウトを取るが、トヨタ自動車は激しいディフェンスで流れを渡さず、山本の3Pシュートで61-61とついに同点。富士通も粘りを見せ、点を取り合う展開。残り4分30秒にオコエ桃仁花がインサイドで強さを見せて富士通が69-67とリードすると、今度は両チームとも点が止まった状態に陥り残り2分を切る。その膠着を破ったのはトヨタ自動車の山本。残り1分45秒でロング3Pシュートを沈めて逆転する。その後ファウルで得たフリースローを町田が2投ともミスをするなど得点ができない富士通に対し、トヨタ自動車はこの日21得点の活躍を見せたシラのシュート、山本のドライブなどで74-69と勝利をもぎ取った。

 

 

「この負けは辛い」と富士通のBTテーブスHC。「4Qが全て。内容が悪かった」と振り返る。町田も「大事なところでのイージーシュートや、フリースローを決めきれなかった」と反省しきり。それでも「明日は切り替える」と顔を上げ、テーブスHCも「すべてのゲームプランを修正しなければならないわけではない」と次戦の巻き返しを狙う。

 勝利したトヨタ自動車の馬瓜ステファニーは「(富士通に敗れた)皇后杯がフラッシュバックすることもあった。それでもずるずると負けなかったのは、自分たちの成長した部分」と笑顔を見せた。

 この試合で富士通は3Pシュートが4/21、成功率19.0%と低調に終わった。レギュラーシーズンWリーグトップの9.7本のアベレージからすると半分以下の成功数。何より、試投数も10本近く少ない。一方のトヨタ自動車もレギュラーシーズンでは87.1得点とリーグトップの得点力を誇るが、10点以上低い74得点に抑えられている。互いに相手の持ち味を防ぎ合った一戦となったが、「(リバウンドやルーズボールなど)泥臭いところが勝負」(馬瓜エブリン)と、悪い流れを我慢し続け、自分たちのバスケットを貫いたトヨタ自動車が逆転で連覇に王手をかけた。

 

(月刊バスケットボール/写真・Wリーグ)



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