月刊バスケットボール5月号

【近畿大会】酸いも甘いも味わった近江兄弟社ベスト8への旅路

 

 6月24〜26日にかけて滋賀県で開催されている近畿大会。2日目までの日程を終えて、女子は京都精華学園、大阪薫英女学院、大阪桐蔭、そして奈良文化の4校が準決勝に勝ち上がった。

 

 盤石の勝ち上がりを見せた京都・大阪勢に対し、奈良文化と近江兄弟社による準々決勝は僅か2点差という大接戦。特にホームタウンチームの近江兄弟社は、昨年の1回戦敗退から大健闘。今大会で2勝を挙げ、ベスト4まであとショット1本のところまで迫った。

 

 中でも大阪体大浪商との2回戦は圧巻の逆転劇だった。この試合、出だしで思うような展開につなげられなかった近江兄弟社は、前半を終えて34-45のビハインド。この10点前後の点差を詰められずに後半を迎えた。

 

 しかし、第3Q中盤に差し掛かった辺りからムードが一変。「リバウンド取れ始めて、相手もシュートが落ちてきました。相手のシュートセレクションは(どう来るか)ほぼ決まっていたので、徐々に選手が対応してくれたと思います。リバウンドが取れるようになればうちに流れがくるので」と、金村厨コーチが振り返るように、下級生が主軸となる大阪体大浪商に対して、オールコートのプレスやダブルチームなどを駆使してタフショットを打たせ、攻めては#8山内愛音を起点に、インサイドで#9筑田愛音や#7山下夏凜 、アウトサイドからは#6加藤乃莉がリズムよく得点し、このクォーターが終わる頃には点差を1点まで縮めることに成功したのだ。

 

要所の得点が印象的だった#8山内愛音はトータル38得点を記録

 

 第4Qに入ると、残り7分55秒に#8山内がドライブからバスケットカウント。フリースローもきっちり沈めてこの試合初めてのリード(62-60)を奪う。これで完全に流れをつかんだチームは残り50.8秒にミッドレンジシュートを決められるまでの実に7分以上を無得点に抑え込み、15-0のランを展開。最後は#8山内のドライブを#9筑田がショートジャンパーで合わせ、最終スコア77-62で勝負あり。劇的なカムバックでベスト8進出を決めた。

 

 「これまでの近江兄弟社はビハインドの展開だとダウンしてしまうチームだったのですが、私が指導するようになってからその辺りを立て直してきました。本当に崩れなくなったというか、こういうゲームでしっかり勝ち切れるようになったことが、大きく成長した部分です」と金村コーチ。

 

チームの明るい雰囲気も会場では一際目立っていた(写真中央が金村コーチ)

 

 ただし、金村コーチが近江兄弟社に赴任したのは今年度からで、指導にあたってからまだ僅か4か月余り。しかも、昨年の近畿大会では大阪府の強豪・星翔を率いて1回戦で近江兄弟社を破っていたのだ。現3年生の多くは昨年から主力として戦ってきただけに、金村コーチとはある意味で運命的な再会を果たしたことになる。

 

 試合を重ねるごとに自信を増しながら成長していくチームは、続く準々決勝で前述した奈良文化と対戦。立ち上がりで12-0のランを展開する見事なスタートダッシュを切ったが、タイムアウトを挟んで奈良文化が3-2ゾーンを敷くとパタリと得点が止まり、オフェンスリバウンドでも圧倒されてしまう。第4Q終盤には逆に2ポゼッション差を行き来するビハインドの展開に。

 

 重苦しいムードが流れ、あと一本決められたら勝敗が決してしまうような時間帯が続いたが、#6加藤の3Pや#8山内のドライブに4ポイントプレーなど何度も逆転のチャンスを作る。しかし、最後は相手のオフェンスリバウンドからセカンドチャンスポイントを許すなど、再逆転には至らず。最終スコア60-62で敗れてしまった。

 

 とはいえ、スロースターターという弱点を払拭するような立ち上がりに、最終盤に再び息を吹き返した底力には目を見張るものがあったと言えるだろう。

 

「リバウンドが取れればうちに流れがくるので」

 

 チームにとっては、金村コーチのこの言葉が良い意味でもそうでない意味でも突き刺さるような、濃厚な2試合となったはずだ。酸いも甘いも経験したこの近畿大会は、インターハイ本戦を控えるチームにとって、大いに自信を付ける大会となったに違いない。

※2回戦のボックススコアはこちら

 

 

取材・文・写真/堀内涼(月刊バスケットボール)



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