その他の海外

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2020/11/24

ウインターカップ2017決勝のヒロイン 鈴木妃乃のNCAA挑戦 - Part1

ダブルオーバータイムの大激戦となったウインターカップ2017女子決勝で8本の3Pショットを沈め、大阪桐蔭の大会初優勝に貢献したスコアリング・ガード、鈴木妃乃。彼女は今、あらたな挑戦の舞台に立っている。2018年に同校を卒業した鈴木は一旦関西学院大に入学したが、この夏渡米してノースアラバマ大(以下UNA)に転入、11月25日(火=日本時間26日水曜日)に初の公式戦に臨むのだ。
取材・文=柴田 健/写真=UNA Lions

 

2020-21シーズンからノースアラバマ大でプレーする鈴木妃乃

 

家族の支えでキャリアを

切り開いてきた鈴木

 

 静岡県浜松市出身の鈴木は、子どもの意欲を後押しすることを第一に考える家庭で育った。いわゆる“バスケットボール一家”ではなく、両親がバスケットボールにかかわるようになったのは、姉の神乃さんがミニバスを始めてから。神乃さんのうまくなりたいという意欲につきあう形で、自分たちからも何かしらプラスになる助言ができるようにと、父篤さんが一緒にプレーするようになったそうだ。

 

 ただし競技歴とは無関係に家庭の支援は強力だった。ミニバスのチーム練習で子どもたちが不足を感じれば、地域の大人の手を借りて個別練習の機会を用意した。アメリカからコーチがやってくると聞けば、募集が基本的に男子向けであっても、娘たちの参加を頼み込んだ。

 

 そのような行動力は国内外に良縁を紡ぎ、結果として神乃さんは高校から渡米を決意。現在NCAAディビジョンIIのサウスカロライナ大エイキン校でプレーしている。そして次女の鈴木自身も地元浜松市にこだわらず大阪桐蔭に進学した。

 

 鈴木が全国区の強豪である大阪桐蔭に入る過程では、いわゆる推薦があったわけではない。高校側からの誘いもなかった。鈴木家の方からいくつか希望する高校にメールを送り、ドアをノックした。そのアプローチに対し前向きな対応が得られ、かつ鈴木自身もやってみたいと思え、家庭としても安心できるという運命の進路が大阪桐蔭だったのだ。

 

 全国的にはまったくと言っていいほど無名だった小柄なポイントガードのキャリアに、このときはじめて光が差した。「うちの子のプレーをみてくださいとお願いして、練習に参加させていただきました。端から見ればどこまで図々しいのかということですが、娘の人生なので、なんと言われてもいいという思いでした(母・明子さん)」。部長を務める稲原久美子氏、森田久鶴HC、永井雅彦Aコーチに鈴木家は全幅の信頼を置くことができた。

 

 一本筋の通った子育てには、短いコラムに納めきれない苦労も伴っただろう。しかし、長女神乃さんが留学先で主力として活躍し、次女の鈴木自身が全国制覇の立役者となったのは、大人の事情でブレることなく子どもの背中を押し続けた成果と言えそうだ。そして今、鈴木は本場アメリカで、NCAAディビジョンIの注目チームの一つに数えられるノースアラバマ大学で、プレーヤーとしてさらなる飛躍を遂げようとしている。

 

キャリアを見つめなおし
NCAA Div.I ノースアラバマ大へ

 

 2度の延長の末に決着したウインターカップ2017決勝戦での鈴木は、8本の3Pを含む27得点で…という簡単な紹介ではかたづけられない驚異のクラッチぶりで大阪桐蔭の大会初優勝に貢献した。4Q残り1分22秒に成功させたこの日6本目の3Pは、66-66の同点に追いつく価値ある一撃。最初の延長開始早々に7本目を沈めると、残り15秒には鋭いドリブルドライブから永田 舞の3Pをおぜん立てし、76-74のリードをもたらす。2度目の延長ではもう1本3Pを沈めただけでなく、残り2分に自陣のゴール下で相手のレイアップを阻止し、直後のオフェンスで再び鋭いドリブルドライブから、今度は自分で逆転レイアップをねじ込み83-82とした。

 

 さらに、83-84と逆転された残り50秒にもドリブルドライブをしかけ、今度は相手のファウルを誘ってフリースローを1本成功させ84-84の同点に持ち込んだ。決勝点となった大阪桐蔭の86点目は、鈴木がドライブからさばいたノールックパスを小林明生がゴールに送り込んだ。大阪桐蔭が2度の延長で奪った20得点中、鈴木本人の得点が9あり、2本のアシストから5得点が記録されている。

 

 2018年春、鈴木は関西学院大に進んだ。静岡から移り住んだ関西の土壌は気に入っていたし、大好きなバスケットボールもできていた。しかし2019年の暮、鈴木はその環境での自身のあり方に疑問を抱くようになっていた。

 

 高校までも大学に入ってからも日本一を目指してプレーするのは同じ。大阪桐蔭ではそれを実現することができたが、率直に言って、本当にそれがかなうとは思っていなかったし、大学以降のキャリアでも自分が頂点にい続けられるとは思わない。そんな思いで自分を見つめてきた鈴木は、より総合的な人生経験を求めて関西での学生生活を選んだのだった。

 

 でも…、今ここでは実現できないもっと別の可能性が、自分のバスケットボールにはあるのではないだろうか。そんな思いが日々膨らんでいった。

 

 答えを探して鈴木は動き始めた。目を向けたのは本場アメリカの舞台。NCAAディビジョンIの大学で、バスケットボール面と学業面で進路として可能性を感じられるところに積極的に連絡を取り始めた。留学生の受け入れに積極的な大学を意識して絞り込みをした。姉の留学体験で、鈴木家にはアメリカの大学への留学についてのノウハウがあった。

 

 2020年夏の留学を前提とすれば、鈴木が準備活動を始めた2019年の暮はかなり遅い時期だったことは否めない。それでも結果として、ハイライト映像を見た各大学からいくつも良い反応が得られた。

 

 留学に欠かせない英語力の向上(TOEFLスコア改善)にも全力で取り組む。当初、TOEFLスコアはかなり厳しいレベルだったが、オンラインで受験を繰り返すことでスコアは急上昇。短期間で留学条件を満たすレベルに到達した。

 

 前向きなやりとりをしていた大学は複数あった。その中で、「ここならば」と感じたのがUNA。2018年にディビジョンIに加わったばかりだが、いきなり2シーズン連続で20勝以上の好成績を残した注目チームである。大きな要因は、ヘッドコーチを務めるメリッサ“ミッシー”タイバーの存在だった。

 

 タイバーHCは科学の学位とスポーツリーダーシップの修士号を持つ理論派で、もとはスポーツ・ジャーナリストを目指していたという。ところが、コミュニケーション上手な若かりし日のタイバー氏に、ある日AAUチームのコーチングに携わる機会が舞い込んだ。その素晴らしさに強く惹かれた彼女は、この道で生きていくことを決意したのだという。(Part2に続く)

 

タイバーHCは科学の学位とスポーツリーダーシップの修士号を持つベテランコーチだ


(月刊バスケットボール)


  1. Tatsuaki Sakai より:

    素晴らしい内容ですし、鈴木選手とお話しする機会があって、すごく明るい印象を受けました!今野シーズン頑張ってほしいですね!

  2. ちー より:

    素晴らしいね。

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