月刊バスケットボール5月号

MORE

2021.01.09

NCAA Div.Iノースアラバマ大でスターターとして活躍! - 鈴木妃乃のデビューシーズン(パート1)

関西学院大からNCAAディビジョンIノースアラバマ大(以下UNA)に3年生として転入した鈴木妃乃(大阪桐蔭高校卒)が、アトランティック・サン・カンファレンス(以下ASUN)のシーズン開幕直前からスターターに抜擢され、活躍を見せている。
取材・文=柴田 健/月バス.com 写真=UNA Lions

 

1月2日(アメリカ現地時間)に行われたアトランティック・サン・カンファレンス開幕戦にスターターを務めた鈴木妃乃

 

ASUNカンファレンス開幕シリーズで大活躍!

 

 新型コロナウイルス感染拡大下の今シーズンは、UNAと鈴木にとっても非常に困難な状況を強いている。UNAは幸運にも、ここまで(1月9日時点)にノン・カンファレンス・ゲーム9試合とASUN公式戦2試合の11試合を消化できているのだが、例えば1月2日・3日に行われたASUN開幕シリーズは、もともと対戦相手のはずだったフロリダガルフコースト大が隔離体制を取らねばならなくなったことで、直前にケネサウ州大に変更となった。さらに翌週末の9日・10日に予定されていたステットソン大との2連戦は、相手チーム内で新型コロナ陽性者が出たことで延期されている(1月9日現在で新たな日程は未発表)。この環境を、3勝8敗の成績の言い訳にすべきではない。しかしチーム力を測るにはその影響を考慮する必要はある。
鈴木はノン・カンファレンスシーズン初戦(昨年11月25日の対オースティン・ピー大戦)に控えガードとして出場し、UNAでのデビュー戦で3アシストを記録。5試合目の対サムフォード大戦で初得点(計5得点)が生まれた。ここまでの11試合中10試合に出場し、直近3試合ではスターターの座を勝ち取る進歩を見せている。しかも1月3日の試合では、勝負を決めたクラッチスリーを含む10得点に9アシスト。十二分に持ち味を発揮してみせた。
10試合で平均1.5得点、2.5アシスト、1.1スティール。数字に対する見方はさまざまだろう。しかし新型コロナウイルス感染抑止対策や言葉の壁と格闘している現状を思うと、鈴木の仕上がりは“順調”と思える。
11月に行ったインタビューで、鈴木は第一の目標として少しでも多くコートに立つことを挙げ、出られればまずは自分で得点をねらい、積極プレーで相手を引きつけた上でチームメイトにチャンスを作れるようになること、さらにできればアシストで2ケタをねらいたいことなどを目標として話してくれていた。3日の試合は、それが毎試合出てもおかしくないポテンシャルを強く感じさせるものだった。

 

電光石火のアシスト、クラッチスリーで勝利に貢献


まず驚いたのは試合開始から3分ほど過ぎたあたりの電光石火のアシスト。6-7と劣勢の状態で、左ウイングでドリブルする鈴木が利き手とは逆の左手から繰り出したパスは、ゴール下で待つフォワードのオリヴィア・ノアにズバッと届き得点につながった。スピードに乗ったドリブルからボールをキャッチせずに直接送り出したこの左手のパスは、“ディビジョンI”レベルでもそうそう見られない力強いプレーだった。
さらに10-11と1点差を追う第1Q残り3分過ぎには、速攻でフロントランナーとなったシューティングガードのアレクシス・キャリンズにバックコートからリードパス。スピードに乗ったレシーバーの「ここにほしい」という手にフワッと収まる絶妙のコントロールで、これもまたイージーレイアップにつながった。
40-33と点差を広げた第2Q残り1分25秒あたりには、自ら快足を飛ばしてブレイクに参加。フルスピードのドリブルでペイントまで持ち込み、十分に相手ディフェンスを引きつけてから並走してきたノアにノールックのオーバーヘッドパスを送り、またしてもイージーレイアップをおぜん立てした。
高校時代のプレーぶりを映像で見たメリッサ“ミッシー”タイバーHCが「私たちに必要なすべてを持っていると確信した」と感じて受け入れた鈴木。70-69と緊迫した第4Q残り41.8秒に沈めたとどめのスリーは、その評価が正当だったことを証明するような一撃だった。11月のインタビューに同席した大の仲良し、ジェイラ・ロバーツから右ペリメーターの鈴木にボールが渡る。スムースなキャッチ&シュート。思い切りよく放たれたボールはきれいな弧を描いてゴールに吸い込まれた。
前述のとおり1月9日・10日の試合は延期され、次なる予定は今のところ1月23日・24日のジャクソンビル大との2連戦。現時点では「ポテンシャル」という形容にとどめるのが適切だと思うが、予定通りにこの試合が開催され、3日と同じような活躍でその域を超え“東洋の獅子”として飛躍してくれることを期待したい。(パート2に続く

 

ノースアラバマ大でのデビュー戦ではアシスト3つを記録した

 

(月刊バスケットボール)



PICK UP