月刊バスケットボール6月号
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比江島 慎
SG/191 cm
宇都宮ブレックス[/caption]

 

[東京2020 男子日本代表の横顔]

多彩なオフェンス能力で日本代表の突破口を見いだす

 

 比江島の持ち味は緩急を付けた1対1のうまさにある。“独特な”という表現をよく見かけるが、バスケットボールとしては当たり前のスキルである。ただ、比江島の“急”はさほど速いわけではないものの、“緩”との差が相手を惑わせる。そして、オフェンスの仕掛けで頭の位置が変わらず、ディフェンスにプレーを予測させないことや、あえて上体をフロートさせる(浮かせる)フェイクなど、上下左右にディフェンスを揺さぶるというのが比江島の特徴だ。

 また、フィニッシュもジャンプシュートだけでなくフローターや左右関係なくさまざまな方法でボールをリングに沈めてくる。特に、立ちはだかるディフェンスを軸にスピンするムーブはビッグマンでさえ攻撃を防ぐことが難しい。これはポイントガードをこなせる多彩なボールハンドリングを持ち合わせるからである。比江島はゲームコントロールするというよりは得点力があるコンボガードに近い存在で、隙があればダンクにいけるという身体能力もあり、男子日本代表には欠かすことのできないプレーヤーである。そういった意味ではオールラウンダーと言っていい。

 その非凡さは洛南高時代から発揮し、青山学院大でもチームの中心選手として“大学バスケットボール界の顔”といって良いほどの活躍を見せた(4年時には関東大学リーグ戦MVP)。そして、卒業後はアイシン三河(現シーホース三河)入りしてプロとしてのキャリアをスタートさせ、2018年に宇都宮ブレックスに移籍した。

 今シーズンのBリーグではファイナルまで勝ち上がったものの、千葉を相手に第3戦で敗れて優勝を逃しているが、比江島の活躍なくしては頂上決戦までたどり着くことはできなかっただろう。

 6月のアジアカップ予選では全4試合に出場し、安定した力を発揮。国際強化試合のイラン戦では積極的なドライブを見せ、フィールドゴールは7本中6本の高確率をマークし、存在感をアピールした。近年のバスケットボールでは3Pシュートだけでなく、このようなペイントタッチやエルボータッチなど、ペイント内へとペネトレイトしていくことも相手ディフェンス攻略のカギになる。男子日本代表には圧倒的なビッグマンが不在であり、ペイントを“荒らす”ことは大きな意味を持つ。

 ボールを長い時間持っての1対1をすることはないだろうが、ディフェンスを収縮させるためのドライブと、そこからのキックアウトを展開するには比江島のメリハリあるプレーは必要不可欠となるだろう。

(山本達人/月刊バスケットボール)



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