月刊バスケットボール5月号

NBA

2021.02.03

フレッド・バンブリート(ラプターズ)がNBAのドラフト外プレーヤー史上最高の54得点 – Unbelievable(アンビリバボーですね)

 

モーゼス・マローン越え、そしてチーム新記録

 

 フロリダ州オーランドでアメリカ現地時間2月2日に行われたオーランド・マジック対トロント・ラプターズの一戦は、NBA全体にとっても特別な一戦となった。2016年にドラフト外でラプターズ入りした“たたき上げ”のポイントガード、フレッド・バンブリートが、ドラフト外でリーグ入りしたプレーヤーとして史上最高となる1試合54得点を記録したのだ。試合は123-108でラプターズが勝っている。


バンブリートの快記録はフィールドゴール23本中17本(3Pは14本中11本)成功にフリースロー9本すべてを決めての54得点という、非常に効率的な達成だった。「距離のあるショットも何の苦もなく入れてしまうような…」というのはラプターズのニック・ナースHC。「どこからねらってもフリースローのような感覚で見ていましたよ」


同条件におけるこれまでのリーグ最高記録は、高校からABA(American Basketball Association)のフランチャイズを経て1976年にドラフト外でバッファロー・ブレーブス(ロサンゼルス・クリッパーズの前身)入りしたモーゼス・マローン(2015年に60歳で逝去)がヒューストン・ロケッツに在籍していた1982年2月2日の対サンディエゴ・クリッパーズ(現ロサンゼルス・クリッパーズ)戦で記録した53得点。くしくもちょうど39年前の同じ日、苦労人のタフガイとして知られたマローンが打ち立てた記録を破ったことは、バンブリートにとって大きな誇りに違いない。


過去にラプターズで50得点したケースはデマー・デローザン(現サンアントニオ・スパーズ)の52得点、そしてヴィンス・カーター(昨シーズンを最後に引退)とテレンス・ロス(現マジック)の51得点のみだったが、バンブリートは一気に3人を抜いてチーム新記録を樹立したことになる。記録達成を知ったデローザンは、さっそくツイッターで「おめでとう、フレディー。カイル(ラウリー)にいさんにはできなかったことだな。さすが王者! やれると思ってたよ!」と祝福のメッセージを投稿した。

 

渡邊雄太も“相棒”を祝福


試合後の会見で、バンブリートには当然記録達成に関する質問が飛んだ、マローンとデローザンのどちらを破ったことの方がよりうれしいかと聞かれると、「それはもちろんモーゼス・マローンです。デマーは大好きですが…」と話して笑顔を見せた。「アンビリバボーですね。とても恐れ多く、誇らしいです。彼らと同じくくりで語られるようになれたなんて」


ヴァンヴリートの素直な喜びは、元の英文では以下のように表現されていた。


“Oh c’mon Moses Malone. I love DeMar but..., I’m joking, both man, both. Unbelievable. I’m very humbled and honored to be in the same sense with both of those guys.”

 

 今シーズンが5年目のバンブリートは、デビューから2シーズンは主力と呼べる存在ではなかった。しかし3年目、NBAで国外のフランチャイズとして初めてリーグ制覇を達成した2018-19シーズンの貢献ぶりで地位を確立。4シーズン目以降はチームに欠かせないプレーメイカーに成長を遂げている。


苦労を積み重ねて今の地位を築いたバンブリートのキャリアを象徴するようこの記録は、ラプターズの組織内に計り知れない前向きな力を生み出すような気がする。バンブリートと大学時代に対戦したことがあり、同じドラフト外でラプターズに入った渡邊雄太もギアを上げてくるだろう。渡邊はこの日11分出場してダンク1本の2得点に1リバウンドを記録している。試合後は渡邊もツイッターでバンブリートへの祝福と敬意を表していた。


ラプターズはこの日の勝利で今シーズンの通算成績を9勝12敗として、イースタンカンファレンスの9位。次戦は現地2月5日の夜(金=日本時間6日土曜日の朝)に敵地で戦う対ブルックリン・ネッツ戦だ。

 

文/柴田 健(月バス.com)



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