月刊バスケットボール6月号

若くして引退した日本代表選手、藤岡麻菜美の第2のバスケ人生

 昨シーズン(2019-20)のWリーグは新型コロナウイルス感染拡大の影響で、2月23日を最後にシーズンを中断し、結局そのままシーズン終了となった。東京オリンピックの延期も発表された。そんな消化不良なバスケットボールシーズンの終わりに、日本代表としても活躍していた藤岡麻菜美(JX-ENEOS/現ENEOS)が引退を決めた。 


2017年アジアカップでは日本の優勝に大きく貢献し、大会ベスト5にも選出され、2018年のワールドカップにも出場した。そして、まだ26歳。「これから」と期待を受け、東京オリンピックの代表候補でもあっただけに、そのニュースは衝撃を持って受け入れられた。一方で、故障に悩まされ続けていたのも事実で、Wリーグでの4シーズンのうち、シーズンを通して活躍できたのは2シーズン。昨シーズンもWリーグで1試合、皇后杯で1試合のみの出場にとどまっており、代表入りはケガの状況次第でもあった。それにしてもオリンピックの延期によって、逆に故障を癒し、1年後を目指すこともできたはずだ。


しかし、藤岡は「JX-ENEOS・日本代表で経験してきたことはとても貴重で、誇れる財産」との言葉を残し現役を退き、バスケットボールの指導者として進む道を選択した。

 

 

「毎日、森村(義和)先生と一緒に千葉英和高校に来て、指導をしています」と藤岡は現在の状況を教えてくれた。森村氏は千葉英和バスケットボール部の監督であり、藤岡の恩師である。藤岡は現在同チームのアシスタントコーチを務めている。

 

「現役のときの教えるというのは、たまに行ってそのときだけのことなので、みんなめっちゃウワーっと盛り上がって喜んでもらえるんです。実際にコーチになって、最初は『ホンモノが来た!』みたいな感じだったんですけど、毎日来るようになるとそれも薄れてきてあたりまえになっちゃう」と、藤岡はゲスト扱いの現役選手と、現在の立場の違いを語る。「それでもやるべきことは、徹底させていきたいと思っています」。そうコーチとしてのプライドをのぞかせる。

 

 母校を全国大会の常連にしたいというのが千葉英和高校のコーチとしての藤岡の目標である。しかし、それにとどまることなく「多くの人たちに、自分が経験してきたことを伝えていきたい」との思いも持っており、クリニック活動や、『F-Program』と名付けたスクールも開校準備中だ。Fujioka(藤岡)のイニシャルだけでなく、Fundamental(基本)、Fun(楽しむ)など『F』にはさまざまな意味が込められている。

 

「情報はツイッター(@neobaske01)とインスタグラム(www.instagram.com/fprogram_mf)で発信している手作りな状況ですけど、時間を作って、できるだけいろいろなところへ行きたいと思っています」

 

 ケガがなければ…。藤岡のプレーを知る人ならば、誰しも思うに違いない。しかし、藤岡はそんな未練や心残りを表すことなく、第2のバスケットボール人生を進んでいる。

 

 

 

(月刊バスケットボール)



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