月刊バスケットボール5月号

NBA

2021.03.09

ステフィン・カリー(ウォリアーズ)、フォロースルーの重要性を語る - 「もし外れるようなら、もっとしっかりフォロースルーを残すようにした(If I would have missed I would have held my follow-through even harder)」

 

NBAを代表するシューターたちが腕を競った今年の3ポイントコンテストは、ステフィン・カリー(ゴールデンステイト・ウォリアーズ)が2015年以来2度目の優勝を果たした。いずれ劣らぬ名手6人が登場した1回戦でカリーはトップの成績。その結果、決勝ラウンドの最終シューターとなり、最後の一投でその時点でトップだったマイク・コンリー(ユタ・ジャズ)のスコア(27点)をきわどく逆転する劇的な勝利で、NBA史上最強シューターの面目を保った(カリーの得点は28)。
今回のルールはこれまでと異なり、トップと左右のウイング間の3Pラインから6フィート(約183㎝)後方にディープスリーゾーンが作られ、そこから左右1本ずつ放つ設定になっていた。ディープスリーゾーンから入れれば3点。決勝ラウンドのカリーは左右のディープスリーをどちらも成功させて1点差の辛勝だったので、この新ルールが大きくモノを言うこととなった。
最後の逆転ショットはカリーの特徴的なフォロースルーが印象的だった。ボールのリリース後に腕を上げたまま残し、体の外側に向かってゆっくり開いていく。これが出たら勝利のサインのようなものだ。カリーというよりも、これは現代の優秀なシューターの多くに共通するルーティンになっている。

 このフォロースルーについて、イベント後の会見でカリーに質問が飛んだ。より正確には「このイベントでの最後のショットはいつもフォロースルーを残しているが、リリースした瞬間入ったと思ったのか」という質問だったが、カリーは「間違いありません。もし外れるようなら、もっとしっかりフォロースルーを残すようにしていたでしょう。いい感じでした。入ってくれて、うまいところを見せることができてよかったです」という返答をしていた。
カリー自身の英語による返答は以下のようなものだった。
“Absolutely, and if I would have missed, I would have held my follow-through even harder. It felt good. So I'm glad it went in, so it made me look even better.”
フォロースルーはやはり意識しているのだ。調子の悪いときにはフォロースルーをチェックするということだろう。
これが気になり決勝ラウンドのリプレーを見てみると、フォロースルーとショットの成否にちょっとした関連性がありそうなことが感じられた。このゲームにおけるカリーのショットには基本的に2種類、(A)前述の腕を残し、体の外側にゆっくり開くパターンと(B)そうでないパターンが見られる。
ある程度これはゲーム自体の特徴上そうならざるを得ない。(B)は両コーナー、両ウイングとトップの5ヵ所における1本目から4本目がほぼそうなっている。なぜなら時間制限がある中でショットを急がなければならないからだ。
一方上記5つのスポットでも最後のマネーボールでは(A)が多く、ディープスリーゾーンからの2本はどちらも(A)だった。これは、次のスポットに移動する時間をいずれにしても取ることになるので、その間は意識さえしていれば理想のルーティンが可能だからだろう。具体的に各スポットの成否とスポット間の移動直前のショットにおけるフォロースルーを並べてみよう。

 

☆カリーの3Pショット成否とフォロースルー(3Pコンテスト決勝ラウンド27本)
Y: 成功 N:不成功
スポット1(左コーナー)N-N-N-N-Y 最後のフォロースルー=Bタイプ
スポット2(左ウイング) Y-Y-Y-Y-N 最後のフォロースルー=Bタイプ
スポット3(左ディープスリー)Y 最後のフォロースルー=Aタイプ
スポット4(トップ)N-Y-Y-Y-N 最後のフォロースルー=Bタイプ
スポット5(右ディープスリー)Y 最後のフォロースルー=Aタイプ
スポット6(右ウイング)Y-N-Y-Y-Y 最後のフォロースルー=Aタイプ
スポット7(右コーナー)Y-Y-N-Y-Y 最後のフォロースルー=Aタイプ

 

27本全体の確率 66.7%(27本中18本成功)
各スポットの最終アテンプトの確率 71.4%(7本中5本成功)
各スポット最終アテンプトのフォロースルー別成功率
Aタイプ(フォロースルーを残し外に開く) 100%(4本すべて成功)
Bタイプ(フォロースルーを残さない) 33.3%(3本中1本成功)

 

 上記の結果から、フォロースルーがAタイプのカリーはいわゆる“Locked in(目標をしっかりとらえた状態)”状態なのではないかと仮説を立てたくなる。最初のディープスリーゾーン以降の確率は76.5%(17本中13本成功)。結果としてまさしく“Locked in”だ。一方最初の2つのスポットでは、ルーティンへの意識がなかったのではないだろうか。
もちろんこのゲームだけで判断できるとは思わないが、後半戦のカリーの調子の良し悪しを推測する際の指標として、このフォロースルーに注目してみると面白いかもしれない。

 

文/柴田 健(月バス.com)
(月刊バスケットボール)



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