月刊バスケットボール6月号

大学

2020.10.12

東海大と筑波大が見せた“新鮮な”戦いぶり

 男子の大学バスケシーズンがいよいよスタートした。10月10日から12月26日(土)にかけて行われている「オータムカップ2020」。10月11日、エスフォルタアリーナ八王子で行われた大会2日目を取材した。

 

 この日、行われたのは第1試合から順に大東文化大vs.日本大、青山学院大vs.白鷗大、東海大vs.専修大、日体大vs.筑波大の4戦。第1試合は大東文化大が、第2試合は白鷗大が共に快勝し、準決勝に駒を進めたが、ここでは第3試合を戦った東海大と第4試合を戦った筑波大の戦いにスポットライトを当てた。

 

セカンドユニットが躍動

坂本聖芽が魅せた!

 

 まずは東海大。大学界屈指のタレント集団は初日に拓殖大を圧倒。この日は今大会の最注目選手の一人である河村勇輝のデビュー戦ということでも話題を集めたが、2日目はその河村らが控えるセカンドユニットの活躍が目立つ試合となった。東海大としては昨年のインカレのリベンジマッチとなった専修大との一戦。序盤に走った東海大だったが、2Q中盤以降に専修大の野崎由之の連続3Pを許し、いまいち調子をつかめないままに前半を終えた(35-33)。

 

ベンチからエナジーをもたらした坂本(左)と河村(右)

 

 しかし、後半は打って変わって東海大が試合を支配。53-37と後半戦を圧倒し、最終的には88-70で専修大を下した。リズムをつかんだのはセカンドユニットが機能し始めてから。前日を上回る23分49秒の出場時間を得た河村は4得点、4アシスト、2ティール。3Q終了間際には佐土原遼の3Pブザービーターをお膳立てし、4Qには八村阿蓮の3発のダンクを生み出した。2年生の張正亮の活躍も目覚ましかった。専修大の留学生コンビに対してファウルトラブルに陥った八村と佐土原に代わって20分8秒にわたって東海大のインサイドを死守。オフェンスでもゴール下で確実に仕事をし、8得点、4リバウンドの成果を挙げた。

 

 そしてもう一人。この試合でMVP級の活躍を見せたのが3年生の坂本聖芽だ。182cmの司令塔はオフェンスでは専修大のペイントをこじ開け、ディフェンスでも起点となってアグレッシブにプレー。この日放ったシュート(3P1本、2P2本、フリースロー5本)全てを成功させ14得点を稼ぎ出したスタッツ面もさることながら、3Qで東海大がリズムをつかむ中での攻防の中心となった。

 

「セカンドチームというのは途中から出場してスタメンのオフェンス、ディフェンスの強度を保つこと、それ以上に強度を上げてセカンドチームの方が厄介だと思わせるような勢いをもたらすのが役目です。チャージングであったり、スティールであったりという勢いのあるプレーはチームにも影響をもたらすと思うので、今日はそれができてよかった」と坂本。まさしくこの試合で専修大にとってスタメン以上に厄介なだったのは、坂本らセカンドユニットだったはずだ。

 

 この戦いぶりには陸川章監督も「前半で流れを持っていかれたときに我慢できたのが大きかったです。バックアップメンバーがいい流れを作ってくれました。チーム内で5対5をしてもスタメンと遜色ないですし、お互いに切磋琢磨しています。特に今日は坂本がバスケットに向かうメンタリティーを見せてくれて火をつけてくれました」と賞賛を惜しまない。

 

 強力なスタメンと頼もしいバックアップメンバー。この戦いぶりは今年の東海大にとって強力な武器となるはずだ。

 

大型チームが見せたスモールラインナップ

 

 2日目の最終試合を戦った筑波大は日体大と対戦。日筑戦としても注目を集めたこの試合は4Qで抜け出した筑波大が77-66で勝利を収めたが、その中で筑波大のスモールラインナップが平面での戦いに違いをもたらした。登録メンバーの中に200cmオーバーの選手4人(木林優/200cm、三森啓右/201cm、井上宗一郎/201cm、藤村貴記/203cm)を擁する大型チームは、この日のスタメン平均身長でも日体大(184.8cm)を大きく上回る192cm。3Qまではフィジカルの強さと平面のバスケットで勝負する日体大と、ビッグラインナップで勝負する筑波大の力が真っ向から激突し、56-55と筑波大がわずか1点のリードで最終クォーターを迎えた。

 

平面のバスケットで日体大を下した筑波大

 

 4Qでもお互いのディフェンス合戦で2分が経過しても日体大がわずかに2点を積み上げるのみ。そして、ここから筑波大が動く。

 

「PFに浅井(修伍)を入れて結構フィットしていたんですが、最後の練習試合で捻挫をしてしまいました。そこで急遽、木林や栗林(幹太)という経験の少ない選手を起用していました。大黒柱の井上も昨日今日と少しボールがポロポロしてしまった部分もあってインサイドが安定しませんでした」と吉田監督が語っていたPFのポジションで、この日も栗林が負傷。そうした状況も重なった中ではあったが、筑波大は勝負どころでラインナップのサイズを下げ、日体大に合わせて平面のバスケットで勝負する道を選んだ。

 

 終盤のラインナップで大きな働きを見せたのは笹山陸。出場するやいなや3Pシュートに日体大のディフェンス陣を切り裂く豪快なドライブを決め、計15点を稼いだ。目には目を、平面には平面を、である。「日体大の走るバスケットに対処するために今日に関してはサイズを下げて戦うしかないと判断をしました」と吉田監督。結果的にここからの筑波大は約5分半の間に18-1のラン。この間に日体大は2度のタイムアウトをコールしたが、勢いを抑えることはできなかった。

 

 最後はキャプテン菅原暉が冷静にミッドレンジジャンパーを決め、試合をコントロール。大型チームが見せたスモールラインナップは、吉田監督が言うようにあくまで「今日のところは」という形だ。しかし、大会が進む中でこの戦い方が“怪我の功名”となれば…。もしかすると今後の筑波大の新たなスタイルとして確立されるかもしれない。

 

 まだまだ大会は続くとはいえ、今年のカレッジバスケシーズンはあっという間に終わってしまうだろう。学生バスケの集大成に挑む若武者の戦いから目を離してはもったいない。

 

取材・文/堀内涼(月刊バスケットボール) 写真/松村健人



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