月刊バスケットボール5月号

NBA

2021.03.21

グレッグ・ポポビッチHCの教えは“Less is more(簡潔さが豊かさを生む)” – 通算1,300勝目前の恩師との“師弟対決”を前にマイク・ブーデンホルザーが語った金言

1,300勝目前のポポビッチHC(スパーズ)

 

 サンアントニオ・スパーズをNBAでも最も安定した強豪チームに導いたグレッグ・ポポビッチHCが、レギュラーシーズンにおけるキャリア通算1,300勝目を目前としている。日本時間3月21日(アメリカ時間20日)の対ミルウォーキー・バックス戦を前にした時点での勝敗記録は、1,299勝630敗(勝率67.3%)。この通算勝利数はNBAの歴代記録としても3位にあたる偉業で、上にいるのはドン・ネルソン(1,335勝1,063敗、勝率55.7%)とレニー・ウィルキンズ(1,332勝1,155敗、勝率53.6%)の2人だけであり、現役コーチとしては最多記録だ。勝率でも歴代7位。現役ではゴールデンステイト・ウォリアーズのスティーブ・カーHCが持つ69.4%(517勝359敗)に次ぐ2位に座している。
このタイミングで対戦するバックスを率いるのは、1996-97シーズンから2012-13シーズンまで17年間にわたってポポビッチHCの下でスパーズのアシスタントを務めた“教え子”の マイク・ブーデンホルザーHC。今や自身も最優秀コーチ賞を2度受賞するまでに成長し、今シーズンもバックスをリーグ制覇を十分ねらえる位置に導いている(前述のカーHCもポポビッチの教え子といえる存在)。
今シーズンの成績では、同日の対戦前でバックスが26勝14敗(イースタンカンファレンス3位)に対しスパーズは22勝16敗(ウエスタンカンファレンス7位)と、ブーデンホルザーHCが恩師に先行している。
試合前の会見で、ポポビッチHCの偉業を可能にした要因についてブーデンホルザーHCに質問が飛んだ。柔らかい笑顔とともに返ってきた答えは「長々と話すことがないんですよ」というもの。
しっかり選ばれた言葉で簡潔に語り、チームに意欲をもたらすことを指しているのだろう。ブーデンホルザーHCはいったんこの簡潔なフレーズでコメントを切り、しばらく間をおいてさらに続けた。「あの場所で本当にたくさんのことを学びましたし、言われたこともたくさんあります。“Less is more(簡潔さが豊かさを生む)”とか。この言葉を挙げておきましょう。組織が、また私がかかわったプレーヤーたちが手にした成功は、その賜物だと思います。できれば彼が1,300勝目を記録するのは今夜ではないといいですけれど…。私も“Less is more”で臨みますよ」

 

バックスのブーデンホルザーHCはポポビッチの教え子


ブーデンホルザーHC自身による英文のコメントは以下のようなものだった。
He never gives long speeches, seriously. There's many many things, you know that are learned and said and stated while in there and “Less is more”. And so I’m gonna go with less is more since it’s a great great tribute to the success of the organization, the players in hand as a coach. If…, I hope it’s not tonight whenever he gets 1,300th. But I’m going with “less is more”.
ブーデンホルザーHC自身も、物事を簡潔にまとめるために冒頭のフレーズでいったん区切ったのだろう。

 日本語で“Less is more” を「簡潔さが豊かさを生む」と訳してみたが、もっと簡潔に、ピンポイントに訳さないとポポビッチHCにもブーデンホルザーHCにも気に入ってもらえないかもしれない。

 この日の試合を前に、バックスは直近10試合で9勝1敗と好調だ。対するスパーズも6勝4敗とまずまずだが、簡単には倒すことはできないだろう。

 ブーデンホルザーHCが教え子として “恩返し”の勝利で偉業達成に待ったをかけるか。恩師ポポビッチHCが貫録を見せつけて1,300勝目を手にするか。コート上のパフォーマンスとは別に面白い見どころのある試合だ。

 

文/柴田 健(月バス.com)
(月刊バスケットボール)



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