月刊バスケットボール5月号

Bリーグ

2021.06.02

比江島慎が直面する試練「自分の役割はチームを勝たせてなんぼ」

『日本生命 B.LEAGUE FINALS 2020-21』のゲーム3。宇都宮ブレックスと千葉ジェッツによる最終決戦は、千葉が壮絶なクロスゲームを制し71-62で勝利。3度目の挑戦で悲願のリーグ制覇を成し遂げた。

 

 歓喜に沸く千葉の選手、そしてブースターの姿と宇都宮サイドの姿は実に対照的だった。中でも宇都宮の日本人エース比江島慎の悔しさは相当なものだったはずだ。

 

ショーターらとのタフなマッチアップの中でも随所に力を発揮した

 

 ゲーム1から激しいマークを受け、フィジカルな原修太、サイズと身体能力に勝るシャノン・ショーター、チャンピオンシップで千葉に違いをもたらしているコー・フリッピンら、タイプの異なるタフなディフェンダーに変わるがわるマッチアップされ、なかなか波に乗ることができなかった。

 

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 ゲーム1では5得点、ゲーム2では3得点と思うようなスコアが出ず、FG成功率も前者が25%(1/4)、20%(1/5)。ディフェンス面での貢献度こそ高いものの、チームもファンも比江島のオフェンス面での復活に期待を寄せていた。

 

 迎えたゲーム3。そんな思いが届いたかのように、比江島からはこれまで以上に積極的にリングにアタックする姿が見られた。決して好調だったとは言い難いものの、このシリーズ最多の12本のショットを放ち、初の2桁得点(12)を記録。宇都宮側の2階席後部にある記者席からは、第2Q終盤にトップから彼が3Pシュートを沈めた瞬間が、宇都宮ファンのこの日、最大の盛り上がりを生み出したように感じられた。

 

 最後はファウルアウトという結末でベンチから試合を見守った比江島。試合後の会見で、彼は言葉を振り絞るようにこう口を開いた。「前半は千葉のペースでしたが、僕らも我慢して我慢して同点で終わることができました。でも、終盤でリバウンドなどのところで負けてしまったというのと、自分もいらないファウルであったり、最後はオフェンスファウルもしてしまって…。もっとできたんじゃないかなと思っていて、チームに申し訳ない気持ちでいっぱいなんですけど、また来年…やり返したいなと思います」

 

この思いを来季の糧とする…

 

 納得のいかない自身のパフォーマンスだっただろう。ただ、残り2分13秒の場面でフリッピンをかわして決めたバンクショットは「これぞ比江島!」と言わんばかりの見事な一本だった。

 

 それでも、約23分の記者会見の中で何度も「申し訳ない」という言葉を口にした比江島。自身の活躍に関してのポジティブな言葉は、ついに最後まで出ることはなかった。

 

 しかし、振り返っているヒマはない。「膝の状態も良かったし、1、2戦目はチームに迷惑をかけてばかりで、最後の第3戦は心の底から楽しめるように、シンプルにやろうと心がけてやりましたし、コーチ陣からも何も考えずにアグレッシブにやってくれという言葉もいただきました。そういうこともあって、確率はよくないけど苦しい場面などでは少し決められた部分はありました。でも、自分の役割というのはチームを勝たせてなんぼだと思う」と比江島。

 

 個人としてもやり切れなかった上での敗戦を経験したことで、自らの存在意義がより明確になった部分はあったはずだ。比江島慎はこんなもんじゃない。来季はそれを証明してくれると信じている。

 

 

写真/©︎B.LEAGUE

取材・文/堀内涼(月刊バスケットボール)



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