月刊バスケットボール6月号

Bリーグ

2021.04.12

藤井祐眞(川崎ブレイブサンダース)が体現する『最後まで諦めない』気持ち

 川崎ブレイブサンダースのホームゲームで試合開始前のウォームアップ時に、会場の大型ビジョンにチームのショートムービーが映し出されているのをご存知だろうか。そのムービーの最後に「最後まで諦めない」という言葉が、キャプテンの篠山竜青から発せれらている。

 

とどろきアリーナもしかり、Bリーグの試合ではティップオフ前にも見どころは多い

 

 B1リーグ第32節で秋田ノーザンハピネッツをホームに迎えた川崎はゲーム1で秋田を55得点に抑える堅守を見せ、82-55で勝利。今季36勝目を手にした。迎えたゲーム2は、ゲーム1で6連敗を喫した秋田にとっては何としても勝ちたい試合であり、川崎にとってもホームで連勝を伸ばしチャンピオンシップ進出に向けて前進したい試合となった。

 

 第1Q序盤、川崎はディフェンスがハマり15-7の好スタートを切ると得意のビッグラインナップで起点を作る。カディーム・コールビー不在の秋田はアレックス・デイビスのファウルトラブルも重なり、オン・ザ・コート1の時間帯も長く、リバウンドの面で川崎は大きく前に出た。

 

 しかし、「アドバンテージのあるインサイドに徹底的にプレッシャーをかけられてなかなかボールが動かず、オフェンスがうまくいかない中で悪い流れがずるずると続いてしまった試合でした。相手のディフェンスへの準備はしてきましたが、その準備を上回るプレッシャー、タフなディフェンスをされてしまい、ゲームをコントロールできなかった」と、佐藤賢次HCが振り返るように、秋田の積極的なディフェンスの前に川崎からミスが生まれ、イージーバスケットを許すと、外からも細谷将司の6本を筆頭に秋田に計14本の長距離砲を射抜かれた。

 

ビッグラインナップで活路を見いだしたい川崎だったが、この試合ではそれがボールの停滞を招く結果に

 

 流れを変えたい川崎はインサイドの利をより強調したオフェンスを組み立てたが、「ミスマッチを狙い過ぎた」(佐藤HC)というように、この日はそれが裏目に出る結果に。加えて、川崎はこの試合でシュートタッチにも苦しみ、3Pシュートは29本のコンテストで成功はわずか1本。秋田のファウルがかさんだことで得た40本ものフリースローも内11本をミスし、波に乗ることができなかった。一方の秋田は細谷の活躍に呼応するように保岡龍斗、大浦颯太らが躍動し、 川崎に前日のリベンジを果たした(93-84)。

 

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 この試合で先発を任された藤井祐眞は「出だしは昨日同様、良い形では入れたと思いますが、2Qで相手のシュートが決まり始めてからこちらのディフェンスがソフトになってしまったり、トランジションで走られてしまったりして、後半もアジャストし切れなかった」とこの試合を振り返る。ただ、川崎の選手たちは第4Q終盤のほぼ勝敗が決した場面でも懸命にボールに食らい付き、最後までファウルゲームを仕掛けた。中でも懸命で攻防で奮闘する藤井の姿は、まさに冒頭で触れたのショートムービーで篠山が発する「最後まで諦めない」に通ずる部分だと言えよう。

 

最後の1秒までアグレッシブに戦った藤井は14得点、3アシスト。11本のフリースローを放った

 

 プロの試合はどの国のリーグもほとんどが長いシーズン制だ。長丁場のうちのひと試合と捉えるならば、その試合を捨てて、次の試合に頭を切り替えることもあるだろう。しかし、川崎はそうはしない。「コートに出ているときは常に全力でプレーすることがこのチームのルール」と、増田啓介はこの試合後の会見で語っている。その道のプロフェッショナルとしてファンの前で最後まで戦うことが、川崎のモットーだ。

 

 厳しい時間帯でプレーする心境について藤井は「負けず嫌いなので40分間、最後までやり切りたいという気持ちがあります。それに(今日の試合であれば)残り1分ちょっとの場面で8、9点離れていたと思いますが、あそこでシュートを決めてターンオーバーを誘っていたら(6点差で)2ポゼッション差まで迫れて、まだ試合は分からないというところまでいけたと思います。そういったことを考えていました。最後まで諦めないという姿勢がそういう形で出たのかなと思います」と胸の内を明かす。

 

 

 負けず嫌いな性格は、この試合の第4Q序盤にも見られた。秋田の野本建吾にスティールを許し、ワンマン速攻での失点は避けられないと思われた場面。ものすごい勢いで後ろから野本を追いかけた藤井は、身長差22cm(野本201cm、藤井179cm)をモノともせずに豪快なチェイスダウンブロックをお見舞いしたのだ。結果、このプレーはファウルとなったが、野本はフリースローを1本ミス。得点面でも試合の流れを左右するという面でもこのワンプレーのインパクトは大きかった。こうしたハッスルと負けず嫌いのマインドこそが藤井祐眞という選手の代名詞であり、彼の人気を象徴するものだ。

 

 エナジーを全面に押し出してプレーする藤井の活躍が川崎の生命線であることは間違いない。まだまだ予断を許さぬ激戦が続く東地区。悲願のリーグ制覇を目指す上で、藤井のハッスルプレーの重要性はさらに増してくる。

 

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写真/B.LEAGUE

取材・文/堀内涼(月刊バスケットボール)



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