月刊バスケットボール5月号

Bリーグ

2021.03.26

アルバルク東京を支えるシックススマン須田侑太郎

 3月24日の第28節でA東京は同じ東地区でチャンピオンシップ出場権を争う秋田ノーザンハピネッツと対戦。76-62で勝利し、ワイルドカード争いで3位に着けた。

 

 この試合で躍動したのは3Pシュート4本を沈めゲームハイの18得点を記録した安藤誓哉だ。前から当たってくる秋田のアグレッシブなディフェンスに冷静に対処し、相手にとって痛い場面で得点を決め続けた。デション・トーマスとケビン・ジョーンズのインサイドコンビもそれぞれがストレッチビッグとしてスペースを生み出し、2人で計22リバウンド(内オフェンスリバウンド11本)。カーク不在で泣きどころの一つとなっていたリバウンドで高いパフォーマンスを見せつつ、そろって14得点を挙げた。

 

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 ディフェンス面でも特に3Qには秋田のオフェンスを完全にシャットアウトし28-10。この試合に勝利する大きな要因となった。

 

この試合でも勝利のキーマンとなった

 

 これらの事実からもこの試合におけるA東京のパフォーマンスの高さがうかがえるが、忘れてはならない選手がもう1人。この試合で11得点を挙げ、トドメの3Pをねじ込んだ須田侑太郎だ。

 

 須田はスター選手ではない。アルバルク東京移籍2年目の今季は38試合に出場し、平均19分7秒のプレータイムを獲得。派手なプレーや試合を決するショットを託されることこそ少ないが、大事な場面で須田がコートに立っていることは多い。頼れるシックススマンという表現が正しい選手だ。

 

 特に東海大の同期でもある田中が欠場して以降は、より重要な局面でコートに立つ場面が多く持ち味の3Pも46.7%(7/15)と非常に高確率で沈めている。

 

 ルカ・パヴェチェヴェッチHCは「シュート力が彼の長所で、外でスペースを作って相手のディフェンスを広げてもらいたいと思っています。シーズン中盤でケガをしてしまい、復帰してから本調子に戻るのにはなかなか時間がかかりましたが、ようやくここ数試合の重要な試合で、調子が戻ってきました。須田の貢献はチームにとってすごく大きいですし、今日の試合もいい働きでした」と須田のパフォーマンスを評価する。

 

 現在、A東京の先発SGを託されているのは小酒部泰暉だ。底知れぬポテンシャルを秘めた22歳は出場機会が増えれば増えるほど、力を発揮してくるだろう。ただ、現時点での貢献度は須田の方が高いと言える。

 

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 パヴェチェヴェッチHCとすれば、須田を先発に据えるという考えも当然あったのだろうが、彼はシックススマンのままだ。そこには小酒部を伸ばしたいという思いも当然あるはずだが、須田をベンチに置いておく“安心感”もあるのかも知れない。

 

 シックススマンについては他の強豪クラブでも先発級の選手が構えていることが多い。宇都宮ブレックスであれば渡邉裕規や比江島慎、川崎ブレイブサンダースであれば藤井祐眞や篠山竜青が控えに回る試合もある。千葉ジェッツであれば、ラインナップ変更以前のジョシュ・ダンカンがそれに該当し、大野篤史HCはダンカンを「一番の心の拠り所」と表現していた。

 

 

 須田はパヴェチェヴェッチHCにとってもそういった存在なのだろう。

 

 当の須田も先発よりも結果にフォーカスしている。現に「今日はチャンピオンシップ進出を争うチームとの直接対決でより負けられない戦いでした。40 分間を通して自分たちで崩れずに、しっかり戦い切れたことが勝利に繋がったと思います。前半の苦しい時間帯も、いいシュートチャンスはずっと作れていたので、入る入らないに関係なくそれを継続できたことがよかった」と試合後にコメントしていた。プロ選手だ、先発に一切こだわりがないかと言われれば嘘になるだろうが、優先順位はそれではない。

 

 昨季チームに加わった須田にとって、A東京での優勝経験はない。だからこそ、結果にこだわる。だからこそ、チームを第一に考える。

 

 これから先も続く厳しいシーズンを戦い抜き、チャンピオンシップ進出を打果たしたしたとき初めて、クラブとしての3連覇を、須田自身にとってはA東京での初優勝を目指す挑戦権を得るのだ。

 

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写真/B.LEAGUE

取材・文/堀内涼(月刊バスケットボール)

 



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