月刊バスケットボール5月号

Bリーグ

2021.03.25

Bリーグと3x3の二刀流に挑む秋田ノーザンハピネッツの保岡龍斗「全てをヘッドコーチに頼るのではなく、選手たち自身で解決していく時間を増やしていきたい」

 ワイルドカード争い5位の秋田ノーザンハピネッツが同3位のアルバルク東京をホームに迎えた第28節は、3Qで一気にスパークしたA東京が同クォーターで築いた18点差を最後まで守り切り76-62で勝利した。

 

 これでA東京と秋田は2ゲーム差。両クラブにとってチャンピオンシップ進出に向けた大きな一戦であったことに間違いはない。

 

 この試合で3月3日の新潟アルビレックスBB戦以来のスターター出場となった保岡龍斗は、秋田に欠かせないキーマンの一人だ。今季は43試合(内25試合に先発)に出場し、1試合平均6.4得点、2.0リバウンド、1.8アシストを記録。この試合でも計11得点を記録し、特に1Qで秋田がリズムを掴んだ場面では3Pシュート1本を含む6得点、劣勢の最終クォーターでも積極的なアタックから勝利の望みを繋ぐパフォーマンスを見せた。

 

 

3Qの急失速に見る課題

リズムが悪い時間帯に歯止めをかけられず

 

 序盤は秋田が持ち味の激しいディフェンスでA東京を翻弄し、A東京のピックプレーに対しても高い位置から積極的にダブルチームを仕掛け、1Qは14-7と上場の滑り出しを見せた。2QでA東京のオフェンスが盛り返す場面も見られたが、クォーター終盤に長谷川暢が左45度から3Pをねじ込み30-29で前半を終えた。

 

 ディフェンシブな両チームの戦いだけあって、ロースコアな前半となったが、後半でその模様が一変する。3QでA東京がディフェンスの強度を高めたことで、秋田はオフェンスのリズムを乱し、急失速。前田顕蔵HCは「3Qの入りから少しずつミスが出たところで、A東京さんにシュートを決め切られてしいました。あの10分間がもったいなかったですし、そこに対して歯止めをかけられなかったのが反省点だった」と振り返った。3Qのスコアは10-28。これが最終スコアの差にそのまま直結してしまったのは、明らかだった。

 

 秋田はタイムシェアのチームだ。今季は11人が平均13分以上のプレータイムを獲得し、トップはアレックス・デイビスの27分12秒、日本人選手では中山拓哉の23分48秒が最長だ。保岡は「全体としてはやりたいこともできましたが、できない時間帯をどれだけなくすかが勝ち星をつなげるための課題です。長い時間出ている選手だけでなく、チーム全員がそれを遂行しないと勝てないと思います。今日の試合でもA東京さんが少しディフェンスのプレッシャーをかけ始めたり、自分たちのフォーメーションが読まれたときに何もできませんでした。良いオフェンスができない中でディフェンスでもそれを引きずってしまって、点差を離されてしまった」と険しい表情を見せている。保岡自身、3x3との二刀流でシーズンを戦っており、秋田でも3x3でも求められているのは激しいディフェンスだ。それだけに言い訳はしたくないのだろう。

 

3x3とBリーグの二刀流

3人制で培った選手同士の

コミュニケーションを5人制に持ち込む

 

 とはいっても、同じシーズンの中で同じバスケットボールといえども全く特性の異なる競技をプレーするのは至難。秋田はクラブを挙げて保岡をオリンピックに立たせるために動いており、「彼が先週末に(『第6回 3x3日本選手権大会』で)優勝して、MVPを取ってきたというのはチームにとっても良い出来事です。5人制と3人制で全く違う競技をしていて難しい中でも良くやってくれているし、チームにとって大切な選手」と前田HCも保岡の活躍を喜ぶ。同時に「5人制と3人制をシーズン中に両輪で回していくのは大変ですよ。彼は子どももいますし、いろんなものをちゃんとやっていると思います。(3x3で)日本代表に入れる、合宿に行ってそこで日本代表になれるかもしれない環境に身を置いて競争していることは、彼の精神的な成長につながっていると思いますし、難しい状況の中で頑張っているのは精神的な成長が大きい」と両立の難しさと、それによる成長も感じ取っているようだ。

 

3x3ではBEEFMAN.EXEで3x3日本選手権大会優勝&MVPを獲得した

 

【関連記事】第6回3x3日本選手権大会ファイナルラウンド、男子はBEEFMAN、女子はXDがともに初優勝

 

 保岡も「3x3と5人制だと戦術や戦い方が全く違うのでアジャストするのは難しかった」と本音を漏らしつつも、そこで得た経験を秋田に還元しようと必死。「本当に同じバスケットだけど戦い方などが全く違います。ただ、3人制はコーチがいない分、試合の中で悪い時間帯に選手同士でコミュニケーションを取って解決しないといけないので、それは5人制でも生かせる部分です。全てをヘッドコーチに頼るのではなく、選手たち自身で解決していく時間を増やしていければ、よりチームも向上していくと思います」と言う。

 

 まさに、この試合にも通ずる部分ではないだろうか。別の取材で古川孝敏は「試合で負けていたり焦っていたりする場面で仲間に声をかけること、チームが勝つために何が必要なのかコミュニケーションを取ることをすごく大事にしています」と語っている。チームとして意思疎通を図り、自分たちが納得する試合を40分間遂行する。秋田のとってのそれはアグレッシブにディフェンスをし、最後まで一人に頼らない全員バスケットをすることだ。

 

 保岡自身もこの試合で感じた課題を少しずつ修正し、ブラッシュアップていくことで3x3での日本代表入りも秋田でも勝利もおのずと近付いてくるだろう。秋田はA東京戦の敗戦でチャンピオンシップレースから一歩後退してしまった。ただ、この負けから得た教訓を次節のサンロッカーズ渋谷戦で生かすことができれば、この敗戦を先につながる価値ある敗戦に変えることができすはずだ。

 

#バスケが観たいです

 

写真/B.LEAGUE、山岡邦彦

取材・文/堀内涼(月刊バスケットボール)



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