月刊バスケットボール6月号

Bリーグ

2020.12.23

2020年ホームラストゲームを勝利で締めたSR渋谷の石井講祐 今後の課題は「交代後に流れを切らないこと」

 早いもので2020年も年の瀬。12月20日に広島ドラゴンフライズを青山学院記念館に招いた一戦は、サンロッカーズ渋谷にとって今年最後のホーム線となった。


 前日のゲーム1で99-68の快勝を収めているSR渋谷は連勝してホームのファンに年末の挨拶をしたいところ。対する広島は次節の富山グラウジーズ戦への弾みを付けるためにも、何としても勝ちが欲しい試合となった。

 この試合の序盤、仕掛けたのはSR渋谷。チームの代名詞となりつつあるフルコートのプレッシャーディフェンスで広島のミスを誘い、イージーショットを演出。

 グレゴリー・エチェニケ、ジャマリ・トレイラー、帰化選手登録となったトーマス・ケネディという3人のビッグマンをスターターに連ねる広島に対して特に3番ポジションがアンダーサイズとなる中でも積極的にプレッシャーをかけ、インサイドで脅威となるエチェニケに対しても必ずと言っていいほどダブルチームを送った。

 その結果、広島はリズムを生み出すことができずに付いていくのが精一杯で前半は55-43

石井はこの試合で11得点。今季のホーム戦最多タイの得点を奪った

 

 しかし、後半。広島がディフェンスの包囲網を突破しケネディや途中出場のアイザイア・マーフィーの活躍で追い上げ体制を敷くと一時4点差まで詰め寄る猛反撃。結果的には一度もリードを譲らずに89-81で勝利したとはいえ、SR渋谷としては決して後味の良い勝利ではなかった。

 試合後、SR渋谷の伊佐勉HCが「応援ありがとうございました。グチになりますがミスが多すぎて話になりません。もう一回練習していい試合ができるように頑張ります」とファンと前でも包み隠さずに感情を露わにしていた光景は珍しいものだ。前半は自分たちのバスケットを遂行できていただけに、後半の出来に納得いかなかった。


直後の記者会見でも同様に「結果としては勝ててよかったけど、勝っただけで気分は悪い」と厳しいコメントを残していたが、最後に強調したのは「雰囲気は悪くない」という言葉。納得がいかない勝利であっても勝ちは勝ちだ。そういった状況下でも勝ち切る力が付いてきたことは、すなわちチームがそれだけのレベルまで上がってきているということだ。

 

チーム力は間違いなく向上している


試合終盤に広島を突き放す3Pシュートを沈めた石井講祐も「離せそうで離せない展開でしたが終始我慢して最後は自分たちのバスケットできて接戦を勝ち切れたのはよかったです。だんだんチームの雰囲気や練習でやってきたことを発揮できる遂行力が上がってきていて、それが結果にもつながってきる」と、状態が上向きであることを証言。

 

 負けが混んだ序盤戦を乗り越え、東地区の上位陣の背中が見えてきた。残す課題は試合の流れを切らないこと。伊佐HC就任以降、継続してきたフルコートでのディフェンスは効果的な反面、体力の消耗が激しく、どうしてもメンバーのローテーションが多くなる。「タイムシェアをしている中でメンバーが大きく変わったときに良い流れを継続していかなければなりません。自分たちで引っ張っていけるように交代で出るメンバーが、そのときコートで何が有効なのかをベンチで判断して試合に出ることができれば流れを切らずにやっていけるはず」と石井。

 仲間の状況を察知し、試合の流れを観察する。プロ選手しての基本とも思えるが、極限までそれを突き詰めることは並大抵のことではない。石井が課題に挙げたローテーション後のプレーは今後の試合で注目したいポイントの一つとなるだろう。

 SR渋谷の2021年ホーム初戦は1月2日(土)の三遠ネオフェニックス戦だ。2020年のシメは理想的な試合をファンに見せることができなかった分、チームも選手も今度こそ、ホームのファンにしっかりと年始の挨拶をしたいと考えているはずだ。彼らがホームに帰ってくる日を楽しみに、サンロッカーズファンにはこの年末を過ごしてもらいたい。

 

 

写真/©︎B.LEAGUE

取材・文/堀内涼(月刊バスケットボール)



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